認知症の方への接し方・対応のコツ【怒らずに伝える方法を専門相談員が解説】

・認知症・医療
認知症の方への接し方・対応のコツ

「同じことを何度も聞かれて、ついイライラしてしまう」
「やさしくしたいのに、怒鳴ってしまう自分が嫌だ」
「どう接すればいいかわからなくて、毎日消耗している」

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この記事は「家族の接し方」と「困った場面への対応」をまとめた実践記事です。初期症状の確認は初期症状チェックリスト、認知症の種類は認知症の種類と初期症状を確認してください。

認知症の方への介護は、気持ちと現実のギャップに苦しむことの連続です。

この記事では、福祉用具専門相談員として15年間、認知症の方とそのご家族に寄り添ってきた経験をもとに、認知症介護の基本原則・NGな対応・困った場面別の対応のコツを具体的にお伝えします。

まず知っておきたい:認知症介護の3つの大原則

原則① 「否定しない・訂正しない」

認知症の方の発言が事実と違っていても、正面から否定・訂正するのは逆効果です。

例えば「財布を盗まれた!」と言われたとき、「そんなことない、あなたが置き忘れたんでしょ」と反論すると、本人はますます混乱し、不安・怒りが増します。

まず「そうなんですね、それは大変でしたね」と共感してから、一緒に探す方向に持っていきましょう。

原則② 「感情は残る」ことを理解する

認知症になっても、感情の記憶は残ります。出来事の内容は忘れても「なんか怖かった」「あの人は怖い人だ」という印象は残り続けます。

✅ たとえ本人が忘れても、穏やかに接することが信頼関係の積み重ねになります。

原則③ 「その人の世界に合わせる」

認知症の方には、私たちとは違う「現実」が見えています。その世界を否定せず、一緒にその世界に入っていくことが、穏やかな関係を築く近道です。

やってはいけない!NGな対応

NGな対応 なぜダメ? 代わりにこうしよう
「さっき言ったでしょ!」 記憶がないので責めても意味がなく、傷つける 何度でも笑顔で答える
「違います、それは間違い」 混乱・不安・怒りが増す まず共感してから話題を変える
「なんでできないの!」 自尊心が傷つき、BPSD(行動・心理症状)が悪化する 「一緒にやりましょう」と誘う
子ども扱いした言葉遣い プライドを傷つけ、抵抗感が生まれる 敬語を使い、大人として接する
複数の指示を一度に出す 理解・処理が追いつかず混乱する 一度に1つだけ伝える
「施設に入れるよ」と脅す 強い恐怖・不安・不信感を生む 安心できる言葉をかける

困った場面別!実践的な対応のコツ

① 同じことを何度も聞かれる

「今日は何日?」「ご飯はまだ?」を1日に何十回も聞かれる…これは介護者が最も消耗する場面のひとつです。

対応のコツ:

  • 「また聞いてきた」ではなく「初めて聞かれた」として答える気持ちで
  • カレンダー・時計・ホワイトボードを目立つ場所に置き、本人が自分で確認できる環境を作る
  • 「ご飯はまだ?」→「もうすぐですよ、一緒に準備しましょうか?」と気持ちを動かす

💡 同じことを聞くのは「不安だから」です。質問の背後にある不安を取り除くことが根本的な解決策です。

② 徘徊(外に出ようとする)

「家に帰る」「仕事に行く」と言って外に出ようとする行動は、認知症介護でも特に対応が難しい場面です。

対応のコツ:

  • 「ダメ!」と制止せず、まず「どこへ行くんですか?」と理由を聞く
  • 「一緒に行きましょう」と同行し、少し歩いてから「お茶でも飲んで休みましょう」と誘導
  • 出口に目立たないカバーをかける・センサーを設置するなど環境整備も有効
  • 「仕事に行く」→「今日はお休みですよ」と穏やかに伝える

⚠️ 徘徊による行方不明・事故は非常に多いです。GPS機器の活用・自治体の見守りサービス登録も検討しましょう。

③ 食事を拒否する

「食べない」「毒が入ってる」「さっき食べた」などと言って食事を拒否されることがあります。

対応のコツ:

  • 無理強いせず、少し時間を置いてから再度声かけする
  • 好きな食べ物・馴染みのある食器を使う
  • 「毒が入ってる」→否定せず「私も一緒に食べますよ」と先に食べて見せる
  • テレビを消すなど、食事に集中できる環境を整える
  • 一度に大量でなく、少量を何回かに分けて出す

④ 暴言・暴力

介護中に「バカ!」「出て行け!」と怒鳴られたり、叩かれたりすることがあります。これはBPSD(認知症の行動・心理症状)のひとつで、本人も意図してやっているわけではありません。

対応のコツ:

  • その場を離れる(少し距離を置くだけで落ち着くことが多い)
  • 感情が高ぶっているときは、話しかけずそっとそばにいるだけでもよい
  • 原因を探る(痛み・不快感・プライドを傷つけられた経験がないか)
  • 叩かれそうなときは正面に立たず、斜め後ろから介助する

💡 暴言・暴力が激しく介護者が危険を感じる場合は、医師・ケアマネジャーへの相談が必要です。適切な薬物療法でBPSDが改善するケースも多くあります。

⑤ 物盗られ妄想(「財布を盗まれた」)

「財布を盗んだ」「通帳がなくなった」と身近な介護者が疑われる…これは認知症介護で最も介護者が傷つく場面のひとつです。

対応のコツ:

  • 「盗っていない!」と感情的に反論しない
  • 「一緒に探しましょう」と付き合う
  • よく探す場所(引き出し・タンスの奥など)に本人と一緒に「見つける」演技をする
  • 疑われやすい人(同居家族)が席を外し、第三者が一緒に探すと収まることも
  • 大切なものは複数用意しておく(財布のダミーなど)

💡 物盗られ妄想はあなたの責任ではありません。最も身近で安心できる相手だからこそ向けられる症状です。

⑥ 入浴を嫌がる

「さっと入った」「昨日入った」と言って入浴を拒否するケースは非常に多いです。

対応のコツ:

  • 「お風呂に入って」ではなく「温かいお風呂が準備できましたよ」と具体的に誘う
  • 入浴が嫌な場合は清拭(体を拭く)でもOK。完璧を求めない
  • 本人が好きな時間帯(朝派・夜派)に合わせる
  • デイサービスで入浴してもらうのも有効

コミュニケーションの基本テクニック

テクニック ポイント
目線を合わせる 立ったまま上から話しかけない。同じ目の高さで話す
ゆっくり・はっきり話す 早口は聞き取れない。短い文で伝える
名前で呼ぶ 「お父さん」より本名・馴染みの呼び名が反応しやすい
笑顔・穏やかなトーン 言葉の内容より表情・声のトーンが伝わる
触れる(タッチング) 手を握る・背中をさするだけで安心感が伝わる
「Yes」で答えられる質問をする 「○○しますか?」と選択肢を与えず「○○しましょう」と誘う

介護者が「楽になる」ための考え方

認知症介護で大切なのは、「完璧にやろうとしないこと」です。

  • 怒鳴ってしまっても「またやってしまった」で終わりにしない。次に穏やかに接すれば十分
  • 「なぜこんなことをするの?」と理由を探しすぎない。症状だと割り切る
  • 1人で抱え込まず、デイサービス・訪問介護を積極活用する
  • 「良い介護者」より「長く続けられる介護者」を目指す

💡 認知症介護には「正解」がありません。その日その場で一番穏やかな方法を選ぶ、それだけで十分です。

関連書籍を確認する前に

以下のリンクには広告・アフィリエイトを含みます。認知症の対応は、本人の病状や生活環境によって変わります。本で学ぶことも大切ですが、困りごとが続く場合は地域包括支援センター、ケアマネジャー、医療機関へ相談してください。

迷ったらこれ:今すぐ使わなくても、必要になった時の選択肢を先に知っておくと落ち着いて対応できます。

気になる商品やサービスは、下のリンクから確認してください。

不安が強いテーマほど、早めに選択肢を確認しておくと家族の負担を減らしやすくなります。

家族が最初に戸惑うのはこんな場面

認知症の介護を始めた家族が「どうしていいか分からない」と感じる場面はいくつかのパターンに集中します。現場での相談でよく聞かれた場面を整理します。

同じ話を何度もする

「さっきも同じことを話してくれたよ」と伝えたくなりますが、本人には直前の記憶がありません。何十回目でも本人にとっては「初めて話す話」です。驚いたり笑ったりしながら毎回付き合う余裕が出てくると、お互いの負担が減ります。繰り返しの話題には、本人が安心しているテーマが多いです。

物をなくしたと言う

「財布がない」「通帳を盗まれた」と言われると、家族は傷つきます。しかしこれは物盗られ妄想と呼ばれる認知症の症状のひとつで、最も身近で安心できる人に向けられやすいという特徴があります。「盗っていない」と否定せず、「一緒に探しましょう」と動くことが、最も早く収まる対応です。

話がかみ合わない

時間や場所の感覚がずれているため、「もう朝ご飯の時間だ」「仕事に行かないと」など、現実と合わない言動が出ます。「今は夜ですよ」と訂正するより、「今日はお休みですよ、一緒にお茶でも飲みましょうか」と穏やかに別の行動へ誘う方が、本人も家族も落ち着きます。

急に怒りっぽくなった

穏やかだった親が急に怒鳴るようになった、些細なことで不機嫌になる——この変化に戸惑う家族は多いです。怒りっぽさはBPSD(認知症の行動・心理症状)のひとつで、不安・恐怖・プライドを傷つけられた感覚が引き金になることがよくあります。感情が高ぶっているときはそっと距離を置き、落ち着いたタイミングで声をかけるのが効果的です。

こんな時は早めに相談した方がよい

「まだ家族だけで頑張れる」と思っていても、以下のような状態が続いている場合は専門家への相談を検討するタイミングです。

徘徊がある

夜中に外に出てしまう、一人で出かけて帰れなくなるという状況は、家族だけの見守りでは限界があります。自治体の見守りサービスへの登録、GPS機器の活用、ケアマネジャーへの相談を早めに行いましょう。行方不明になってからでは取り返しがつかないケースもあります。

火の不始末が増えた

コンロの消し忘れ、煙草の不始末など、火に関するリスクは命に直結します。IHコンロへの切り替え、自動消火機器の設置、訪問介護の活用などを組み合わせて対応します。「まだ大丈夫」という判断が遅れると取り返しのつかない事故につながります。

介護負担が限界に近い

「眠れない」「毎日がつらい」「消えてしまいたい」という気持ちが出てきたら、介護者自身が限界のサインです。介護疲れは本人も支援者も気づきにくいまま進行します。ケアマネジャーへの相談、デイサービスの増加、ショートステイの利用を検討してください。一人で抱え込まないことが、介護を長く続けるための大前提です。ケアマネジャーとうまく付き合う5つのコツも参考になります。

家族だけでは対応できない場面が増えた

入浴拒否・食事拒否・夜間の不穏など、対応が難しい場面が増えてきたら、介護保険サービスの活用を具体的に検討するタイミングです。介護保険で使えるサービスの種類一覧で対応できるサービスを確認しておきましょう。入院・退院が発生した場合は退院準備チェックリストで自宅環境の整備も確認できます。

認知症になってもできることはたくさんある

認知症というと「できなくなること」ばかりに目が向きがちですが、実際には多くのことが維持されています。

  • 長期記憶は比較的保たれる:最近のことは忘れても、若い頃の記憶・昔の習慣・好きだった音楽や場所は記憶に残りやすいです。その人が若い頃得意だったことを一緒にやってみると、表情が変わることがよくあります
  • 感情の記憶は残る:出来事の内容は忘れても「楽しかった」「あの人は好き」という感情は残ります。穏やかな時間を一緒に作ることは、記憶として残らなくても本人の安心感につながります
  • 役割があると意欲が続く:「お茶を用意してもらう」「洗濯物をたたんでもらう」など、家族の中での役割が残ると、本人の自尊心が保たれやすくなります。「何もしなくていいから座っていて」という環境より、小さな役割がある環境の方が穏やかに過ごせるケースが多いです
  • 自尊心は最後まで残る:どんな状態でも、子ども扱いされることや笑われることへの違和感は残ります。「この人は分からないから何を言っても大丈夫」という姿勢は必ず伝わります。大人として敬意を持って接することが、関係性を保つ基本です

現場の一言

現場の一言

現場では「どう接したらいいか分からない」と悩むご家族をたくさん見てきました。

認知症の方への対応に正解はありません。

ただ、否定されることは誰でもつらいものです。

まずは「間違いを正す」より「安心してもらう」を意識するだけでも、関係が変わることがあります。

まとめ

  • 基本原則は「否定しない・感情に寄り添う・その人の世界に合わせる」
  • NGは「さっき言ったでしょ」「違います」「なんでできないの」
  • 困った行動には「制止より共感・誘導・環境整備」で対応
  • コミュニケーションは「目線・笑顔・ゆっくり・名前で呼ぶ」が基本
  • 介護者自身が「完璧を求めず、長く続けること」を目標にする

毎日本当に大変な中、ここまで読んでくださってありがとうございます。今日もよく頑張っています。

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この記事を書いた人

介護福祉ナビ運営者

元福祉用具専門相談員。

福祉用具の選定、住環境整備、退院支援などに携わった経験をもとに、在宅介護で役立つ情報を発信しています。

実際の相談現場で多かった悩みや失敗例をもとに、家族が判断しやすい形で解説しています。

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