介護老人保健施設(老健)とは?特養・介護医療院との違い、費用、入所条件、在宅復帰の仕組み【家族向け】

介護老人保健施設のリハビリ室で、高齢の男性が理学療法士に支えられて平行棒で歩く練習をしているイラスト ・サービス・施設
「病院を退院するけれど、すぐに自宅に戻るのは不安」「リハビリを続けてから家に帰れないか」。そんな相談で出てくるのが、介護老人保健施設(老健)です。 老健は、病状が安定している要介護の人が、リハビリテーションや医学的な管理のもとでの介護を受けながら、自宅へ戻ることを目指す施設です。長期的な生活の場となることが多い特別養護老人ホーム(特養)とは、目的が違います。この記事では、老健の仕組み、入所できる人、特養・介護医療院との違い、費用、在宅復帰の実際、見学で確認することを、厚生労働省の資料をもとに整理します。 先に結論
  • 老健は、在宅復帰を目指す施設。リハビリ、医学的な管理、介護、生活の世話を一体で行う(介護保険法第8条第28項)
  • 施設への入所は要介護1〜5の人が対象。要支援1・2の人は入所できない(老健が提供する短期入所や通所リハビリは、要支援の人も利用できる場合がある)
  • 老健の入所者の平均要介護度は3.2(特養は3.9、介護医療院は4.2)
  • 費用は、施設サービス費(1割負担で1日あたり)に加えて、居住費・食費・日常生活費がかかる
  • 令和4年4月審査分の全国の請求事業所数は4,230。令和元年の調査では、入所者の約半数(48.5%)が医療機関から入所し、退所者の行き先は家庭が36.3%だった

※この記事は、元福祉用具専門相談員の立場から、厚生労働省の公開資料で確認できた内容をもとに作成しています。報酬や基準は改定されることがあります。実際の料金や入所の可否は、施設や市町村、ケアマネジャーに確認してください。

▶ 動画でも解説しています(約3分20秒)

介護老人保健施設(老健)とは

介護保険法では、老健は「要介護者であって、主としてその心身の機能の維持回復を図り、居宅における生活を営むことができるようにするための支援が必要である者に対し、施設サービス計画に基づいて、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的とする施設」とされています(第8条第28項)。 運営の基準でも、入所者がその能力に応じて自立した日常生活を営めるようにするとともに、居宅における生活への復帰を目指すことが、基本方針とされています。厚生労働省は、老健を次の2つの役割を担う施設と整理しています。
  • 在宅復帰・在宅療養支援のための地域の拠点
  • リハビリテーションを提供する、機能の維持・改善を担う施設
老健は、病状が安定した人の生活とリハビリを支える介護保険の施設です。入院治療が必要な場合は、病院で対応します。病院と家庭の間をつなぐ「中間施設」として構想されました。1986年(昭和61年)に老人保健法で規定され、1988年(昭和63年)に本格的に始まり、2000年(平成12年)の介護保険法の施行で、介護保険の施設になりました。

入所できる人

  • 要介護1〜5の認定を受けた人が対象です。要支援1・2の人は、施設への入所はできません。老健が提供している介護予防の短期入所療養介護や通所リハビリテーションは、要支援の人も利用できる場合があります。
  • 厚生労働省の資料では、入所の対象は、病状が安定していて、看護や医学的な管理のもとでの介護、機能訓練が必要な要介護者とされています。
  • 入所者は、「施設サービス計画」に基づいてサービスを受けます。施設のケアマネジャー(介護支援専門員)が計画を作ります。
要介護認定の申請は要介護認定の申請方法と手順、最初の相談先は地域包括支援センターや担当のケアマネジャーです。

老健・特養・介護医療院の違い

項目 老健(介護老人保健施設) 特養(介護老人福祉施設) 介護医療院
目的 在宅復帰を目指す。リハビリ・医学的管理・介護 常に介護が必要な人の入所を受け入れ、日常生活の支援、機能訓練、療養上の世話 長期にわたって療養が必要な人の療養上の管理、看護、介護、機能訓練
入所できる要介護度 要介護1〜5 原則として要介護3以上(要介護1・2は、やむを得ない理由がある場合のみ) 要介護1〜5
平均要介護度 3.2 3.9 4.2
基本報酬の自己負担例
(要介護3・多床室・1単位10円・1割負担)
908円(基本型)、1,014円(在宅強化型) 732円 1,182円(Ⅰ型)、1,092円(Ⅱ型)
※出典:厚生労働省「介護サービス情報公表システム」、介護給付費分科会資料(令和5年8月、平均要介護度は令和3年度の請求にもとづく統計)。特養・介護医療院にも複数の報酬区分があります。この表だけで、月額の総費用の高低は判断できません。居住費・食費・日常生活費・加算を含む、同じ条件の見積もりで比べてください。特養の入り方は特別養護老人ホームへの入り方で解説しています。

費用|施設サービス費+居住費・食費・日常生活費

老健を使うときは、施設サービス費のほか、居住費・食費・日常生活費がかかります。

施設サービス費(1日・1割負担)

要介護度 従来型個室・基本型 従来型個室・在宅強化型 多床室・基本型 多床室・在宅強化型
要介護1717円788円793円871円
要介護2763円863円843円947円
要介護3828円928円908円1,014円
要介護4883円985円961円1,072円
要介護5932円1,040円1,012円1,125円
※出典:厚生労働省「介護サービス情報公表システム」(介護老人保健施設)。介護保健施設サービス費(Ⅰ)の基本部分について、1単位10円・1割負担として示した例です。加算型は基本型の額に、超強化型は在宅強化型の額に、それぞれ在宅復帰・在宅療養支援機能加算が加わります。療養型やその他型は別の報酬区分です。地域区分や各種加算によって、実際の負担額は変わります。ユニット型個室では、要介護1で基本型802円・在宅強化型876円、要介護5で基本型1,018円・在宅強化型1,130円です。
  • 居住費:ユニット型個室などでは「室料+光熱費相当」、多床室では「(室料+)光熱費相当」です。食費は「食材料費+調理費」です。
  • 日常生活費:理美容代、教養娯楽費など、施設サービス費にふくまれないものです。
  • 所得・住民税の課税状況・預貯金などの条件を満たすと、居住費・食費が軽くなる負担限度額認定があります(市区町村への申請が必要です)。食費・居住費の基準は見直されることがあります。→介護保険負担限度額認定証とは
  • 介護保険サービス費の自己負担割合は、所得に応じて1〜3割です。食費・居住費などの保険外の費用に、この割合を掛けるものではありません。→介護保険負担割合証とは
  • 1か月の自己負担が上限を超えたときは、高額介護サービス費で払い戻される場合があります。ただし、食費・居住費・日常生活費は対象外です。→高額介護サービス費とは

加算の例

主な加算の例は次のとおりです。いずれも算定要件があり、すべての入所者に付くものではありません。
加算 単位数(現行)
短期集中リハビリテーション実施加算Ⅰ:258単位/日、Ⅱ:200単位/日(入所から3か月以内)
認知症短期集中リハビリテーション実施加算Ⅰ:240単位/日、Ⅱ:120単位/日(入所から3か月以内、週3日まで)
初期加算Ⅰ:60単位/日、Ⅱ:30単位/日(入所から30日以内などの要件あり)
夜勤職員配置加算24単位/日
ターミナルケア加算死亡日以前31〜45日:72単位、4〜30日:160単位、前日・前々日:910単位、死亡日:1,900単位(1日あたり)
このほか、介護職員等処遇改善加算などが加わります。令和8年6月以降の加算率は、介護老人保健施設で、処遇改善加算を除く総報酬単位数の5.9〜9.7%です(加算の区分による)。加算が見直されているため、最新の月額の見積もりで確認してください。

入所前と退所後|統計で見る老健

項目 数字
入所前にいた場所医療機関48.5%、家庭33.6%
退所後の行き先家庭36.3%、医療機関33.3%、特養9.1%、死亡10.6%、その他の社会福祉施設3.2%
平均在所日数(退所者)309.7日(約10か月)
全国の請求事業所数4,230(令和4年4月審査分。高齢者10万人あたりでは都道府県で6.5〜29.6)
※出典:厚生労働省 介護給付費分科会 資料(令和5年8月)、令和元年介護サービス施設・事業所調査。入所前・退所後・在所日数は令和元年調査の退所者の実績で、個人の入所期間や、現在の標準的な利用期間を示す数字ではありません。
  • 入所前は、医療機関から入所する人が約半数です。病院を退院して、すぐ自宅に戻るのが難しいとき、リハビリや生活の立て直しの場になっています。
  • 令和元年調査では、退所者の36.3%が家庭へ戻っていました。この割合は、個人が自宅に戻れる確率や、報酬上の「在宅復帰率」とは異なります。医療機関に移る人(33.3%)、特養などへ移る人、亡くなる人(10.6%)もいます。「入れば必ず自宅に戻れる」わけではありません。
  • 老健では、在宅での生活ができるかどうかを定期的に検討して記録し、退所のときには、本人や家族への指導を行うこととされています。退所後は、主治医やケアマネジャーとの連携に努めます。
  • 基本型・在宅強化型などの報酬の要件には、対象となる退所者について、退所後30日以内(退所時に要介護4・5の場合は14日以内)に、自宅の訪問や、居宅のケアマネジャーからの情報提供によって、居宅での生活が継続する見込みを確認し、記録することが含まれます。全員への訪問が義務という意味ではありません。

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退所して、自宅に戻ったあとの暮らしを考えるとき

老健は、自宅への復帰を目指す施設です。退所後は、ケアマネジャーとサービスを調整し、介護保険のサービスで暮らしを支えます。希望する支援の内容・時間帯・利用条件によっては、介護保険サービスで対応できない部分を、自費サービスで補う方法もあります。イチロウは、民間の介護保険外サービスで、利用は任意です。対応地域、料金、希望する日時に対応できるかどうかは、事業者に確認してください。老健の入所や退所に、このサービスの契約は必要ありません。

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※介護保険のサービスについては、まず担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに相談してください

入所までの流れ

  1. 要介護認定を受ける:まだの場合は、市区町村に申請する
  2. ケアマネジャーや、病院の相談員に相談する:退院後の行き先として、老健を検討する
  3. 施設の支援相談員に相談し、見学・面談する:入所の目的、必要なリハビリや医療を伝える
  4. 契約して入所する:施設のケアマネジャーが、施設サービス計画を作る
  5. 在宅復帰に向けて、リハビリと生活支援を受ける:退所の時期や、自宅の環境を、定期的に検討する
退所の前には、自宅の環境の確認が大切です。手すりの位置や段差、介護ベッドなどの福祉用具を、早めに考えておくと、退所後の暮らしが楽になります。住宅改修は、着工の前に、市町村への申請が必要です。要支援1・要介護1で借りられる福祉用具の早見表も参考にしてください。

見学のチェックリスト

  • リハビリ:1日・1週間あたりの回数や時間、担当する職種(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)
  • 在宅復帰の実績:類型(超強化型・在宅強化型など)、退所の見通しをどう伝えてくれるか
  • 医療・看護の体制:医師の診察の頻度、夜間の看護職員の体制、喀痰吸引や経管栄養への対応
  • 費用:居室の種類(従来型個室・多床室・ユニット型)ごとの月額の見積もり、日常生活費の内訳、加算の内容
  • 認知症への対応:認知症短期集中リハビリテーションなどの実施の有無
  • 退所後の支援:退所前の自宅訪問、ケアマネジャーとの引き継ぎ、福祉用具や住宅改修の相談
  • 看取り:ターミナルケアの対応の有無

在宅復帰を目指す「5つの類型」

老健の在宅復帰・在宅療養支援の機能は、主に5つの類型で説明されます。類型は、「在宅復帰・在宅療養支援等指標」(最高値90)の点数と、退所支援やリハビリなどの要件で決まり、点数だけでは決まりません。別に、療養型の報酬区分もあります。指標は、次の10項目を点数にして求めます。
類型 指標の目安 施設の割合(令和5年2月)
超強化型70以上28.6%
在宅強化型60以上10.0%
加算型40以上31.6%
基本型20以上24.1%
その他型上記の算定要件を満たさない5.7%

指標になる10項目

  1. 在宅復帰率(50%超で20点)
  2. ベッド回転率(10%以上で20点)
  3. 入所前後の訪問指導の割合
  4. 退所前後の訪問指導の割合
  5. 居宅サービスの実施数
  6. リハビリ専門職の配置割合
  7. 支援相談員の配置割合
  8. 要介護4・5の入所者の割合
  9. 喀痰吸引の実施割合
  10. 経管栄養の実施割合
※出典:厚生労働省 介護給付費分科会 資料(令和5年8月)。超強化型と在宅強化型は、充実したリハビリ(少なくとも週3回程度以上)などの要件もあります。類型は報酬の区分で、「類型が高いほど良い施設」とは限りません。リハビリの内容や職員の様子を、見学で確認してください。

老健に求められる職員と設備

項目 基準 1施設あたりの平均(令和3年)
医師1人以上、入所者100人に対して1人以上1.07人
看護・介護職員入所者3人に対して1人以上(うち看護は約7分の2)看護師5.97人・准看護師3.98人・介護職員27.38人
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士合計で、入所者100人に対して常勤換算1人以上理学療法士2.42人・作業療法士1.56人・言語聴覚士0.37人
支援相談員1人以上、100人に対して1人以上2.21人
介護支援専門員1人以上(100人に対して1人を標準)1.55人
療養室1室あたり定員4人以下、入所者1人あたり8㎡以上
機能訓練室・食堂機能訓練室は1㎡×入所定員以上、食堂は2㎡×入所定員以上
廊下幅1.8m以上(中廊下は2.7m以上)
※出典:厚生労働省 介護給付費分科会 資料(令和5年8月)、「令和3年介護サービス施設・事業所調査」。主な一般基準を抜粋しています。人員の比率は常勤換算などによる配置基準で、常時その人数が勤務するという意味ではありません。小規模な施設などには例外があります。ユニット型は、原則として1室1人(療養室は10.65㎡以上)で、1ユニットの定員はおおむね10人以下です。

よくある質問

Q. 何か月まで入所できますか?

老健の施設入所に、全国一律の「3か月まで」という法定上限はありません。在宅生活へ戻れるかどうかを、入所後早期に、その後も少なくとも3か月ごとに検討します。3か月は退所の期限ではなく、検討の区切りです。入所を続ける必要性や退所先を、個別に相談します。令和元年調査の退所者の平均在所日数は309.7日(約10か月)でしたが、個人の期間を示す数字ではありません。入所のときに、退所の見通しを施設の相談員に確認してください。

Q. 病気の治療や、薬はどうなりますか?

老健には医師が配置されており、医学的な管理のもとで介護や機能訓練が行われます。老健で行う通常の診察・投薬・検査などの費用は、原則として、介護保険の施設サービス費に含まれます。ただし、歯科診療や一部の専門的な治療・薬剤など、医療保険で別に扱うものもあります。入所の前に、お薬手帳と通院の内容を施設へ伝えて、継続できる治療と別途の負担を確認してください。入院治療が必要になったときは、病院へ移ることがあります。

Q. 特養に移ることはできますか?

退所後の行き先として、特養に移る人もいます(令和元年の調査で9.1%)。自宅への復帰が難しい場合は、必要な医療・介護、本人の希望、家族の状況に応じて、特養や介護医療院などの候補を、入所中から相談します。特養は原則として要介護3以上で、待機が必要なことが多いため、早めに相談員やケアマネジャーに相談してください。

Q. 認知症があっても入所できますか?

入所できます。認知症のある入所者へのリハビリの評価(認知症短期集中リハビリテーション実施加算)もあります。ただし、施設ごとに対応の経験や体制が違うので、見学のときに具体的に確認してください。

Q. 要支援でも入所できますか?

施設への入所はできません。老健は、要介護1〜5の人が対象です。ただし、老健が提供している介護予防の短期入所療養介護や通所リハビリテーションは、要支援1・2の人も利用できる場合があります。在宅での介護予防サービスについて、地域包括支援センターに相談してください。

まとめ

  • 老健は、リハビリと医学的な管理のもとで、在宅復帰を目指す施設。施設への入所は要介護1〜5が対象で、要支援の人は入所できない
  • 特養は「常に介護が必要な人の生活の場」、介護医療院は「長期療養の場」。目的と費用が違う
  • 費用は、施設サービス費(1割負担・1日)に、居住費・食費・日常生活費が加わる。負担限度額認定や高額介護サービス費を確認する
  • 令和元年の調査では、入所者の約半数は医療機関から入所し、退所者の36.3%が家庭へ戻った。「入れば必ず自宅に戻れる」わけではない
  • 退所に備えて、自宅の手すりや段差、福祉用具の準備も、早めに始める
まず迷ったら、担当のケアマネジャーか、病院の相談員、地域包括支援センターに相談してください。

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参考資料

  • 厚生労働省 社会保障審議会 介護給付費分科会(第221回)資料「介護老人保健施設」(令和5年8月7日):資料
  • 厚生労働省「介護サービス情報公表システム」介護老人保健施設(老健):ページ
  • 厚生労働省「介護サービス情報公表システム」介護老人福祉施設・介護医療院:特養/介護医療院

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