介護が突然始まったとき、「介護ベッドって買うべき?それともレンタル?」と迷う方はとても多いです。選び方を間違えると数十万円の差になることもあります。
※この記事は、元福祉用具専門相談員として15年間、数百件の相談に乗ってきた経験をもとに作成しています。
この記事では、介護ベッドのレンタル料金の目安と、その料金がどう決まっているのか、購入とどちらがお得かまでを具体的に解説します。
先に結論:介護保険を使えば、自己負担は月額800〜2,500円程度が中心です。
そして多くの方が誤解しているのですが、レンタル料金は介護度では変わりません。要支援1でも要介護5でも、同じ商品なら月額は同じです。変わるのは自己負担の割合(1〜3割)と、区分支給限度額の枠の使い方だけです。
介護ベッドの基本知識
介護ベッドには電動モーターの数によって3種類あります。どのタイプを選ぶかで費用も変わります。
- 1モーターベッド:背もたれの角度だけ調整できるタイプ。最もシンプルで費用が安い。起き上がりの補助が主な用途。
- 2モーターベッド:背もたれ+高さの調整ができるタイプ。在宅介護で最もよく使われる。介護者の腰への負担を軽減できる。
- 3モーターベッド:背もたれ・高さ・足元の3つが調整できるタイプ。介護度が高い方・床ずれ予防が必要な方向け。
介護保険でレンタルできる条件は「要介護2以上」が原則です(要介護1・要支援は例外あり)。ケアマネジャーがケアプランに組み込んだ場合に利用できます。
レンタルと購入の費用比較
まず費用の実態を確認しましょう。介護保険を使えるかどうかで、コストは大きく変わります。
介護保険レンタルの場合
- 月額レンタル料:8,000円〜25,000円程度(税込)
- 自己負担(1割負担の場合):月額800円〜2,500円程度
- 自己負担(2割・3割負担の場合):月額1,600円〜7,500円程度
購入の場合
- 1モーター:5万円〜15万円程度
- 2モーター:10万円〜25万円程度
- 3モーター:15万円〜40万円程度
1割負担で月額1,000円のレンタルと20万円の購入を比較すると、レンタルが割高になるのは200ヶ月後=約16年後です。介護ベッドをそこまで使い続けるケースはほとんどありません。介護保険が使えるなら、ほぼ確実にレンタルがお得です。
介護度でレンタル料金は変わりません
「要介護1だといくら?」「要介護3なら高くなる?」という質問をよく受けますが、答えはどの介護度でも同じです。福祉用具のレンタル料金は商品ごとに決まっていて、利用者の介護度では変わりません。
介護度によって変わるのは次の2つだけです。
- 自己負担の割合…所得によって1割・2割・3割。介護度ではなく所得で決まります
- 区分支給限度額の枠…介護度が上がるほど枠が大きくなるため、他のサービスと合わせて枠に収まりやすくなります
つまり「介護度が上がったからベッド代が高くなった」ということは起きません。金額が変わったとすれば、機種を変えたか、付属品が増えたかのどちらかです。
請求は「ベッド本体+付属品」の合計
見積もりを見て「思ったより高い」と感じる原因はたいていこれです。介護保険では、ベッド本体(特殊寝台)と、マットレスやサイドレールなどの付属品(特殊寝台付属品)は別々の種目で、それぞれに料金が付きます。
- 特殊寝台(ベッド本体)
- 特殊寝台付属品(マットレス、サイドレール、ベッド用手すり、テーブルなど)
月額の合計が8,000〜25,000円程度と幅があるのは、どの付属品をいくつ付けるかで変わるからです。見積もりをもらったら、まず「本体がいくらで、付属品がそれぞれいくらか」を分けて確認してください。
料金は国が商品ごとに公表している
福祉用具のレンタル料金は事業者が自由に決めてよいわけではありません。2018年度の介護報酬改定で、国が商品ごとに「全国平均貸与価格」と「貸与価格の上限」を公表する仕組みができました。
- 全国平均貸与価格…その商品が全国で実際にいくらで貸し出されているかの平均
- 上限価格…全国平均貸与価格に1標準偏差を足した額(正規分布なら上位約16%にあたる水準)。これを超える価格で貸し出した場合、その商品は介護保険の給付対象になりません
- 対象は貸与件数が月平均100件以上の商品です
価格は定期的に見直されます。新商品は3か月に1度公表され、すでに上限が決まっている商品は3年に1度見直されます(施行当初は1年に1度でしたが、令和3年度から3年に1度になりました)。公表は事業者の準備期間を考えて、適用のおよそ6か月前に行われます。直近では2026年10月から新規65品目、2027年1月から新規86品目の価格が適用されます。上限価格が設定されている商品は5,055商品(2026年7月1日現在)です。一覧は厚生労働省と公益財団法人テクノエイド協会のホームページで誰でも確認できます(商品名や商品コードで探せます)。
参考までに、特殊寝台(ベッド本体)では全国平均貸与価格が月7,000〜8,000円台の機種が多く、1割負担なら700〜800円台です。ただし金額は機種ごとに違うため、必ず実際の商品名で確認してください。
相談員には「全国平均貸与価格」を説明する義務があります
ここはぜひ知っておいてください。福祉用具専門相談員は、機種を提案するときにその商品の全国平均貸与価格を利用者に説明することが運営基準で義務づけられています。さらに、機能や価格帯の異なる複数の機種を提示することも義務です。
つまり、1機種だけ出されて価格の説明もない、という状態は本来の形ではありません。「この商品の全国平均はいくらですか」「他の価格帯の機種も見せてください」と聞くのは、利用者の当然の権利です。遠慮なく聞いてください。
※現場では、価格を説明されていないと感じているご家族が少なくありませんでした。相談員の側も説明したつもりで伝わっていないことがあります。聞き直すのは失礼ではないので、納得できるまで確認してください。
もうひとつ、実際の進み方も知っておくと戸惑いません。選定提案書は最後に出てくる書類です。そこへ行くまでは、相談員が実物とカタログを持ってきて説明するのが普通です。ご家族は書類の数字ではなく、目の前の実物を見て決めていることがほとんどでした。
なお、サイズの選択肢がひとつしかない用具では、実物だけで説明することもあります。「複数の機種を提示する義務」は常に何台も並ぶという意味ではありません。書類が出てこないからおかしい、実物が1つだから手を抜かれている、と考える必要はありません。気になったら「他の価格帯のものもありますか」と聞けば済みます。
介護保険が使えないとき(自費レンタル)はいくら?
要支援1・2や要介護1で例外給付にも当てはまらない場合は、自費でのレンタルになります。「全額だから10倍かかるのでは」と心配される方が多いのですが、実際はそうなりません。
介護保険の指定を受けた福祉用具事業者が自費で貸す場合、月額1,000〜2,000円程度のことが多いです(1,000円台が中心)。理由は、介護保険レンタルに切り替わったときの1割負担額と同じくらいの水準に設定している事業者が多いからです。保険が使えるようになっても利用者の負担が変わらないようにする、という考え方です。
そのため「認定が出るまで待つ」より「先に自費で始めて、認定が出たら介護保険に切り替える」ほうが現実的な場面が多くあります。詳しい条件は介護ベッドは要介護1・要支援でも借りられる?例外給付の条件で解説しています。
安さだけで選ばないほうがよい理由
レンタル料金には、商品そのもの以外にも次のものが含まれています。
- 搬入・組立・設置
- 引き取り・撤去
- 定期的なモニタリング訪問と見直しの提案
- 故障したときの対応
- 返却後の消毒・整備
極端に安い場合は、このどれかが薄いことがあります。価格を抑える提案自体はありがたいものですが、価格と一緒に「何が含まれるか」も並べて見比べてください。具体的には次の3つを聞くと違いが分かります。
- 訪問の頻度はどれくらいか
- 夜間や休日に故障したときはどう対応してくれるか
- 状態が変わったときに機種を変更できるか
そもそも、事業者を変えても差は月50〜200円ほどです
ここが、いちばんお伝えしたいところです。
現場にいた感覚では、同じ商品を別の事業者で借りたときの差は、1割負担で見ると月50〜200円ほどでした。杖のように元の金額が小さいものは差も小さく、介護ベッドや段差解消機のように元が大きいものほど差が開きます。それでも、この幅に収まることがほとんどです。
上限価格の仕組みがあるので、極端に高い事業者はそもそも介護保険で貸せません。結果として、事業者を比べて回っても年間で数百円から2,000円ほどの違いにしかならないということです。
その数百円のために、状態が変わったときすぐ動いてくれるか、夜間に故障したとき連絡がつくかを手放すのは割に合いません。すでに事業者が決まっているなら、料金表を集めて回るより担当者に上の3つを聞くほうが、はるかに効きます。
レンタルのメリット・デメリット
メリット
- 介護保険適用で自己負担が月額数百円〜数千円程度に抑えられる
- 状態が変わったとき(要介護度の変化・回復・悪化)にすぐ交換できる
- 故障しても修理・交換が無料(レンタル会社が対応)
- 不要になったらすぐ返却できる(処分の手間なし)
- 最新モデルを使える
デメリット
- 長期間(10年以上)使い続けると購入より高くなる可能性がある
- レンタル品のため中古品であることがある(消毒・点検済み)
- 介護保険が使えない場合(要介護1以下)は全額自費でレンタルになり割高感がある
購入のメリット・デメリット
メリット
- 長期間(5年以上)使い続ける場合はレンタルより割安になることがある
- 新品を使える
- 介護保険の対象外でも自由に選べる
- 特定のメーカー・モデルにこだわれる
デメリット
- 初期費用が高い(2モーターで10万〜25万円程度)
- 状態が変わっても同じベッドを使い続けるしかない
- 故障時の修理費用は自己負担
- 不要になったときの処分が大変(大型家具として処分費用がかかる)
どちらが向いているか:ケース別判断
- レンタル向き:要介護2以上で介護保険が使える、介護期間が不明、身体状況が変わりやすい、初期費用を抑えたい
- 購入向き:介護保険が使えない(要介護1以下)、5年以上の長期使用が確実、新品にこだわりたい、特定の機能が必要
迷ったときの基本方針は「介護保険が使えるならレンタル」です。状況が変わりやすい介護の現場では、柔軟に対応できるレンタルの方がリスクを抑えられます。
レンタル会社の選び方
介護ベッドのレンタルは、ケアマネジャーが福祉用具貸与事業者を紹介してくれるのが一般的です。複数の会社から見積もりを取り、比較することもできます。
- 対応の速さ:緊急での設置・交換に対応できるか(退院後すぐに必要な場合がある)
- 担当者の知識:福祉用具専門相談員が対応してくれるか(専門知識がある担当者の方が適切な提案を受けられる)
- 定期訪問の有無:月1回程度の定期訪問点検があるか
- 修理・交換の対応:故障時の対応が迅速か
- 品ぞろえ:状態に合わせた複数のモデルから選べるか
ケアマネジャーから1社だけ紹介された場合でも、「他の会社と比較したい」と伝えることは問題ありません。複数社の見積もりを比較することをおすすめします。
Q. 要介護1でも介護ベッドをレンタルできますか?
原則として要介護2以上が対象ですが、要介護1・要支援でも「例外給付」として認められる場合があります。例えば、疾患の特性や日常生活上の困難が認められる場合です。担当ケアマネジャーに相談し、例外給付の対象になるか確認してもらいましょう。どの状態なら認められるのかは介護ベッドは要介護1・要支援でも借りられる?で整理しています。
Q. 介護ベッドのレンタルはすぐに設置できますか?
多くのレンタル会社では、注文から1〜3日程度で設置対応できます。退院が急に決まった場合など緊急時でも対応してくれる会社もあります。ケアマネジャーを通じて早めに手配することをおすすめします。
Q. 購入した介護ベッドが不要になったときはどうすれば?
購入した介護ベッドは大型家具として処分することになります。自治体の粗大ごみ収集(有料)や、リサイクル業者への引き取り依頼、福祉用具専門店への売却(買取)などの方法があります。レンタルであれば返却するだけで処分の手間がないため、この点でもレンタルが便利です。
Q. 介護度が上がるとレンタル料金も上がりますか?
上がりません。レンタル料金は商品ごとに決まっており、介護度では変わりません。変わるのは自己負担の割合(所得により1〜3割)と区分支給限度額の枠だけです。金額が変わった場合は、機種の変更か付属品の追加が理由です。
Q. 提示された金額が高いかどうか、どう確かめればいいですか?
その商品の「全国平均貸与価格」と比べてください。厚生労働省とテクノエイド協会のホームページで商品ごとに公表されています。相談員には全国平均貸与価格を説明する義務があるので、「この商品の全国平均はいくらですか」と直接聞くのがいちばん早い方法です。
Q. 介護度ごとに借りられるものが違うと聞きました。
料金は変わりませんが、借りられる種目は介護度で変わります。介護ベッドや車いすは要支援1・2と要介護1では原則対象外で、例外給付の確認が必要です。介護度ごとの一覧は要支援1・要介護1で借りられる福祉用具は?介護度別の早見表にまとめています。
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自費でつなぐ間、介助の負担が重いとき
認定を待つ間や例外給付が認められない間は、自費レンタルでつなぐことになります。同じ時期に、夜間の起き上がりや移乗の介助も家族に集中しがちです。必要な時間帯だけ介助を頼める介護保険外のサービスもあります。
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※レンタル料金や支給の可否は、担当ケアマネジャーまたは福祉用具事業者へ確認してください
まとめ
介護ベッドはレンタルと購入、どちらがお得かをまとめます。
- レンタル料金は介護度では変わらない(変わるのは負担割合と支給限度額の枠)
- 請求はベッド本体+付属品の合計。内訳を分けて確認する
- 金額の妥当性は国が公表する全国平均貸与価格と比べる。相談員には説明義務がある
- 介護保険が使えるならレンタルがほぼお得(月額負担が大幅に少ない)
- 状態が変わりやすい在宅介護では、柔軟に対応できるレンタルがリスクを抑えられる
- 介護保険が使えない場合のみ購入を本格的に検討する
- レンタル会社は複数比較して選ぶ
迷ったときは担当ケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談してみてください。あなたの状況に合った最適な選択肢を一緒に考えてくれます。


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