「最近、親がつまずくことが増えた」
「スリッパで滑ったと聞いて、不安になった」
「靴を履くのをだんだん嫌がるようになってきた」
こうした変化が出てきても、「まだ普通の靴で大丈夫」と思っている家庭は多いです。
しかし実際の現場では、靴が原因でつまずき、転倒につながったケースは決して少なくありませんでした。靴底のすり減り、脱ぎ履きのしにくさ、足のむくみ——こうした変化が積み重なると、外出が億劫になり、筋力や認知機能の低下が進みやすくなります。
介護靴は「歩けなくなった人が使う靴」ではありません。転倒を予防し、今の外出を続けるための靴です。
この記事では、元福祉用具専門相談員の現場経験をもとに、
- 介護靴が必要になるサイン
- 普通の靴・リハビリシューズとの違い(比較表あり)
- 本人が嫌がるときの対応
- 選び方のポイント
をわかりやすく解説します。
介護靴が必要になるサイン

「何歳になったら使う」という基準はありません。大切なのは、生活の中の変化で判断することです。
以下のサインが1〜2つ当てはまるなら、介護靴を検討するタイミングです。
- 段差でつまずくことが増えた
- スリッパや靴底がすり減った靴で滑ることがある
- 靴を履くのに時間がかかる・嫌がるようになった
- 夕方になると足がむくんで、靴がきつくなる
- 外出の回数が減ってきた
- 歩く速度が明らかに落ちてきた
- 足を上げずにすり足で歩くようになった
現場で印象的だったのは、「靴を見れば状態がわかる」という場面でした。靴底の減り方が均一でない、かかとが踏み潰されている——こうした靴を長期間使い続けていると、転倒リスクは着実に上がります。靴底のすり減りは、歩き方の変化のサインでもあります。転倒する前に、一度足元を確認してみてください。
介護靴を使うメリット

「介護靴」というネーミングから、重度介護が必要な方向けのイメージを持たれやすいですが、実際の用途はもっと幅広いです。
転倒を予防しやすい
靴底の滑り止め加工や、つま先が引っかかりにくい設計が、転倒リスクを下げます。特に室内のフローリングや玄関周りでの転倒予防に効果的です。
脱ぎ履きが楽になる
面ファスナー(マジックテープ式)や幅広の開口部により、腰を深く曲げなくても履けます。かがむ動作自体が転倒につながることがあるため、これは重要なポイントです。
むくみに対応しやすい
幅広設計や調整可能な面ファスナーで、足の状態に合わせてフィットさせやすくなります。夕方に足がむくみやすい方でも、朝と同じ靴を履き続けられます。
外出継続につながる
「靴が履きやすい」だけで、外出への心理的ハードルが下がることがあります。外出機会を維持することは、筋力・バランス感覚・気持ちの張りを保つことにも深くつながっています。
家族の介助が楽になる
介助しながら靴を履かせる場合も、面ファスナータイプは操作しやすく、毎日の介助負担が軽減されます。
高齢者の転倒予防については、高齢者の転倒予防【自宅でできる運動・環境整備・福祉用具まで】もあわせてご覧ください。
介護靴・普通の靴・リハビリシューズの違い
「介護靴と普通の靴はどう違うのか」「リハビリシューズとは何が異なるのか」という疑問をよく受けます。本人の状態や使う場所によって、向いている靴は変わります。

| 状態・困りごと | 向いている靴 | 考え方 |
|---|---|---|
| 少しふらつくが、自分で歩ける | 普通の運動靴(底がしっかりしたもの) | 靴底のすり減りや滑り止めを先に確認する |
| 脱ぎ履きが大変になってきた | 介護靴(面ファスナータイプ) | 着脱しやすい設計で、転倒リスクを減らしやすい |
| 足のむくみが強くなってきた | 幅広介護靴・調整式介護靴 | 足のサイズ変化に対応しやすく、圧迫を防ぎやすい |
| 室内でスリッパから滑る | 室内用介護シューズ | 足に固定されるため、スリッパより安全性が高い |
| リハビリ・歩行訓練中 | リハビリシューズ | 歩行訓練に特化した設計。病院・施設での使用が多い |

介護靴=重介護状態というわけではありません。「転ぶ前の予防」として使い始める方も多く、早めに使い始めることで外出機会を長く維持できるケースがあります。
靴以外の転倒予防として、杖の選び方とおすすめやシルバーカーの導入タイミングも参考にしてみてください。
本人が介護靴を嫌がる理由と対処法

介護靴の導入でよくある壁が「本人が嫌がる」ことです。
現場で一番よく聞いたのは、「そんな老人みたいな靴は履きたくない」という言葉でした。この気持ちは自然なことです。「介護靴」というネーミング自体が、”弱くなった人が使うもの”というイメージを持たせてしまいます。家族が心配するほど、本人には「まだそんな段階じゃない」という気持ちが生まれやすくなります。
よくある拒否の理由
- 「年寄り扱いされた」と感じる
- デザインが地味・野暮ったいと思っている
- 「まだ自分は大丈夫」という自信がある
- 家族が心配しすぎだと感じている
現場で効果があった対処法
- 黒・茶色・紺など、普通の靴に近い見た目のものを選ぶ
- 「介護靴」という言葉を使わず「歩きやすい靴」として提案する
- 「転ばないため」という機能目的を具体的に伝える
- 本人に色やデザインを選んでもらう
- 無理に説得せず、気持ちが動くのを待つ時間も大切にする
最近は、普通のスニーカーに近い見た目の介護靴や、デザイン性の高いリハビリシューズが増えています。「介護靴に見えない介護靴」を選ぶことで、受け入れてもらいやすくなるケースがあります。
同じように、杖や歩行器を嫌がる場合の対応については、親が杖を嫌がる理由と対処法も参考になります。
介護靴の選び方

選ぶときに確認しておきたいポイントをまとめます。
① 室内用か外出用かを決める
使う場所を先に決めます。室内用は薄底で滑り止め重視、外出用は耐久性と安定感が大切です。両方必要な場合は、それぞれ用意するのがおすすめです。
② 面ファスナー(マジックテープ式)かどうか
脱ぎ履きの大変さが気になる方には、面ファスナー式が最も使いやすいです。一本ベルトのタイプが操作しやすく、介助する側にとっても楽です。
③ 滑り止め加工の確認
靴底に滑り止め加工があるかを確認します。特に室内用は、フローリングや廊下での滑り防止が重要です。
④ 軽さ
靴が重いと足が上がりにくくなります。「最近歩くのが疲れる」という方は、軽量タイプを優先しましょう。
⑤ 幅広・むくみ対応かどうか

夕方にむくみが出る方や、足の甲が高い方は、幅広タイプか調整式を選びます。3E〜5E相当の靴が目安です。
⑥ つま先のゆとり
つま先が広く、指が当たりにくい形状のものが歩きやすいです。外反母趾がある方は、先端の形状を必ず確認してください。
⑦ 洗えるかどうか
室内用は汚れやすいため、丸洗いできるタイプが実用的です。毎日使うものなので、手入れのしやすさも選ぶポイントです。

タイプ別おすすめ介護靴
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用途・状態に合わせて選びやすいよう、タイプ別に整理しました。
室内用介護シューズ
スリッパの代わりに使える室内用介護シューズです。足に固定されるため、スリッパよりも滑りにくく転倒予防に効果的です。
外出用介護靴
外出時の歩行安定を目的とした介護靴です。面ファスナーで着脱しやすく、靴底に滑り止めが施されたものが多いです。
むくみ対応介護靴
幅広設計で、むくみが強い方でも無理なく履けます。調整式のベルトで夕方の足の変化に対応しやすいです。
男性向け介護靴
黒・紺など落ち着いたカラーで、普通の靴に近い見た目のものが増えています。「介護靴に見えない」デザインが本人の受け入れを促しやすいです。
女性向け介護靴
ベージュ・ピンク・ラベンダーなど、女性が好む色合いのものも多くなっています。おしゃれに近い見た目で受け入れてもらいやすいです。
介護用シューズの詳しい選び方については、介護用シューズの選び方【転倒予防と足のトラブル対策】もあわせてご覧ください。
まとめ|「転ばないため」に早めに使い始めることが大切
介護靴は、転倒してから使い始める道具ではありません。
「最近つまずくことが増えた」「靴の脱ぎ履きが大変になってきた」というサインが出てきたときが、検討するタイミングです。
外出を続けることは、筋力・バランス感覚・認知機能・気持ちの張りを維持することと深くつながっています。靴が合わないだけで外出機会が減っている方は少なくありません。
「まだ早いのでは」と感じるタイミングこそ、動き始めることが大切です。本人の気持ちを尊重しながら、「安全に外出できる環境を整えること」を家族で一緒に考えてみてください。
- 転倒が心配になってきたら、転倒予防の環境整備と運動もあわせて確認してください。
- 外出時の安定が不安なら、歩行器はいつから必要かも参考にしてみてください。
- 荷物を持ちながら外出したい場合は、シルバーカーの導入タイミングも選択肢のひとつです。


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