親が歩行器を嫌がるときは、無理に説得するより「何を失うと感じているのか」を確認することが先です。年寄りに見られたくない、足が弱るのが怖い、操作に自信がない、家で邪魔になるなど、理由によって対応は変わります。
「転ぶから使って」ではなく、本人が続けたい生活に歩行器を結びつけ、短い距離・短い期間から試しましょう。
※この記事は、元福祉用具専門相談員として実際の相談現場で多かった事例や質問をもとに作成しています。
親が歩行器を嫌がる6つの理由
- まだ自分で歩けると思っている
- 年寄りや弱った人に見られたくない
- 使うと足が弱ると思っている
- ブレーキや方向転換が難しそう
- 家の中で邪魔になる
- 以前試した機種が身体に合わなかった
「歩行器が嫌」という言葉だけで判断せず、見た目、痛み、使い方、置き場所のどれが問題なのか聞きます。まず「そう感じるんやね」と受け止め、すぐ反論しないことが大切です。外では使うのに家の中だけ使わない、という場合の理由と危険性は家の中では歩行器を使わない親で解説しています。
逆効果になりやすい声かけ
- 「転んでからでは遅い」
- 「もう一人では歩けない」
- 「年なんだから使って」
- 「せっかく借りたんだから使って」
家族としては心配でも、本人には「能力を否定された」「老いを認めさせられた」と聞こえることがあります。正論で押し切るほど、歩行器そのものへの拒否が強くなりやすい点に注意します。「恥ずかしい」という気持ちが強いときの伝え方は歩行器は恥ずかしい?嫌がる理由と家族の伝え方でも解説しています。
受け入れられやすい声かけ例
| 本人の気持ち・困りごと | 声かけ例 |
|---|---|
| 買い物で疲れる | 途中で休みながら、今までどおり買い物へ行けるか試してみない? |
| 転ぶのが怖い | 両手で支えると安心か、廊下だけ試してみよう |
| 足が弱りそう | 歩くのをやめる道具ではなく、歩ける距離を増やせるか専門家に見てもらおう |
| 家で邪魔 | 廊下やトイレを通れる小さいタイプがあるか測ってもらおう |
| 年寄りに見える | 色や形を自分で選べるものを一緒に見てみよう |
「できないから使う」ではなく、「散歩や買い物を続けるため」「家族を呼ばずにトイレへ行くため」と、本人が大切にしている目的に言い換えます。
歩行器を試す5つのステップ
- 本人が困っている場面と続けたい生活を聞く
- 理学療法士や福祉用具専門相談員に歩行と住環境を見てもらう
- 候補を一つに決めつけず、複数の機種を試す
- 廊下だけ、外出時だけなど短い場面から始める
- 使いやすさ、痛み、疲れ、怖さを本人に聞いて調整する
最初は「一週間だけ」「合わなければ変える」と伝えると、心理的な負担を減らせます。本人に色や形を選んでもらうことも大切です。
家族ではなく第三者から伝えてもらう
家族の言葉は「心配しすぎ」と受け取られても、医師、理学療法士、ケアマネジャー、福祉用具専門相談員の説明なら聞き入れられることがあります。
「家族が使わせたがっている」と伝えるのではなく、専門職には本人の希望と危険な場面を共有し、「最近どんなことを続けたいですか」という話から入ってもらいましょう。
歩行器を考えたいサイン
- 壁や家具につかまって歩く
- 杖だけでは大きくふらつく
- 転倒や尻もちがあった
- スーパーのカートがないと歩きにくい
- 転倒への不安で外出が減った
詳しい判断基準は歩行器が必要になるタイミングをご覧ください。急に歩けなくなった、片側だけ力が入らない、強い痛みや意識の変化がある場合は、用具選びより先に医療機関へ相談してください。
「まだ大丈夫」の放置がいちばん危ない
「まだ大丈夫」と使わずにいるうちに、ある日突然転倒・骨折してしまうケースは少なくありません。高齢者の骨折、特に大腿骨頸部骨折(股関節周辺の骨折)は長期のリハビリが必要になり、そのまま要介護度が一気に上がることもあります。
歩行器は「転んだ後の道具」ではなく、「転ぶ前から使う予防の道具」です。「まだ大丈夫」という気持ちは自立心の表れとして尊重しながら、転倒リスクという現実を少しずつ伝えていきましょう。
シルバーカーで代用してよい?
シルバーカーは、自力歩行が比較的安定している人の外出や荷物運びを助ける用具です。身体を強く支える歩行器・歩行車とは目的が異なります。見た目だけで代用せず、必要な支持力を専門職に確認してください。
歩行器とシルバーカーの違いで選び分けを解説しています。
介護保険レンタルで短期間試す
生活上の必要性が認められた歩行器は、介護保険の福祉用具貸与を利用できる場合があります。レンタルなら、身体状況や住環境に合わないときに機種変更を相談しやすい点がメリットです。「買うわけではなく、試してみるだけ」と伝えると、本人の心理的なハードルも下がります。
対象条件と利用の流れは歩行器の介護保険レンタルと選び方をご覧ください。
どうしても使わない場合
無理に押させたり、本人の同意なく部屋へ置いたりしません。床の障害物、照明、滑りやすい履物、手すり、家具配置を見直し、別の移動方法を専門職と検討します。起き上がりや夜間の移動そのものがつらそうな場合は、介護ベッドを嫌がるときの考え方のように、寝床の環境から見直す方法もあります。
認知症などで危険を理解しにくい場合も、家族だけで抱えずケアマネジャーや医療職へ相談してください。本人の意思を尊重しながら、現実的な安全策を組み合わせます。
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「歩行器を嫌がる親」に疲れてしまったら
説得がうまくいかない時期は、家族だけで抱え込まないことも大切です。通院付き添いや見守りだけを1時間単位で頼める介護保険外サービスもあります。
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※介護保険のレンタル・住宅改修はケアマネジャーへの相談が基本です
よくある質問
歩行器を使うと本当に歩けなくなりますか?
歩行器を使っただけで歩けなくなるとは限りません。ただし、身体に合わない機種や使い方では活動量が下がることがあります。歩行器で何を続けたいかを決め、運動やリハビリは別に専門職へ確認しましょう。
本人が怒って話を聞いてくれません
その場で結論を出そうとせず、いったん話題を終えます。別の日に本人の困りごとから聞き直すか、信頼している医師や専門職から自然に話してもらいましょう。
歩行器がダメと言われるのはなぜですか?
歩行器そのものが悪いわけではなく、身体に合わない機種を選んだ場合や使い方が合っていない場合の話です。ブレーキのない機種を屋外で使う、高さが合っていない、支持力が足りないといった状態では、かえって転倒の危険が増えます。選定と調整を専門職に見てもらうことが前提の用具だと考えてください。
歩行器の代わりになるものはありますか?
状態によって、杖、歩行車、手すりの設置、家具配置の見直しなどが選択肢になります。ただしシルバーカーは荷物を運びながら歩くための用具で、身体を強く支える設計ではありません。ふらつきが強い方の代わりにはならない点に注意してください。
「まだ早い」と言われます。今は使わない方がよいですか?
使うかどうかを決める前に、歩行と住環境を専門職に見てもらうだけでも意味があります。転倒して骨折してからでは、選べる用具も生活の範囲も狭くなります。「今すぐ使う」ではなく「合うものがあるか確認する」と伝えると、本人も応じやすくなります。
杖を嫌がるのも同じ理由ですか?
「年寄りに見られたくない」「まだ必要ない」という気持ちが背景にある点は共通です。伝え方の考え方も近いので、杖の場合は親が杖を嫌がる・恥ずかしがる理由と対処法もあわせてご覧ください。
介護保険で歩行器を借りられますか?
要介護認定を受けていれば、福祉用具貸与として借りられる場合があります。歩行器は要支援1から貸与の対象になる種目で、費用は原則1〜3割の自己負担です。対象になるかどうかは心身の状況によって判断されるため、担当のケアマネジャーか地域包括支援センターへ相談してください。
まとめ
親が歩行器を嫌がるときは、正論で押し切らず、拒否の理由と続けたい生活を確認します。「危ないから」ではなく「買い物や散歩を続けるため」と目的を言い換え、本人が選んだ機種を短期間から試しましょう。そのうえで実際に使い始めた方がどう変わるかは、歩行器を使うと外出が増える?で紹介しています。
家族だけで説得せず、歩行と住環境を専門職に確認してもらうことが、安全と納得の両方につながります。候補を比較するときは歩行器おすすめ比較も参考にしてください。
どの歩行器が合うか、比較して選びたい方へ
歩行器は室内向け・外出向け・座って休めるタイプなどで使い勝手が大きく変わります。現場でよく選定していた機種をタイプ別に比較しています。
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