移動用リフト関連記事の役割整理
この記事は「ベッドから車いすへの移乗」「立ち上がり介助」「つり具(スリング)の選び方」を確認する記事です。介護ベッドの選び方は介護ベッドの選び方とレンタル条件、車いすの選び方は介護保険でレンタルできる車いすの選び方、寝返りやポジショニングは体位変換器の種類と使い方で確認してください。
移動用リフトは、本人の体格、関節の動き、恐怖感、介助者の人数、住宅環境によって合う機種が変わります。導入時は必ず福祉用具専門相談員やリハビリ職に実際の移乗動作を確認してもらうことが大切です。
「ベッドから車いすへの移乗介助で腰を痛めてしまった」「体重が重くてひとりでは移乗できない」——移乗介助は在宅介護の中で最も介護者の腰に負担がかかる動作です。
介護保険では移動用リフトをレンタルできます。リフトを使うことで介護者の腰への負担を大幅に軽減し、利用者にとっても安全で安楽な移乗が実現できます。福祉用具専門相談員として15年以上、重度の方の移乗環境整備を行ってきた経験から、種類の違い・つり具の選び方・安全な使い方まで詳しく解説します。
介護保険レンタルの対象条件
移動用リフト(つり具の部分を除く)は原則として要介護2以上が対象です。要支援1・2・要介護1の方でも「日常的に立ち上がりが困難」と認められる場合は例外給付が可能です。
なお、つり具(スリング)は購入種目です(レンタル対象外)。リフト本体はレンタル、つり具は購入という扱いになります。
移動用リフトの種類と特徴
① 床走行式リフト(ポータブルリフト)
キャスター付きの本体がフロアを走行し、つり具で利用者をつり上げて移動させるリフトです。在宅での移動用リフトとして最も普及しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 動力 | 電動(充電式バッテリー)が主流 |
| 操作 | ハンドコントローラーでつり上げ・つり下げ |
| 脚部 | 開閉式(ベッドや家具の下に入れられる) |
| 移動範囲 | フロアを走行できる範囲(廊下・ドア幅の制約あり) |
| 向いている方 | 全介助・寝たきりに近い方・ベッドから車いす・入浴への移乗 |
| 必要スペース | ベッド周囲に操作のためのゆとり(最低70〜90cm) |
💡 床走行式リフトはベッドの脚の下に本体の脚を差し込んでつり上げられるため、ベッドから直接つり上げる操作が可能です。ただし、ベッドの脚の形状・高さによっては差し込めない場合があります。納品前に必ず確認します。
② スタンディングリフト(立ち上がり補助リフト)
利用者の胸・脇を支えながら立位姿勢をとらせるリフトです。完全なつり上げではなく、残存機能を活かした移乗支援が特徴です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 動力 | 電動(充電式バッテリー) |
| 操作 | 利用者が胸パッドにもたれながら電動で引き起こす |
| 対象者の条件 | 下肢に体重を一部かけられる・ある程度の体幹保持ができる |
| 向いている移乗 | ベッド→車いす、便座への移乗など短距離の移乗 |
| メリット | 床走行式より小回りが利く・利用者が立位をとることでリハビリ効果も |
| デメリット | 下肢機能がない方・体幹保持が困難な方には不向き |
⚠️ スタンディングリフトは適応の判断がとても重要です。下肢に全く力がない方・体幹の支持ができない方に無理に使用すると滑り落ちや骨折のリスクがあります。必ず理学療法士などリハビリ専門職の評価を受けてから使用してください。
③ 天井走行式リフト
天井に設置したレールに沿って移動するリフトです。床面にリフト本体が不要なためスペースを取らず、寝室・トイレ・浴室をレールでつなぐことで多くの場所に移動できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 設置 | 天井へのレール工事が必要(住宅改修扱い) |
| メリット | 床面にスペース不要・複数の部屋を移動できる・長期使用に最適 |
| デメリット | 工事が必要・費用が高い・賃貸では困難 |
| 向いている方 | 長期的に在宅介護を続ける予定・重度の全介助が必要な方 |
つり具(スリング)の種類と選び方
つり具はリフトとともに使用する「利用者を包む布」です。体格・状態・移乗目的に合わせて選ぶことが安全使用の絶対条件です。
つり具の主な種類
| 種類 | 形状・特徴 | 向いている方 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 全身型(ハンモック型) | 背中からお尻全体を包む。最も安定感が高い | 筋力がない・姿勢保持が困難・全介助の方 | 装着に時間がかかる・排泄介助がしにくい |
| セパレート型(分離型) | 上半身用・下半身用が分かれている | 装着のしやすさを重視・更衣介助を同時に行いたい方 | 分割部分に荷重がかかるため正確な装着が重要 |
| トイレ用スリング | お尻部分が開いた形状 | リフトを使ったままトイレ介助をしたい方 | 開口部の位置が便座に合うか確認が必要 |
| 頭部サポート付き | 頭部を支えるネック部分がある | 頸部保持ができない・頭部コントロールが困難な方 | 首への圧迫に注意 |
つり具のサイズ選定
つり具はサイズが合わないと滑り落ち・体の圧迫・骨折につながる重大事故の原因になります。
- 小さすぎる:体が圧迫される・滑り落ちのリスクが高い
- 大きすぎる:体がぐらつく・姿勢が安定しない
- 基本の選定方法:身長・体重・肩幅・お尻幅を計測し、メーカーのサイズ表と照合する
⚠️ つり具は必ず実際に装着して試してから購入を確定してください。体格は同じでも体型・筋緊張・関節拘縮の程度によって合うサイズが異なります。
床走行式リフトの正しい使い方
ベッドから車いすへの移乗手順
- つり具の装着:利用者をいったん側臥位にして、体の下につり具を半分敷き込む→仰臥位に戻し、反対側にも引き出して両側を合わせる
- リフト本体を近づける:ベッドの脚の間にリフトの脚を差し込む。安定を確認
- フックにつり具を掛ける:左右均等にスプレッダーバー(横棒)にかける。長さが均等かを確認
- ゆっくりつり上げる:介助者は利用者の顔の表情・体の向きを見ながら操作。急激な操作は禁物
- 車いすの位置へ移動:ゆっくりリフトを走行させ、車いすの真上に位置させる
- ゆっくりつり下げる:車いすのアームを外した状態で降ろす。座面に完全に着座したことを確認してからフックを外す
安全使用の絶対ルール
- ✅ 使用前に毎回フック・ストラップ・つり具の破損・ほつれを確認する
- ✅ 耐荷重を超えた使用は絶対にしない(製品によって100〜200kg)
- ✅ つり上げ中は利用者から目を離さない
- ✅ 利用者の不安を軽減するため、操作前に必ず「これから持ち上げますね」と声かけする
- ✅ バッテリーは使用前に残量を確認し、つり上げ中に電池切れにならないよう注意
住宅環境の確認ポイント
| 確認箇所 | 必要条件 | 不足の場合 |
|---|---|---|
| 寝室の広さ | ベッド周囲に最低70〜90cmのスペース | ベッドの配置変更・不要な家具の撤去を検討 |
| ドアの幅 | リフト本体が通過できる幅(多くは70〜80cm以上) | 引き戸への変更・住宅改修を検討 |
| 床の段差 | 段差があるとキャスターが引っかかる | スロープを合わせて設置 |
| 床の素材 | カーペット・畳ではキャスターが動きにくい | ハードフロアへの変更またはカーペットの除去 |
| バッテリー充電場所 | コンセントが近くにある | 延長コードの活用 |
よくある質問(Q&A)
Q. ひとりで操作できますか?
A. 床走行式リフトは設計上ひとりでも操作できますが、安全のため初期はふたり介助で行い、慣れてから徐々にひとりでの操作に移行するのが推奨です。特につり具の装着は側臥位への体位変換が伴うため、慣れが必要です。
Q. リフトを使うと本人が怖がりますか?
A. 初めてリフトを使う方の多くは浮遊感に不安を感じます。最初はゆっくり・低くつり上げるところから慣らしていくことが大切です。「怖い」「やめて」という訴えを無視して強行するのは絶対にしてはいけません。
Q. つり具の洗濯はできますか?
A. 多くのつり具は洗濯可能ですが、洗濯後に必ず破損・変形がないか確認してください。乾燥機は素材が傷む場合があるため、製品の洗濯表示に従ってください。
まとめ
- ✅ 要介護2以上(条件付きで軽度も可)。介護者の腰痛予防に最重要な用具
- ✅ 床走行式・スタンディング・天井走行の3種類から住宅環境と状態で選ぶ
- ✅ つり具はリフト本体と別に購入が必要。サイズは必ず試してから決める
- ✅ 使用前の毎回点検(フック・ストラップ・バッテリー)は安全の基本
- ✅ 床の段差・ドア幅・寝室スペースを事前に確認する
- ✅ 初回は必ずふたりで練習し、利用者に十分な声かけを行う
「介助のたびに腰が痛い」「ひとりでは移乗が怖い」という方は、担当の福祉用具専門相談員にご相談ください。自宅環境を確認した上で最適なリフトとつり具をご提案し、使い方を丁寧にご指導します。


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