「車いすを選ぼうとしたけど、種類が多すぎてどれがいいかわからない」
※この記事は、元福祉用具専門相談員として実際の相談現場で多かった事例や質問をもとに作成しています。
そんなお声を、現場でよく耳にしました。
私は福祉用具専門相談員として10年以上、数百件のご自宅や施設を訪問し、車いすの選定・納品に携わってきました。この記事では、車いすの種類・特徴・選び方を、実際の現場経験をもとにわかりやすくお伝えします。
・車いすの種類は「4つ」ではなく2つの軸で決まる
・「自走」と「自操」は、住んでいる制度が違う言葉
・車いすの外寸と、家のドアを通れるかの判断(JISと法律の数値)
・各部の正式名称と、ふだんの呼び方の対応
・失敗しない車いす選びの8つのポイント
・介護保険で借りられる条件と費用目安
車いすの主な種類
車いすは「自走式」「介助式」「電動」「リクライニング」と4つ並べて説明されることが多いのですが、この並べ方には無理があります。リクライニングは「4番目の種類」ではなく、自走式にも介助式にも付く別の軸だからです。
日本産業規格 JIS T 9201:2016「手動車椅子」は、車いすの種類を次の2つの軸で区分しています(4.1 車椅子の種類)。
- 軸1 駆動方式……自走用/介助用(誰が動かすか)
- 軸2 シートの機能……標準形/座位変換形(座り方を変えられるか)
この2軸で見ると「自走用の標準形」「介助用の座位変換形」というように、4つの組み合わせで整理できます。カタログや事業者の説明が急に読みやすくなるので、最初にこの形を頭に入れてください。

なお電動車いすは、この表の外側です。JIS T 9201は「手動車椅子」の規格なので電動車いすは対象外で、電動車いすの規格は JIS T 9203。介護保険の告示でも「普通型電動車いす」として別に定められています。

① 自走用標準型車いす(自走式)
後輪の外側に付いたハンドリムを自分で操作して移動するタイプです。後輪が大きく(18〜24インチ)、自力で段差を乗り越えやすい設計になっています。
介護保険の告示に書かれている正式名称は「自走用標準型車いす」です。「自操式」という表記を見かけることがありますが、手動車いすの制度ではこの言い方は使いません。理由は「自走」と「自操」はどう違うのかで説明します。
こんな方に向いています:腕や手に十分な力がある方、自分で移動したい方、リハビリ中で自立を目指している方。
② 介助用標準型車いす(介助式)
ハンドリムがなく、介助者が後ろから押して移動するタイプです。後輪が小さく(12〜16インチ)、コンパクトで軽量なため介護者の負担を軽減できます。
JISは介助用について「介助用標準形は、制動用ブレーキをもつものとする」と定めています(6.3 c)。手押しハンドルの手元にある、走りながら速度を落とすためのブレーキのことです。停めておくための駐車用ブレーキとは別物なので、購入・レンタル時は手元にブレーキが付いているかを必ず見てください。
こんな方に向いています:常時介助が必要な方、上肢の力が弱い方、認知症で操作が難しい方。
③ 普通型電動車いす(電動)
モーターの力でジョイスティックや操作レバーを使って移動するタイプです。上肢の力が弱くても自分で移動でき、自立した生活をサポートします。介護保険で月額レンタルも可能です(要介護2以上が基本)。
介護保険の告示での名称は「普通型電動車いす」。規格は手動車いすとは別の JIS T 9203 で、補装具の基準では最高速度によって低速用(4.5km/h以下)と中速用(6.0km/h以下)に分かれています。手動車いすに電動の駆動装置を後付けしたものは「簡易形」と呼ばれ、介護保険では車いす本体ではなく車いす付属品の「電動補助装置」として扱われます。
④ 座位変換形(リクライニング・ティルト式)
背もたれや座面の角度を変えられるタイプで、JISではこれを「座位変換形」と呼びます(JIS T 9201:2016 3.15)。長時間の座位が必要な方や褥瘡(床ずれ)リスクが高い方に適しています。
混同されやすい3つの機構を、JISの定義で並べると違いがはっきりします。
| 機構 | JISの定義 | 動くところ |
|---|---|---|
| リクライニング機構 | バックサポート角度が変換でき、バックサポートの傾斜を工具を使わずに調整できる機構(3.11) | 背もたれだけ |
| ティルト機構 | シートとバックサポートとの角度が固定されたまま、シート及びバックサポートの傾斜を一体的に工具を使わずに調整できる機構(3.12) | 座面ごと一体で |
| ティルト・リクライニング機構 | バックサポート角度及びシート角度が変換でき、それぞれ工具を使わずに調整できる機構(3.13) | 背と座面を別々に |
| エレベーティング機構 | シートとフット・レッグサポートとの角度が調整できる機構(3.16。挙上式ともいう) | 足を上げ下げする |
ここが使い分けの理由です。座面が水平のまま背もたれだけを倒すと、体は背中に沿って前下方へ滑ろうとします。座面ごと後ろへ傾ける(ティルト)と、体と座面の位置関係が変わらないため、姿勢が保たれます。
この2つの違いと使い分けは、リクライニング車椅子とティルト車椅子の違いで詳しく解説しています。
自走式と介助式の比較一覧
| 項目 | 自走式 | 介助式 |
|---|---|---|
| ハンドリム | あり | なし |
| 後輪サイズ | 18〜24インチ(大きい) | 12〜16インチ(小さい) |
| 重量の目安 | 10〜16kg | 9〜13kg |
| 操作者 | 利用者本人 | 介助者 |
| 小回り | やや大きい | コンパクトで取り回しやすい |
| 価格帯 | 20,000〜50,000円 | 18,000〜40,000円 |
「自走」と「自操」はどう違うのか
車いすを調べていると「自走式」と「自操式」の両方を見かけます。どちらかの書き間違いだと思われがちですが、そうではありません。この2つは、住んでいる制度が違う言葉です。
| どの分野の言葉か | 正式な言い方 | 根拠 |
|---|---|---|
| 介護保険で借りる手動車いす | 自走用標準型車いす | 平成11年厚生省告示第93号 |
| 補装具(障害者総合支援法) | 自走用/介助用 | 平成18年厚生労働省告示第528号 |
| 手動車いすのJIS規格 | 自走用/介助用 | JIS T 9201:2016 4.1 |
| 電動車いす | 自操用/介助用 | 電動車いす安全普及協会 |
| 福祉車両(自動車) | 自操式/介護式 | 運転を本人がするか介助者がするか |
手動車いすの制度では、3つとも「自走用」で統一されています。「自操」という表記は、介護保険の告示にも、補装具の告示にも、JISにも一度も出てきません(いずれも全文を確認しました)。
一方で「自操」は、電動車いすと福祉車両では実際に使われている言葉です。電動車いすの業界団体は「電動車いすは大きく分けて、自操用と介助用の2種類に分けることができます」と説明していますし、自動車メーカーは運転を本人がするタイプの車を「自操式車両」と呼んでいます。どちらも「自分で操作する」という意味で、指しているものが手動車いすではないだけです。
つまり「自走と自操の違い」を調べても答えが見つかりにくいのは、この3つの分野の言葉が混ざったものを見ているからです。覚えておくことは1つで十分です。ケアマネジャーや福祉用具事業者とやりとりする書類に出てくるのは、手動車いすなら必ず「自走用」のほう。
※元福祉用具専門相談員として手動車いすの選定・納品に携わっていましたが、現場で「自操」という表記を見聞きすることはありませんでした。手動車いすの世界では使わない言葉、と考えて差し支えありません。
車いすの各部の名称
「フットレスト」「バックレスト」といったふだんの呼び方と、規格上の正式名称は少しずつ違います。カタログやレンタルの書類には正式名称のほうが出てくるので、対応を知っておくと説明が読みやすくなります。

JIS T 9201:2016 の附属書JB(規定)表JB.1「各部の名称」では、次のように定められています。かっこ内はJIS自身が通称として併記しているものなので、どちらかが誤りということはありません。
| 正式名称 | ふだんの呼び方 | どこの部分か |
|---|---|---|
| シート | 座面 | でん部・大たい部の支持装置 |
| バックサポート | バックレスト | 背の支持装置 |
| アームサポート | アームレスト | 腕の支持装置 |
| フット・レッグサポート | ― | 下たい・足部の支持装置 |
| フットサポート | フットレスト | 足部の支持装置 |
| レッグサポート | レッグレスト | 下たいの支持装置 |
| ヘッドサポート | ヘッドレスト | 頭部の支持装置 |
| サイドガード | スカートガード | 衣類が後輪に巻き込まれたり汚れたりするのを防ぐ板や布 |
| ハンドリム | ― | 駆動輪に取り付けられ、手で回すための輪 |
| 手押しハンドル | グリップ | 介助者が後方から押すときに使う取っ手 |
| ティッピングレバー | ティッピングバー | 介助者が前輪上げをするときに踏むレバーまたはプレート |
| キャスタ | 前輪 | 自由に方向が変わる車輪付き装置 |
| 転倒防止装置 | ― | 後方への転倒を止める装置 |
同じ後輪でも、自走用と介助用で名前が変わる
見落とされやすいのがここです。JISでは自走用の後輪を「駆動輪」、介助用の後輪を「主輪」と呼び分けています。自走用は本人が回して進むので「駆動」、介助用は本人が回さないので単に「主」の輪、という理屈です。
この呼び分けを知っていると、カタログの仕様表を見ただけで自走用か介助用かが分かります。「駆動輪」と書いてあればハンドリムが付いた自走用です。
ブレーキは2種類ある
JISはブレーキを2つに分けています(4.2.2)。
- 駐車用ブレーキ……車いすを停止させておくためのブレーキ。後輪の横にあるレバーで、移乗のときに必ずかけるもの
- 制動用ブレーキ……走行中に速度を落とすためのブレーキ。手押しハンドルの手元にあり、介助用標準形には必須
駐車用ブレーキには、レバーを延ばして軽い力でかけられる延長ブレーキもあります。握力が落ちてきた方や、腰をかがめるのがつらい介助者には、これがあるだけで負担がまったく変わります。レンタルなら交換や追加を相談できるので、使いにくいと感じたら我慢せず事業者に伝えてください。
車いすを選ぶときの8つのポイント
1. シートの幅・奥行き
座面が体に合っていないと褥瘡や姿勢の崩れにつながります。座幅の目安は「お尻の幅+左右各2〜3cm(指が2本入るくらい)」。奥行きは太ももが浮かない深さが理想です。測り方はこの記事の車いすのサイズで詳しく整理しています。クッションの素材ごとの違いは車いすクッション素材別比較で解説しています。
2. 重量
車に積み込む場面を考えると、10kg以下の軽量タイプが介護者に優しい選択です。アルミ製フレームの製品は比較的軽量です。
3. 折りたたみ機能
外出・通院時に車のトランクへ収納できるか確認しましょう。ほとんどの標準型は折りたたみ対応ですが、リクライニング式は折りたためない場合もあります。
4. フットサポート(フットレスト・足置き)
乗り降りのしやすさには着脱式・開き式(スイングアウト式)が便利です。JISはフット・レッグサポートの形式を「固定式/挙上式/開き式/着脱式」に分けており、いずれも工具を使わずに操作できるものを指します。高さ調整ができるものを選ぶと体型に合わせやすくなります。
5. アームサポート(アームレスト・肘掛け)
跳ね上げ式のアームサポートは、ベッドや椅子への移乗がしやすく介護負担を大きく減らせます。JISには跳ね上げ式のほかに、側方へ倒す「横倒し式」、座面まで下げる「落し込み式」、外せる「着脱式」もあります。横方向へ滑らせて移る(スライディングボードを使う)なら、跳ね上げより落し込み式や着脱式のほうが移乗しやすいので、移乗の仕方を先に決めてから選んでください。
6. タイヤの種類
「ノーパンクタイヤ」はパンクの心配がなくメンテナンスが楽。「空気入りタイヤ」は乗り心地がよく段差に強い。日常的な屋内使用にはノーパンクがおすすめです。
7. ブレーキ形式
停めておくための駐車用ブレーキのほか、走行中に速度を落とす制動用ブレーキが手押しハンドルの手元に付いたものがあります。坂道での安全性を考えると、制動用ブレーキ付きが安心です。介助用標準形にはJISで制動用ブレーキが必須とされています。
8. 介護保険対応かどうか
介護保険の福祉用具貸与として申請できるものと、できないものがあります。告示で対象と決められているのは「自走用標準型車いす」「介助用標準型車いす」「普通型電動車いす」の3つだけです。ケアマネジャーに確認してから購入・レンタルを決めましょう。
車いすの種類を理解したうえで、実際の商品候補を比較したい方は、車いすおすすめランキングも参考にしてください。自走式・介助式など、使い方に合わせて選ぶことが大切です。
元専門相談員おすすめ車いす3選
【自走式】ケアテックジャパン ハピネス CA-10SU
介護現場で最もよく見かけるベストセラー。重量12kg・ノーパンクタイヤでメンテナンスが楽。メッシュシートは取り外して洗濯でき、8色のカラーバリエーションも人気です。
迷ったらこれ:はじめて選ぶ場合は、軽くて扱いやすいモデルや、今の生活動作に合うタイプを選ぶと安心です。
用途に合う商品を、下の商品リンクから確認してください。
はじめて選ぶ場合は、使う場所・本人の状態・介助する人の負担を確認しておくと失敗しにくいです。
【介助式】ケアテックジャパン ハピネス CA-21SU
重量11kg・軽量アルミフレームで介助者の疲労を軽減。反射板と安全ベルト標準装備で屋外使用も安心。コンパクトで狭い廊下でも取り回しやすい。
【自走介助兼用】RAKU 軽量折りたたみ車いす
重量10.5kg・アルミ製でとにかく軽い。介助ブレーキ・レッグサポート・ポケット付きで機能充実。価格も手頃で初めての車いす購入に最適です。
介護保険でレンタルできる?費用の目安は?
まず、介護保険の福祉用具貸与で借りられる車いすは、告示で3つに限定されています(平成11年厚生省告示第93号)。
- 自走用標準型車いす
- 介助用標準型車いす
- 普通型電動車いす
そのうえで、車いすは「軽度者は原則として保険給付の対象外」となる種目です。要支援1・2と要介護1の方は、原則として借りられません。目安として「要介護2以上」と説明されるのは、このためです。
ただし例外給付があります。厚生労働大臣が定める者として、次のいずれかに当てはまる場合です。
| 例外に当たる状態 | どう確認するか |
|---|---|
| (一)日常的に歩行が困難な者 | 認定調査の基本調査「1-7 歩行」が3「できない」に該当するか |
| (二)日常生活範囲における移動の支援が特に必要と認められる者 | 対応する基本調査項目がないため、医師の意見とサービス担当者会議等による適切なケアマネジメントで判断する |
手続きに必要な書類や確認の流れは市町村によって運用が異なります。共通して押さえておきたいのは、さかのぼっての保険給付は認められないのが原則だということです。先に契約してしまうと、その期間は自費になります。必ず貸与を始める前に、ケアマネジャーに相談してください。
条件と料金の詳細は車いすは要支援・要介護1でもレンタルできる?にまとめています。福祉用具全体でどの種目が要支援から借りられるのかは介護保険でレンタルできる福祉用具の早見表で確認できます。
| 負担割合 | 月額レンタル料の目安 |
|---|---|
| 1割負担 | 約300〜700円/月 |
| 2割負担 | 約600〜1,400円/月 |
| 3割負担 | 約900〜2,100円/月 |
レンタルと購入どちらがよいかは、使用期間と状態の変化によります。リハビリ中で回復が見込める場合はレンタルが合理的。長期使用が確実な場合は購入も検討しましょう。担当ケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談することをおすすめします。
車いすのサイズは必ず測る|ここが選定の要
種類が決まったら、次はサイズです。「だいたいこのくらい」で選ぶと、体に合わない車いすが原因で姿勢が崩れたり、床ずれができたりします。現場でいちばんトラブルが多いのがここでした。
「サイズ」には2つある
車いすのサイズを調べていると、話が2つ混ざります。
- ① 本体の外寸(幅・長さ・高さ)……家のドアを通れるか、車に積めるかが決まる
- ② 体に合わせる寸法(座幅・座面高・奥行き)……体に合っているかが決まる
どちらか一方だけでは選べません。②がぴったりでも玄関を通らなければ使えませんし、①が入っても②が合っていなければ姿勢が崩れます。順番に見ていきます。

① 本体の外寸|JISが定めている上限
JIS T 9201:2016 の表6は、手動車いすの寸法を次のように定めています。
| 部位 | 寸法値 |
|---|---|
| 全長(前後方向の最大寸法) | 1,200mm(120cm)以下 |
| 全幅(左右外側の最大寸法) | 700mm(70cm)以下 |
| 全高(床から最高点まで) | 1,200mm(120cm)以下 ※ヘッドサポートを取り外したとき |
| フットサポート高 | 50mm(5cm)以上 |
つまりJISに適合した手動車いすは、幅70cm・長さ120cmの中に収まるのが原則です。この数字を覚えておくと、家のどこが問題になりそうか、見に行く前に見当がつきます。
ただし表6には「使用者の個別条件によって特に必要な場合には、表6によらなくてもよい」という但し書きがあります(7.2)。ワイドタイプなど、体格に合わせて幅の広い製品はこれにあたります。実際の数値は必ずカタログで確認してください。
リクライニング機構やティルト機構が付いた車いすの寸法は、標準状態(背もたれを起こした状態)で測った値とされています(表6 注b)。倒した状態では全長が変わるので、部屋に置いたときの前後の余裕は別に考える必要があります。
そして車に積めるかどうかは、使用時の外寸では決まりません。JISは「折りたたみ全幅」「折りたたみ全長」「折りたたみ全高」を使用時の寸法とは別に定義しています(表5)。カタログでは「折りたたみ時」の欄を探してください。あわせて重量も見ておくと安心です。毎日トランクへ積み下ろしするなら、この2つが選定を左右します。
② 体に合わせる寸法|測り方
| 計測箇所 | 測り方 | 目安 |
|---|---|---|
| 座幅 | 座った状態で骨盤(お尻)の幅 | お尻の幅+左右各2〜3cm(指2本分) |
| 座面高 | 座った状態でひざ裏から床まで | 足裏が床につき、膝が90度になる高さ |
| 座面奥行き | お尻から膝裏まで | 膝裏から2〜3cm引いた長さ |
| バックサポート高さ | 座面から肩甲骨の下まで | 体幹を支えつつ腕の動きを妨げない高さ |
サイズが合わないと何が起きるか
- 座幅が広すぎる:体が左右に傾き姿勢が崩れる。脇腹に床ずれができやすい
- 座幅が狭すぎる:太ももを圧迫して血行障害・床ずれのリスク
- 座面が高すぎる:足が浮き、体重が座骨に集中して床ずれリスクが上がる
- 座面が低すぎる:立ち上がりにくく、膝への負担が増える
- 奥行きが長すぎる:膝裏を圧迫して血行障害
- 奥行きが短すぎる:座骨だけに体重がかかり床ずれリスク
座面クッションの選び方は車いすクッション素材別比較で詳しく整理しています。
自宅の環境を先に確認する
どんなに良い車いすでも、家に合わなければ使えません。選ぶ前に、必ず自宅を測ってください。必要なのはメジャー1本です。
| 確認箇所 | 必要なスペース | 注意点 |
|---|---|---|
| 廊下の幅 | 75cm以上(理想は90cm) | 曲がり角は特に注意。実際に測る |
| 出入口の幅 | 80cm以上が目安 | 引き戸か開き戸かで通過幅が変わる |
| 玄関の段差 | スロープで解消できるか | 10cm以上あるならスロープを検討 |
| トイレの幅 | 車いすで入れるか・方向転換できるか | 狭ければポータブルトイレも選択肢 |
| 寝室からの動線 | ベッド脇に70〜90cm | ベッドから車いすへの移乗スペース |
国が「車いすが通れる」として定めている数値
自宅(住宅)は法律の対象外ですが、公共の建物には「車いす使用者が通れる」寸法の基準があります。バリアフリー法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)の施行令が定める移動等円滑化経路の数値です。自宅を測るときの物差しとして使えます。
| 場所 | 基準 | 根拠 |
|---|---|---|
| 出入口の幅 | 80cm以上 | 施行令 第19条第2項第2号イ |
| 廊下の幅 | 120cm以上 | 同 第3号イ |
| 廊下の転回場所 | 50m以内ごとに車椅子の転回に支障がない場所 | 同 第3号ロ |
| 傾斜路(スロープ)の幅 | 階段に代わるもの120cm以上/階段に併設するもの90cm以上 | 同 第4号イ |
| 傾斜路の勾配 | 1/12以下(高さ16cm以下のものは1/8以下) | 同 第4号ロ |
| エレベーターの出入口の幅 | 80cm以上 | 同 第5号ロ |
| エレベーターの籠の奥行き | 135cm以上 | 同 第5号ハ |
| 乗降ロビー | 幅・奥行きとも150cm以上 | 同 第5号ニ |
| 車椅子使用者用駐車施設の幅 | 350cm以上 | 施行令 第18条第2項第1号 |
ここで、さきほどのJISの数字と並べてみてください。車いすの全幅の上限は70cm、法が求めるドアの幅は80cm以上。差は10cm、片側5cmしかありません。「ぎりぎり通れる」と感じる家が多いのは、この余裕の少なさが理由です。
上の実務的な目安(廊下75cm以上)と法の120cmが違うのは、法の基準がすれ違いや方向転換まで想定した公共の建物のものだからです。自宅でまっすぐ進むだけなら75〜90cmでも通れます。ただし詰まるのはたいてい直線ではなく曲がり角で、そこで向きを変えるには法の120cmに近い幅が要ります。廊下は必ず、直線部分と曲がり角の両方を測ってください。
玄関の段差をスロープで解消する場合、勾配1/12は「高さ10cmの段差に120cmの長さが要る」という意味です。思ったより長さが必要になるので、置く場所が確保できるかを先に確認してください。選び方は介護保険でレンタルできるスロープの選び方で解説しています。工事で段差を解消する場合は介護保険の住宅改修の申請が使えます。
介助者が知っておきたい操作のコツ
正しい操作を知っておくと、本人の安全が守れるだけでなく、介助する側の腰の負担も大きく変わります。
段差の乗り越え方(前輪上げ)
- 段差の手前で、後ろ側のティッピングレバー(ティッピングバー)を足で踏む
- グリップを押し下げながら前輪を持ち上げる
- 前輪を段差の上に乗せ、後輪で押し上げる
前輪上げは慣れが必要です。初めて行う方は、必ず福祉用具専門相談員か理学療法士に手順を教わってから試してください。文章だけで真似すると危険です。
坂道の下り方
- 緩やかな坂:前向きのまま、グリップを引きながらゆっくり降りる
- 急な坂:必ず後ろ向きで降りる。前向きだと本人が前方へ転落するおそれがある
レンタルでも日常点検は必要
レンタル品は事業者が定期点検をしますが、日々の確認は家庭でしかできません。
| 箇所 | 確認内容 | 頻度 |
|---|---|---|
| タイヤの空気圧 | 手で押してへこむようなら補充 | 月1回 |
| ブレーキの効き | かけた状態で後ろに押して動かないか | 使用前毎回 |
| フットサポート | ガタつきがないか | 使用前毎回 |
| 座面クッション | へたり・破損がないか | 月1回 |
| フレーム | ゆがみ・異音・異常な揺れがないか | 月1回 |
異常に気づいたら、自分で直そうとせずすぐレンタル事業者へ連絡してください。修理・交換は原則として事業者が対応します。
車いすに乗ったまま車で送迎するときの注意
車内では、「車いすを車両に固定する装置」と「利用者を守る車両側のシートベルト」は別の役割です。どちらか一方だけで済ませず、両方を正しく使用してください。
- 固定方法は、車両と車いす双方の取扱説明書に従う
- シートベルトが首や腹部に不自然にかからないか確認する
- 方法が分からない場合は、送迎事業者・車両販売店・福祉用具専門相談員へ確認する
可能であれば、車両の固定座席へ移乗することも検討してください。車いすに乗ったまま乗車する場合は、車内固定を想定した車いすか、シートベルトを適切に装着できる形状かも確認しましょう。詳しくは消費者安全調査委員会「車椅子使用者が車椅子に乗車したまま自動車に乗車する場合の事故」経過報告(2026年7月29日)をご確認ください。
よくある質問
自走式と介助式、どちらを選べばいいですか?
本人が自分で動く機会があるなら自走式、常に介助者が付き添うなら介助式が基本です。ただし生活場面を細かく聞くと「屋内は自走、外出は介助」というケースも多く、2台体制にするご家庭もあります。まず1日の動きを書き出してみてください。
体が大きいのですが、合うサイズはありますか?
ワイドタイプ・ヘビーデューティタイプがあります。座幅が広いもの(46〜48cm)や、耐荷重の高いもの(通常100〜130kg、ヘビーデューティは200kg対応)もレンタルできます。体格が標準から外れる場合こそ、計測してから選んでください。
試乗はできますか?
できます。必ず試乗してから決めることを強くおすすめします。座り心地、動かしやすさ、立ち上がりやすさは、実際に座ってみないと分かりません。福祉用具専門相談員が自宅を訪問して試乗をサポートします。
要支援や要介護1でも車いすを借りられますか?
車いすは軽度者が原則対象外になる9種目に含まれるため、要支援1・2/要介護1は原則対象外です。ただし認定調査で歩行が「できない」場合や、日常生活範囲における移動の支援が特に必要と認められる場合は例外給付の対象になり得ます。詳しくは車いすは要支援・要介護1でもレンタルできる?をご覧ください。
レンタルと購入はどちらがよいですか?
基本はレンタルをおすすめします。体の状態に合わせて交換でき、点検や修理が含まれ、初期費用も抑えられるためです。ただし介護保険の対象にならない方や、特殊な仕様が必要な場合は購入が選択肢になります。
「自操式」と書いてある車いすは、自走式とは違うものですか?
手動車いすであれば、同じものを指しています。ただし制度上の正式な言い方は「自走用」のほうで、介護保険の告示(平成11年厚生省告示第93号)にも、補装具の告示にも、JIS T 9201にも「自操」という表記は出てきません。「自操」が実際に使われているのは電動車いす(業界団体が「自操用/介助用」と分類)と福祉車両(本人が運転する「自操式車両」)の分野です。手動車いすの書類やカタログで見かけるのは「自走用」だと考えて差し支えありません。
車いすの幅は何cmですか?家のドアは何cmあれば通れますか?
JIS T 9201:2016 の表6は、手動車いすの全幅を700mm(70cm)以下、全長を1,200mm(120cm)以下と定めています。一方、バリアフリー法の施行令が公共の建物に求める出入口の幅は80cm以上、廊下の幅は120cm以上です(第19条第2項)。差は10cm、片側5cmしかありません。自宅は法律の対象外なので、必ず実際にメジャーで測ってください。ワイドタイプなど、個別の事情で表6より幅が広い製品もあります。
リクライニングとティルトはどう違いますか?
JIS T 9201:2016 の定義では、リクライニング機構は「バックサポート(背もたれ)の角度」だけを変える機構(3.11)、ティルト機構は「シートとバックサポートの角度を固定したまま、両方を一体的に傾ける」機構(3.12)です。背もたれだけを倒すと体は前下方へ滑ろうとしますが、座面ごと傾ければ体と座面の位置関係が変わらないので姿勢が保たれます。両方をそれぞれ調整できるものは「ティルト・リクライニング機構」と呼びます(3.13)。
「バックレスト」と「バックサポート」はどちらが正しいですか?
どちらも間違いではありません。JIS T 9201:2016 の附属書JB 表JB.1 は、正式名称を「バックサポート」とし、かっこ書きで「バックレスト」を併記しています。アームサポート(アームレスト)、フットサポート(フットレスト)、ヘッドサポート(ヘッドレスト)も同じです。カタログやレンタルの書類では正式名称のほうが使われることが多いので、対応を知っておくと読みやすくなります。
自走用と介助用は、見た目でどう見分けますか?
後輪の大きさとハンドリムの有無で分かります。自走用は後輪が大きく(18〜24インチ)、その外側に手で回すためのハンドリムが付いています。介助用は後輪が小さく(12〜16インチ)、ハンドリムがありません。カタログの仕様表では、後輪が「駆動輪」と書かれていれば自走用、「主輪」と書かれていれば介助用です。JISが自走用の後輪を駆動輪、介助用の後輪を主輪と呼び分けているためです。
まとめ
車いす選びで最も大切なのは、「誰が、どんな場面で使うか」を明確にすることです。
そのうえで、次の順番で絞り込むと迷いません。
- 誰が動かすか(軸1)……自分で操作できるなら自走用、介助者が押すなら介助用。上肢の力が弱く自分で移動したいなら普通型電動
- 座り方を変える必要があるか(軸2)……ふつうに座っていられるなら標準形、長時間座位や褥瘡リスクがあるなら座位変換形(リクライニング・ティルト)
- 家を通れるか……全幅70cm前後に対して、玄関・廊下の曲がり角・トイレの入口を実測する
- 体に合うか……座幅・座面高・座面奥行き・バックサポート高を測る
この4つのうち、後半2つを飛ばして失敗するケースがいちばん多いです。種類が決まった時点で安心してしまい、メジャーを当てないまま納品日を迎えてしまうためです。
まずはケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談し、実際に試乗してから決めるのがベストです。体に合った一台を選ぶことが、安全で快適な生活につながります。
本人が車いすを使うことをためらっている場合は、親が車いすを嫌がる理由と対処法で伝え方を解説しています。
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車いす関連記事の役割整理
この記事は「車いすの種類と選び方」を確認する中心記事です。種類・選び方・サイズの測り方・介助の操作方法は、すべてこの記事にまとめています。介護保険で借りられるかどうかの条件と料金は車いすは要支援・要介護1でもレンタルできる?、クッションの素材選びは車いすクッション素材別比較、導入の時期は車いすはいつから必要?を確認してください。
介護保険レンタルは、基本的に要介護2以上で検討しやすい用具です。要支援・要介護1では例外給付になる場合があるため、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談してください。
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介護用品や福祉用具は、商品名から選ぶよりも「どの動作を楽にしたいか」から考えると失敗しにくくなります。
車いすに長時間座る場合は、本体だけでなく車いすクッションの選び方も重要です。
車いすを確認する前に
以下のリンクには広告・アフィリエイトを含みます。車いすは基本的に要介護2以上で介護保険レンタルを検討しやすい福祉用具です。購入前には、自走式・介助式・電動の違い、本人の座位姿勢、家の動線、車いすクッションの必要性を確認しましょう。
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