「夜中に目を離したすきに玄関から出ていってしまった」「昼間も片時も目が離せない」——認知症による徘徊は、ご家族にとって最も大きな不安のひとつです。一度外に出ると自宅に戻れず、交通事故・転倒・低体温症などの深刻な事故につながるリスクがあります。
介護保険では認知症老人徘徊感知機器をレンタルできます。センサーの種類・設置場所・通知方法の違いを正しく理解することで、お住まいの環境と生活スタイルに合った機器を選べます。福祉用具専門相談員として15年以上、徘徊対策に向き合ってきた経験から詳しく解説します。
介護保険レンタルの対象条件
徘徊感知機器は原則として要介護2以上が対象です。要支援1・2・要介護1の方でも、以下のいずれかに該当する場合は例外給付が可能です。
- 意思の伝達ができない
- 介護者への反応がない
- 記憶・理解力のいずれかが著しく低下している
ケアマネジャーと主治医の確認のもと申請できます。
徘徊感知機器の種類と仕組み
① 赤外線センサー型
人体の体温(熱)や動きを赤外線で検知するセンサーです。検知範囲を通過すると反応します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 仕組み | 人体の赤外線(熱)や動きを検知 |
| 設置場所 | 廊下・玄関・出入口の壁や天井 |
| メリット | 設置が簡単・非接触で検知・ペットや物には反応しにくいものも |
| デメリット | 検知範囲外では反応しない・誤検知(エアコンの風・日光など)が起きることも |
| 向いている場所 | 廊下が短い・玄関が特定の経路にある住宅 |
② マットセンサー型(床置き圧力センサー)
マット上に体重がかかると感知する圧力センサーです。ベッド脇や玄関マット下に設置します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 仕組み | 体重による圧力を検知 |
| 設置場所 | ベッドの脇(降りるときに踏む場所)・玄関の三和土(たたき) |
| メリット | 誤検知が少ない・設置が簡単・薄型で目立たない |
| デメリット | マットの上を通らないと検知できない・ズレると機能しない |
| 向いている方 | 夜間のベッドからの離床・玄関からの外出を検知したい方 |
💡 専門相談員のアドバイス:マットセンサーはベッド脇に置く場合、「必ずそこを踏む」場所を特定してから設置することが重要です。利用者が降りる際の足の動きを観察して位置を決めます。
③ ドア・窓開閉センサー型
ドアや窓が開いたことを検知するセンサーです。玄関ドア・窓・勝手口に設置します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 仕組み | 磁石とセンサーの組み合わせ。開くと磁石が離れて検知 |
| 設置場所 | 玄関ドア・窓・勝手口・バルコニーの出入口 |
| メリット | 誤検知が非常に少ない・外出を確実に検知・設置が容易 |
| デメリット | ドアを開けた後の位置確認はできない |
| 向いている場面 | 玄関や窓からの外出が心配・夜間の出入りを検知したい |
④ 離床センサー型
ベッドからの離床を感知するセンサーです。体重がベッドからなくなったことを検知します。
| タイプ | 仕組み | 特徴 |
|---|---|---|
| クリップ型 | 衣服に磁石付きクリップを取り付け、起き上がると外れて検知 | 確実に検知できる・クリップの取り付けが必要 |
| マット(敷)型 | マットレス下に敷いて体重がなくなると検知 | 取り付けが簡単・マット上に寝ていないと反応しない |
| 荷重センサー型 | ベッド脚に取り付けて体重変化を検知 | 設置後は何もしなくてよい・調整が必要 |
通知方法の種類と選び方
センサーが検知した際の通知方法も製品によって異なります。生活スタイルに合った通知方法を選ぶことが重要です。
| 通知方法 | 特徴 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| ブザー・チャイム音 | 本体またはレシーバーが鳴る | 介護者が自宅にいる・昼間の監視 |
| スマートフォン通知(アプリ) | 離れた場所でも通知を受けられる | 介護者が別室・別棟・日中仕事中の場合 |
| 呼び出し機(コードレス) | 手元の受信機が振動・点灯 | 難聴の介護者・夜間就寝中 |
| 光(フラッシュ) | センサー近くのライトが光る | 音を出したくない・周囲への影響を避けたい |
⚠️ 重要:通知を受けた後に「どう動くか」の体制が整っていないと機器の効果が半減します。家族内で「誰が・どのルートで・どう対応するか」を事前に決めておくことが必須です。
設置場所の選び方|住宅環境に合わせた組み合わせ
一台だけで安全を確保しようとせず、複数のセンサーを組み合わせるのが現実的です。
| 外出ルート | 推奨センサー |
|---|---|
| 玄関ドアから | ドア開閉センサー + 玄関マットセンサー |
| 窓・縁側から | 窓開閉センサー |
| 深夜のベッドからの離床 | 離床センサー(ベッド脇マット or クリップ型) |
| 廊下〜玄関の動線 | 廊下の赤外線センサー |
機器だけに頼らない徘徊対策の体制づくり
徘徊感知機器は「感知するだけ」です。感知後の対応体制と周囲のネットワークが揃って初めて意味を持ちます。
- 近隣への挨拶:「認知症があり、外に出ることがあります」と近所の方に知らせておく。声かけ・見守りをお願いしておく
- 地域包括支援センターへの相談:「SOS ネットワーク」「見守り登録」などの地域サービスを活用する
- GPS機器の活用(購入):介護保険外になりますが、靴の中・かばん・衣服に縫い込めるGPS発信機が普及しています。外出後の居場所確認に有効
- 鍵の工夫:玄関のカギを二重にする・手の届かない高い位置にカギを設置する
- 本人の写真・連絡先を準備:万一のときに備えて最近の写真・氏名・緊急連絡先を記載したカードを常時携帯させる
よくある質問(Q&A)
Q. 夜中だけ感知できれば十分ですか?
A. 徘徊は夜間だけでなく昼間にも起きます。「昼間は家族がいるから大丈夫」という状況でも、調理中・入浴中・少し目を離したすきに外出するケースが多いです。24時間対応できる体制が理想です。
Q. 本人が嫌がってセンサーを外してしまいます
A. クリップ型センサーは自分で外せる場合があります。本人が気づきにくいマット型・開閉センサー型に切り替えるか、センサーの存在を意識させない設置工夫が有効です。
Q. 施設入所を検討すべきですか?
A. 徘徊が頻繁で在宅での安全確保が困難になってきた場合、グループホームや特別養護老人ホームへの入居を検討するタイミングかもしれません。担当のケアマネジャーに率直に相談してみてください。施設への入居は「諦め」ではなく、本人と家族双方にとって安全で質の高い生活を選ぶ判断です。
まとめ
- ✅ 要介護2以上(条件付きで軽度も可)。早めの設置が安心につながる
- ✅ 赤外線・マット・開閉・離床の4種類を住宅環境に合わせて組み合わせる
- ✅ 通知方法は生活スタイル(昼夜・介護者の場所)に合わせて選ぶ
- ✅ 機器だけでなく「感知後の対応体制」を家族で決めておく
- ✅ 近隣・地域包括・GPS機器と組み合わせた多層的な見守りが効果的
「夜中に起き出す回数が増えてきた」「外に出てしまったことがある」という場合は、早めにケアマネジャーや担当の福祉用具専門相談員にご相談ください。


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