介護保険でレンタルできる床ずれ防止用具(体圧分散マットレス)の選び方【静止型・エアマットの違いを専門相談員が解説】

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「褥瘡(床ずれ)ができてしまった」「寝たきりが続いていて、床ずれが心配」——床ずれは一度できると治りにくく、重症化すると入院が必要になることもある深刻な問題です。

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この記事は「介護保険レンタルで使う床ずれ防止用具」と「静止型・エアマットの選び方」を確認する記事です。床ずれの原因や家庭での予防は床ずれ(褥瘡)の予防とケア、福祉用具レンタル全体は介護保険でレンタルできる福祉用具13種類で確認できます。

マットレスは本人の体重、寝返り能力、皮膚状態、介護者の確認頻度によって合うものが変わります。導入前後は専門職に状態を見てもらうことが大切です。

介護保険では床ずれ防止専用の体圧分散マットレスをレンタルできます。しかし「静止型」「エアマット(動的型)」「交互圧式」など種類が多く、選び方を誤ると逆効果になることもあります。

福祉用具専門相談員として15年以上、褥瘡ケアに携わってきた経験をもとに、床ずれ防止用具の正しい選び方・使い方・注意点を徹底解説します。

床ずれ(褥瘡)はなぜできるのか

床ずれを防ぐためには、まずなぜできるのかを理解することが大切です。床ずれの主な原因は以下の3つです。

原因内容
① 圧迫(圧力)骨の出っ張り部分に体重が集中し、皮膚・皮下組織の血流が途絶える
② ずれ・摩擦体位変換や背上げ時に皮膚が引き伸ばされ、内部組織がダメージを受ける
③ 湿潤(蒸れ・汗・尿)皮膚が水分で柔らかくなり、圧迫・摩擦への耐性が著しく低下する

体圧分散マットレスは主に①の圧迫②のずれ・摩擦を軽減する道具です。③の湿潤対策は別途スキンケアや排泄ケアで対応します。

床ずれができやすい部位

体位リスクが高い部位
仰臥位(あおむけ)仙骨・尾骨・かかと・後頭部・肩甲骨
側臥位(横向き)大転子(股関節の出っ張り)・くるぶし・膝の外側・肩・耳
座位(車いす・ベッド上)坐骨・仙骨・尾骨・背骨の突起

介護保険でレンタルできる条件

床ずれ防止用具のレンタルは要介護2以上が原則対象です。要支援1・2・要介護1の方でも「日常的に寝返りが困難」と認められる場合は例外給付が可能です。

床ずれ防止用具の種類|静止型 vs 動的型

大きく分けると「静止型(圧力を分散させる素材で構成)」「動的型(空気の流れで圧力を変動させる)」の2種類があります。

静止型マットレス

モーターや電源を必要とせず、素材の弾性や構造によって体圧を分散するマットレスです。

素材体圧分散安定感向いている方デメリット
高機能ウレタンフォーム褥瘡リスクが低〜中程度・体位変換ができる方経年劣化あり(3〜5年)
低反発ウレタン○〜◎皮膚が弱い・中程度リスク沈み込みすぎて動きにくくなることも
ゲル素材長時間同一体位・中〜高度リスク重い・洗浄管理が必要
ウォーター(水)夏場・体温管理が必要な方重い・温度変化・破損リスク

動的型マットレス(エアマット)

電動ポンプで空気を送り込み、セル(空気室)の膨張・収縮を繰り返すことで体への圧力を継続的に変動させるマットレスです。

種類仕組み向いている方注意点
交互圧式奇数列・偶数列のセルが交互に膨張・収縮し、圧力を移動させる2時間ごとの体位変換が困難な方・中〜高度リスクポンプ音がする・底付きに注意
ローエアロス式(持続的空気流出型)常時微量の空気をセルから流出させ、皮膚面に気流を作る重度褥瘡・ずれ摩擦が強い・多量の発汗がある方高価・空気圧管理が複雑
ハイブリッド型(静止+動的)上層は静止型素材、下層はエアセルで構成安定感と体圧分散を両立したい方価格が高め

最重要:「底付き」とは何か・なぜ危険か

エアマットを使う上で最も注意すべきことが「底付き(ボトミング)」です。

底付きとは、空気圧が不足してセルが十分に膨らまず、体がマットを突き抜けてベッドフレームに直接当たる状態のことです。底付きが起きると体圧分散の効果がゼロになり、むしろ普通のマットレスより悪い状態になります。

底付き確認方法

利用者がマットレスに寝ている状態で、仙骨部・かかとの下にそっと手を差し込みます

  • 手のひらがわずかに触れる程度→ 適切な圧力
  • ⚠️ 余裕があってすっぽり入る→ 圧力が高すぎる(分散効果が落ちている)
  • 手が入らない・ベッドに当たる感触がある→ 底付き発生!すぐに空気圧を上げる

💡 専門相談員は必ず納品時と定期訪問時にこの確認を行います。ご家族でも毎日確認する習慣をつけることが重要です。

褥瘡リスク別:マットレスの選び方ガイド

どのマットレスを選ぶかは、利用者の褥瘡リスクの程度によって変わります。以下を参考にしてください。

リスク段階状態の目安推奨マットレス
低リスク自力で体位変換できる・皮膚状態良好高機能ウレタンフォーム(静止型)
中リスク体位変換に一部介助が必要・皮膚が弱いゲル素材またはハイブリッド型
高リスク自力での体位変換が困難・既往に褥瘡がある交互圧式エアマット
最高リスク(褥瘡あり)すでに褥瘡がある・重度の栄養障害・多量発汗ローエアロス式(持続的空気流出型)

⚠️ 重要:褥瘡が既にある場合は、医師・看護師・理学療法士・福祉用具専門相談員が連携して対応します。自己判断でマットレスを選ばず、必ず医療・介護チームに相談してください。

エアマットのポンプ設定と日常管理

交互圧式エアマットにはポンプがついており、いくつかの設定が必要です。

体重に合わせた圧力設定

ほとんどのエアマットには体重設定ダイヤルがあります。利用者の体重に合わせて設定することで、適切な圧力で体を支えます。設定を誤ると底付きや過剰圧迫が起きます。

サイクルタイム(交互の時間)の設定

交互圧式では、セルが入れ替わる時間(サイクルタイム)を設定できます。一般的には5分・10分・15分などから選びます。

  • 短いサイクル(5〜7分):より頻繁に圧力が変動する。リスクが高い方に
  • 長いサイクル(10〜15分):動きが穏やか。敏感な方・睡眠を妨げたくない方に

ポンプの異常音への対応

通常時はモーター音が一定のリズムで聞こえますが、以下の場合は異常です。

  • 音が急に大きくなった → セルの穴あき・空気漏れの可能性
  • 音が止まった → ポンプ故障の可能性
  • チューブが外れている → すぐに接続し直す

異常を感じたらすぐにレンタル事業者へ連絡し、交換してもらってください。

床ずれ防止用具と体位変換の組み合わせ

体圧分散マットレスはあくまでも補助道具です。交互圧式エアマットを使っていても、体位変換は引き続き必要です(頻度は軽減できます)。

対策内容
体位変換の頻度通常は2時間ごと。高機能エアマット使用時でも4時間以上同一体位は避ける
ポジショニングクッション踵・大転子など骨突出部をクッションで浮かせて圧を完全に除去する
スキンケア清拭・保湿で皮膚の抵抗力を維持する。尿や便による汚染は速やかに処置
栄養管理低栄養は褥瘡の最大リスク因子のひとつ。食事量・タンパク質摂取に注意

よくある質問(Q&A)

Q. 介護ベッドのマットレスと床ずれ防止用具は別物ですか?

A. 別物です。特殊寝台(介護ベッド)の付属品として提供される標準マットレスは一般的な体圧分散タイプですが、褥瘡予防に特化した高機能なものが「床ずれ防止用具」として別途レンタルできます。褥瘡リスクが高い方は両方を組み合わせることもあります。

Q. エアマットはうるさくて眠れないと聞きましたが?

A. 古い機種では騒音が問題でしたが、現在の機種は静音設計が進んでいます。それでも気になる方はサイクルタイムを長く設定するか、静音モード付きの機種を選ぶと改善します。まず試してみることをおすすめします。

Q. 床ずれがあるのに入浴はできますか?

A. 褥瘡の状態によります。医師・看護師に確認してから入浴判断を行ってください。入浴介助の際もポジショニングに注意が必要です。

まとめ

  • ✅ 床ずれの原因は「圧迫」「ずれ・摩擦」「湿潤」の3つ
  • ✅ リスクが低い→静止型、リスクが高い→交互圧式エアマット
  • ✅ エアマットは「底付き」の確認が毎日必要
  • ✅ マットレスだけでは不十分。体位変換・スキンケア・栄養管理との組み合わせが大切
  • ✅ 褥瘡がある場合は必ず医療チームと連携する

「皮膚が赤くなっている」「床ずれができそうで心配」と感じたら、早めにケアマネジャーや担当の福祉用具専門相談員にご相談ください。

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