「借りてはみたけれど、なんだか合わない」。福祉用具のレンタルでは、よくある悩みです。高さが合わない、使いづらそう、本人が嫌がっている、状態が変わって別のものが必要になった。そんなとき、交換や変更はできるのか、誰に何を言えばいいのか、費用はどうなるのかを、制度の根拠つきで整理します。
先に結論
- 合わないと感じたら、まず借りている事業者の福祉用具専門相談員に連絡します。調整や使い方の指導、修理は、事業者の仕事として決められています
- 「合わない」は4つに分かれます。調整で済むもの/同じ種目で別の機種にするもの/種目そのものを変えるもの/もう使わないもの。どれかで、手続きが変わります
- 変更するときは、福祉用具貸与計画の変更(説明と同意)が入り、変更後の計画はケアマネジャーにも渡されます。同じ種目の中の変更は、ケアプランの「軽微な変更」にあたる場合があります
- 替えるときの料金(月の途中の扱いを含む)は、事業所ごとに違うことがあります。交換の前に確認してください
▶ 動画でも解説しています(約3分10秒)
「合わない」には4つのタイプがあります
同じ「合わない」でも、中身で動き方が変わります。まず、いまの困りごとがどれに近いかを見てください。
- ①調整で済むもの:高さ・長さ・角度・設置位置が合っていない。杖や歩行器の高さ、ベッドの角度、手すりの位置などです。
- ②同じ種目で、別の機種に替えるもの:歩行器は使うが重い、ベッドのマットレスが体に合わない、など。種目は同じで、機種を変えます。
- ③種目そのものを変えるもの:歩行器では足りなくなって車いすが必要になった、ベッドに加えて手すりが必要になった、など。使う用具の種類が変わります。
- ④もう使わないもの:状態が良くなった、入院や入所になった、使わなくなった。返却を考えます。
①は、多くの場合、相談員への1本の連絡で動きます。②〜④は、ケアプランにも関わるので、ケアマネジャーも一緒に動きます。
まず連絡するのは、借りている事業者の相談員
連絡先は、レンタルの契約をしている事業者の福祉用具専門相談員です。ケアマネジャーに先に話してもかまいませんが、調整や機種の相談は、相談員のほうが早く動けます。同じ種目でも、機能や使う目的が変わるような変更は、ケアマネジャーとの調整も必要になります。
これは、国の運営基準で、事業者の役割として決められています(指定居宅サービス等の運営基準・第199条)。
- 利用者の身体の状況に応じて、福祉用具の調整を行うこと
- 使い方・使うときの注意・故障したときの対応を書いた文書を渡し、説明すること
- 利用者などからの要請に応じて、使っている様子を確認し、必要なら使い方の指導や修理を行うこと
つまり、「ちょっと合わないので見てほしい」という連絡は、遠慮するものではなく、事業者が受ける前提の連絡です。ただし、第199条に「機種の交換」という言葉そのものはありません。希望する機種へ無条件に交換できると定められているわけではありません。一方で、事業者には、用具の適切な選定・使用について相談に応じ、安全で正常な用具を貸与する役割があります。調整で解決しないときは、交換の必要性や代わりの用具、費用・契約条件を相談してください。6か月を待たず、合わないと感じた時点で伝えて大丈夫です。
相談員に伝えると早い3点
①いつから(借りて何日目か) ②どんな場面で(立ち上がるとき、夜のトイレ、玄関など) ③どう困るか(足が床につかない、肩が痛い、本人が嫌がる、など)。
あれば、使っている様子の写真や短い動画も渡すと、見に行く前に原因の見当がつきます。
交換・変更のとき、裏で動く手続き
家族から見えにくいのですが、用具を替えるときは、次の手続きが動きます。知っておくと、「なぜ書類が出てくるのか」が分かります。
福祉用具貸与計画が変わります
貸与には、事業者が作る福祉用具貸与計画があります。目標、具体的な内容、モニタリング(実施状況の確認)の時期などが書かれた計画です。
モニタリングの結果を踏まえて必要なときは、この計画を変更します。変更するときも、最初に作るときと同じく、利用者または家族に内容を説明し、利用者の同意を得る必要があります。変更後の計画は利用者とケアマネジャーに渡されます(運営基準・第199条の2)。モニタリングを行った場合は、その結果が記録され、ケアマネジャーの所属する居宅介護支援事業所に報告されます。
相談員に伝えた内容が、計画やモニタリングを通じて、ケアマネジャーにも共有されることがあるのは、この仕組みがあるためです。
ケアプランの変更は「軽微」で済むことがあります
ケアマネジャーが作る居宅サービス計画(ケアプラン)に福祉用具が位置づけられているので、変更の内容によっては、ケアプランも見直します。ふつうは、サービス担当者会議を開くなど、一連の手順が必要です。
ただ、厚生労働省は「軽微な変更」の例として、次のようなものを示しています。
- 同等の用具に変更するときで、単位数のみが異なる場合(福祉用具の同一種目における、機能の変化を伴わない用具の変更)
- 対象福祉用具の貸与から、そのまま特定福祉用具販売(購入)への変更
これらは「軽微な変更に該当する場合がある」とされています。逆に、種目が変わる・数が増減する・機能が変わるような変更は、軽微とは限りません(自治体の資料でも、返却・付属品の増減・機能が変わる場合は軽微に含めない例が示されています)。
ここはあくまで例示で、同じ種目というだけで決まるものではありません。利用者の状態やケアプランの課題・目標への影響を踏まえて、担当のケアマネジャーが判断します。家族が気にする必要はありませんが、「機能が変わらない、同じ種類の中の変更」は、手続きが軽く済む場合がある、と覚えておくと安心です。
交換すると、料金はどうなる?
ここは、実際にいちばん気になる部分です。
- 月額そのものが変わることがあります。貸与価格は、商品ごとの上限額の範囲で事業所が設定していて、同じ商品でも事業所によって違います。要介護度に応じて価格が変わる仕組みではありません。軽いものや多機能なものに替えると、貸与価格が上がることも、下がることもあります。実際の自己負担額は、負担割合などで変わります。上限や全国平均の仕組みは、介護ベッドのレンタル料金はいくら?で解説しています
- 月の途中の扱いは、事業所ごとに違います。藤沢市のQ&Aでは、月の途中に貸与を開始・中止した場合の料金は、日割り・半額・月額など、事業所によって取り扱いが異なると案内しています。交換するときは、古い用具と新しい用具それぞれの料金、その月の合計額を事業所に確認してください。
- 通常の搬出入・設置に必要なサービスは、原則として貸与料に含まれます。ただし、通常の実施地域外の交通費や、クレーンなど搬出入に特別な措置が必要な場合の費用は、事前の説明と利用者の同意のうえで、別途かかることがあります。
トラブルを避けるために、交換を決める前に、次の3つを事業者に聞いてください。
事業者に確認する3つの質問
①替えたあとの月額はいくらになりますか(いまの用具との差額は)
②月の途中で替える場合、その月の料金は日割りですか、月額ですか
③地域外の交通費や、搬出入の特別な措置にかかる費用はありますか
貸与か購入を選べる用具は、6か月以内の見直しがあります
2024年4月から、一部の用具はレンタルにするか、購入にするかを選べるようになりました。対象は、固定用スロープ、歩行器(歩行車を除く)、歩行補助つえのうち多点杖とクラッチ類です(松葉づえや、一般的なT字杖は含まれません)。福祉用具レンタルの選び方でも触れています。
この選べる用具を借りたときは、貸与を始めてから6か月以内に、少なくとも1回モニタリングを行い、借り続ける必要があるかを検討することが、運営基準で決められています。モニタリングの時期は、貸与計画に書いておく決まりです。
つまり、このタイミングは「合うかどうか」をあらためて見直すチャンスです。もちろん、6か月を待たず、合わないと感じた時点で相談できます。「やっぱり合う」「購入に切り替えたほうが安い」「別の機種にしたい」を、相談できます。レンタルから購入に切り替える場合は、さきほどの「軽微な変更」に当たる場合があります。
買ったあとに合わなかったら
購入した用具(特定福祉用具販売)は、貸与と違って、買い切りです。購入後の返品・交換ができるかは、販売店の条件や商品の不具合の有無などによります。また、介護保険による同一種目の購入費の支給は、原則として1回です。
ただし、購入した用具が壊れた場合や、介護の必要の程度が著しく高くなった場合など特別な事情があるときは、市町村が必要と認めれば、同じ種目をもう一度、保険で購入できることがあります。判断するのは市町村で、運用も自治体で少し違います。まずは、買う前に次を確認しておくのが安全です。
- その用具は、レンタルでも借りられる種目か(借りられるなら、合わなかったときに替えられます)
- 購入の対象になる条件を満たす商品か(指定の事業者から買う必要があります)
たとえば、シャワーチェアやポータブルトイレは購入の種目です。買う前に、担当の相談員と実物で確認しておくと、「合わなかった」を減らせます。
交換しても解決しないときは
- 対応が遅い、説明が足りない:まずケアマネジャーに状況を伝えてください。福祉用具貸与の事業者を変更することもできます。ケアマネジャーと相談し、新しい事業者の受け入れや用具の引き継ぎ、いまの契約の解約条件・料金を確認して進めます。
- 状態そのものが変わってきた:用具だけでは足りないことがあります。要介護度の見直しが必要かもしれません。区分変更申請の記事も参考にしてください。
- もう使っていない:借り続けると、毎月の費用がかかり続けます。使わなくなった用具は、返却を相談してください(福祉用具の使い方のコツでも触れています)。
よくある質問
Q. 交換は何回までできますか?
介護保険の福祉用具貸与について、交換回数の一律の上限は確認できません。ただし、希望する交換が毎回無条件・無料でできるという意味ではありません。身体状況や生活上の必要性、代わりの用具、契約条件を確認して判断します。用具を替えるたびに貸与計画やケアプランが関わるため、「合わない理由」を具体的に伝えてください。
Q. 相談員だけに言えばいいですか?ケアマネジャーにも言うべきですか?
調整や機種変更の相談は、まず福祉用具専門相談員に伝えてかまいません。同じ種目でも、機能や用途などの変更内容によっては、ケアマネジャーとの調整が必要です。種目を変える、数を増やす・減らすといった変更も同じです。モニタリングを行った場合は、その結果が記録され、ケアマネジャーの所属する事業所に報告されます。迷ったら、両方に伝えて大丈夫です。
Q. 借りて数日で「合わない」と分かったら、お金はかかりますか?
料金の扱いは事業所ごとに違います。藤沢市のQ&Aでは、月の途中の開始・中止は日割り・半額・月額など、事業所の取り扱いによると案内しています。返却や交換の場合も同じように違いが出ることがあるので、契約前または交換前に、その月の料金を確認しておくのがいちばん確実です。
Q. 夜や休日に壊れたら?
運営基準では、故障したときの対応を書いた文書を渡すことになっています。夜間・休日の連絡先は、契約のときに必ず聞いておいてください。
まとめ:「合わない」は、言っていい
- 合わないと感じたら、まず借りている事業者の福祉用具専門相談員に連絡する
- 調整・使い方の指導・修理は、事業者の役割として決められている
- 変更するときは、福祉用具貸与計画の変更(説明と同意)が入り、変更後の計画はケアマネジャーにも渡される
- 同じ種目の中の変更は、ケアプランの「軽微な変更」に当たる場合がある
- 月の途中の料金は事業所ごとに違う。交換の前に、月額・日割り・搬入費の3つを確認
- 貸与か購入を選べる用具は、6か月以内の見直しがチャンス
- 購入した用具は、同一種目の支給が原則1回。買う前に、借りられる種目か相談員に聞く
「こんなことで連絡していいのかな」と思う小さな違和感ほど、早めに伝えるのがおすすめです。使い続けて転んだり、本人が使わなくなったりするより、ずっと安全で、費用も無駄になりません。
※2026年10月時点の情報です。事業者の運用、料金の扱い、ケアプランの変更手続きは、事業者・市区町村・担当のケアマネジャーによって異なります。最終的な判断は、担当のケアマネジャーと福祉用具専門相談員にご確認ください。

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