親が家で暮らし続けるための住宅改修ガイド|転倒を防ぐために家族が知っておきたいこと

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「親が玄関の段差につまずくようになってきた」「廊下を壁に手をつきながら歩いている」——そんな変化に気づいたとき、多くの家族は「手すりをつけたほうがいいのかな?」と考え始めます。

でも、何をどこに付けたらいいのか、費用はどれくらいかかるのか、介護保険は使えるのか……わからないことだらけで、なかなか動けないまま時間が過ぎてしまうことも多いです。

私は福祉用具専門相談員として15年間、多くのご家庭の住宅改修に関わってきました。この記事では、住宅改修を考え始めたご家族が知っておくべきポイントを、場所別・制度別に整理してお伝えします。

家の中でこんな変化が出てきたら住宅改修を考えるサイン

住宅改修は「転倒してから」ではなく「転倒しそうになってから」が理想的なタイミングです。以下のような行動が増えてきたら、早めに環境を整えることを検討してください。

  • 家具や壁に手をついて立ち上がるようになった
  • 廊下を壁づたいで歩くようになった
  • 玄関の段差を「よいしょ」と言いながら越えるようになった
  • 夜間にトイレへ行く回数が増えた
  • 浴槽をまたぐ動作を怖がるようになった

これらのサインについて、それぞれ詳しく解説した記事もあります。

玄関でよくある危険と対策【上がり框・段差・手すり】

住宅改修の相談で、最もよく出てくる場所が玄関です。特に「上がり框(あがりかまち)」——玄関の土間と廊下の段差——は、高齢者にとって転倒リスクが高い場所のひとつです。

現場では20〜40cmの高さの段差をひとりで越えようとして転倒する例を何度も見てきました。「まだ大丈夫」と思っている間に転倒が起きやすいのがここです。

玄関での対策としてよく選ばれるのは、以下の2つです。

  • 玄関手すりの設置:上がり框の横に縦手すりを付けることで、段差の上り下りを安全にできます
  • 段差解消スロープや踏み台の設置:段差が大きい場合は段差を小さく分割することも有効です

廊下・居室でよくある危険と対策

廊下での転倒は夜間に特に多くなります。暗い中でトイレへ向かうとき、壁づたいに歩いていた手が滑って転倒——というケースを現場で繰り返し目にしてきました。

廊下の手すりは「まだ若い」と感じている段階でも、夜間の移動を格段に安全にしてくれます。設置場所は利用者の動線に合わせるのが基本です。

廊下の手すりは、壁づたい歩行が増えてきた頃が検討のタイミングです。夜間のトイレ移動が多い方や、家の中でふらつきが増えてきた方は、早めに設置を考えることで転倒予防につながります。

また、居室では「立ち上がり」が転倒のきっかけになりやすい動作です。椅子やベッドから立ち上がる時に支えになるものがない場合は、手すりやベッド柵の設置を検討してください。

トイレでの転倒を防ぐ住宅改修

トイレは、家の中で最も転倒事故が起きやすい場所のひとつです。特に夜間、暗い中で「立つ・座る」の動作を繰り返すのはリスクが高くなります。

トイレでの対策として最初に考えたいのが手すりです。便座の横に縦手すりを設置するだけで、立ち座りの安定が大きく改善されます。

「工事はしたくない」という方には、工事不要のレンタルタイプの手すりや突っ張り手すりという選択肢もあります。

入浴時の事故を防ぐ住宅改修

浴室も転倒リスクが非常に高い場所です。「濡れた床」「浴槽をまたぐ動作」「立ち上がり」と、危険な要素が重なっています。

浴室手すりの設置が代表的な対策ですが、工事をしなくても改善できる方法も多くあります。

工事なしでできる入浴環境の改善:

  • 浴槽グリップ:浴槽のフチに取り付けるタイプ。工事不要で浴槽の出入りをサポート
  • 浴槽台:浴槽の中に置くだけ。立ち上がりを楽にする
  • 滑り止めマット:浴室の床に敷くだけ。滑りを防ぐ
  • バスボード:浴槽をまたがずに座ったまま入れる。股関節や膝が弱い方に
  • 脱衣所の手すり:介護保険でレンタルできるタイプも

手すりを付けたのに転ぶ…よくある落とし穴

「手すりをつけたのに、まだ転ぶ」という相談は現場でもよく耳にします。

手すりは「そこにある」だけでは機能しません。使いやすい位置・高さ・向きに設置されていないと、せっかく付けても使われないまま放置されることがあります。

また、手すりを設置した場所以外の「動線の穴」が残っていると、そこで転倒が起きます。住宅改修は「1ヵ所だけ直せば終わり」ではなく、生活動線全体を見直すことが大切です。

住宅改修でできること

「住宅改修」と聞くと手すりのイメージが強いですが、介護保険の住宅改修では手すり以外にもさまざまな工事が対象になります。代表的な5つが以下の通りです。

  • 手すりの設置:玄関・廊下・トイレ・浴室など生活動線上に取り付け
  • 段差の解消:玄関の上がり框・部屋の敷居などの段差を小さくする
  • 床材の変更:滑りやすい床を滑り止め素材に変更
  • 扉の変更:開き戸から引き戸に変更して移動をしやすくする
  • 洋式便器への変更:和式トイレを洋式に変更

これら5種類が介護保険の住宅改修費支給制度の対象です。家具の購入や壁紙の張り替えなどは対象外になります。

介護保険で住宅改修費の支給を受けられる(上限20万円)

介護保険には「住宅改修費支給制度」があります。要介護認定(要支援1以上)を受けていれば、住宅改修にかかった費用の一部を介護保険から支給してもらえます。

制度のポイント:

  • 支給限度基準額は20万円(自己負担1〜3割)
  • 対象工事:手すりの取り付け、段差の解消、滑り止め床材の変更、引き戸等への扉の変更、洋式便器への取り替えなど
  • 工事の前に申請が必要(事前申請をしないと支給されません)
  • 担当ケアマネジャーに相談してから進めるのが基本の流れ
工事の内容介護保険の対象
手すりの設置
段差の解消
床材の変更(滑り止め)
引き戸への扉変更
洋式便器への変更
家具・家電の購入×
壁紙・外壁工事×

まとめ:迷ったらまずケアマネジャーや専門相談員へ

住宅改修は「どこを直せばいいか」を正確に判断するのが難しい分野です。家の間取り・本人の身体状況・介護保険の利用状況によって、最適な対策は変わります。

担当のケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談すると、実際の生活動線を見ながら具体的なアドバイスをもらえます。「転倒してから動く」より「転倒しそうになってから動く」ほうが、本人も家族も対応しやすいです。

退院をきっかけに住宅改修を考えている方は、こちらの記事も参考にしてください:

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