特定福祉用具販売とは?レンタルとの違いと、15年の経験から導いた選び方の結論

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「杖って、買うの?借りるの?」
この質問、15年間で何百回も受けてきました。

購入用品関連記事の役割整理
この記事は「介護保険で購入対象になる福祉用具」と「レンタルとの違い」を確認する制度記事です。具体的な商品選びはシャワーチェアポータブルトイレ介護用シューズの記事を確認してください。

福祉用具制度関連記事の役割整理
この記事は「特定福祉用具販売」と「購入対象になる福祉用具」を確認する記事です。レンタル対象の福祉用具は介護保険でレンタルできる福祉用具13種類、レンタルと購入の判断はレンタルと購入の判断ガイドで確認できます。

制度は自治体や購入方法によって手続きが異なることがあります。購入前にケアマネジャーや指定事業者へ確認してください。

介護が始まったばかりのご家族はもちろん、経験豊富なケアマネジャーの方からも「実はよくわかっていない」という声を聞くことがあります。それほど、福祉用具の「買う」と「借りる」の境界線はわかりにくいのです。

この記事では、福祉用具専門相談員として15年現場に立ってきた私が、「特定福祉用具販売」という制度をわかりやすく解説します。制度の基本から品目の一覧、そして「結局、買うべきか借りるべきか」という私自身の結論まで、順番にお伝えしていきます。

特定福祉用具販売とは何か

レンタルとの制度的な違い

介護保険で利用できる福祉用具には、大きく2つの種類があります。

  • 福祉用具貸与(レンタル)
  • 特定福祉用具販売(購入)

レンタルは月々の利用料を払いながら借り続ける仕組みですが、販売は一度購入して自分のものにする形です。どちらも介護保険が適用されますが、対象品目がまったく異なります。

「販売」品目が決まっている理由

答えはシンプルで、衛生上の理由です。入浴時に使う椅子やポータブルトイレなど、肌に直接触れたり排泄に関わるものは、他の人が使った後に再利用することが衛生的に難しい。だから「レンタルではなく購入」と法律で定められています。

特定福祉用具販売とは、「衛生面から再利用が難しい福祉用具を、介護保険を使って購入できる制度」と理解しておけば間違いありません。

費用の仕組み

介護保険が適用されるため、自己負担は購入金額の1〜3割です(所得に応じて異なります)。年間10万円が支給限度額となっており、超えた分は全額自己負担になります。

⚠️ 複数の品目をまとめて購入する場合は、この上限に注意が必要です。たとえばポータブルトイレとシャワーチェアを同じ年に購入すると、合計が10万円を超えやすくなります。

⚠️ 重要:必ず「指定事業者」から購入すること

特定福祉用具販売の介護保険給付を受けるには、都道府県から指定を受けた「特定福祉用具販売事業者」から購入することが絶対条件です。

⚠️ ホームセンター・ドラッグストア・通販(Amazon・楽天)などで購入した場合、介護保険の給付は一切受けられません。どんなに安く買えても、支払った全額が自己負担になります。

指定事業者かどうかは、担当のケアマネジャーに確認するか、介護サービス情報公表システム(厚生労働省)で最寄りの指定事業者を検索できます。

対象品目一覧(これが「買える」福祉用具)

従来からの販売品目

品目具体的なもの
腰掛便座ポータブルトイレ、補高便座、立ち上がり補助便座
自動排泄処理装置の交換部品レシーバー、チューブ、タンクなど
入浴補助用具シャワーチェア、浴槽台、入浴台、バスボードなど
簡易浴槽空気式・折りたたみ式の浴槽
移動用リフトのつり具スリングシートなど
排泄予測支援機器膀胱センサー(2022年追加)

💡 ポータブルトイレ(腰掛便座)は最もよく使われる品目です。夜間のトイレ問題や、トイレまでの移動が難しい方に特に効果的です。

▼ ポータブルトイレの選び方はこちら

迷ったらこれ:はじめて選ぶ場合は、軽くて扱いやすいモデルや、今の生活動作に合うタイプを選ぶと安心です。

用途に合う商品を、下の商品リンクから確認してください。

はじめて選ぶ場合は、使う場所・本人の状態・介助する人の負担を確認しておくと失敗しにくいです。

💡 シャワーチェア(入浴補助用具)は、浴室での転倒予防に大きく貢献します。背もたれ付き・肘掛け付きなど目的に応じて選べます。

2024年4月から追加された品目(選択制)

令和6年度介護保険制度改正により、以下の4品目が貸与と販売の「選択制」の対象として新たに加わりました。

新品目対象の範囲
固定用スロープ主に敷居等の小さい段差解消に使用するもの。可搬型は除く
歩行器固定式または交互式歩行器。車輪・キャスター付きの歩行車は除く
単点杖松葉づえを除く一本杖
多点杖カナディアン・クラッチ、ロフストランド・クラッチ、多点杖など

「選択制」とは何か

これまで杖やスロープはレンタルのみでした。2024年の改正で、買うかレンタルするかを利用者自身が選べるようになりました。

ただし自由に選べるわけではなく、福祉用具専門相談員またはケアマネジャーが利用者に対してそれぞれのメリット・デメリットを十分説明したうえで、医師や専門職の意見、利用者の身体状況等を踏まえて提案を行うという手順が定められています。

杖・スロープを「買う」と「借りる」どちらがいい?——選択制の実態

視点購入が向いているレンタルが向いている
身体状況状態が安定・固定しているリハビリ中・回復が見込まれる
使用期間長期的に使い続ける見込み短期・状態変化の可能性あり
コスト長期ならトータルで安くなることも初期費用を抑えたい
メンテナンス自己管理できる定期点検をお任せしたい

⚠️ 選択制の対象品目については、販売後の定期的なメンテナンスが義務付けられていない点が重要です。レンタルであれば事業者が定期点検を行いますが、購入した場合は基本的に自己管理となります。

専門相談員としての私的な結論

15年間の現場経験から導いた結論はシンプルです。

「固定用スロープは買う。杖と歩行器は、まずレンタルから。」

固定用スロープ(ミニスロープ)は購入がおすすめ

玄関の段差や敷居の小さな段差を解消するための固定用スロープは、購入をおすすめすることが多い品目です。

理由は明確で、使う期間が長いからです。一度設置すれば、身体状況がどう変わっても「段差がある」という住環境の事実は変わりません。歩行能力が落ちても、車いすになっても、スロープは継続して使い続けるケースがほとんどです。

▼ 固定用スロープはこちらから選べます

杖・歩行器はレンタルが基本

一方で、杖と歩行器についてはレンタルをおすすめすることが多いです。理由は3つあります。

身体状況が変わりやすい
日本福祉用具供給協会の調査では、福祉用具貸与の利用期間が想定よりも短かったと答えた人が4割にのぼります。杖や歩行器は特に、リハビリの進み具合や体調の変化で必要な種類が変わることが多い用具です。

メンテナンスが受けられる
レンタルであれば、定期的な点検や専門スタッフへの相談が受けられます。購入した場合、身体に合わなくなったら買い換えるしかなく、修理・故障時には費用が発生する可能性もあります。歩行器は可動部分があるものも多く、メンテナンスが安全に直結します。

1割負担の方はレンタルの方が安いことが多い
歩行器のレンタル料金は、1割負担の方で月額約200〜800円。多点杖は月額120円程度から利用できます。購入の場合は1割負担でもまとまった金額を一時的に支払う必要があるため(償還払いの場合はいったん全額負担)、1割負担の方にとってはレンタルの方が経済的に合理的なケースが多いです。

ただし利用期間が長期化した場合は、購入の方が自己負担が少なくなるケースもあるため、個別に試算することをおすすめします。

結論まとめ

品目おすすめ主な理由
固定用スロープ購入住環境は変わらず長期使用が見込める
杖(単点・多点)レンタル身体状況に応じた見直しが必要・1割負担なら安い
歩行器レンタルメンテナンスが必要・身体変化に合わせた交換が大切

⚠️ これはあくまで私個人の現場感覚に基づく考えです。2割・3割負担の方や長期利用が確定している場合は購入が有利になるケースもあります。最終的には担当のケアマネジャーや福祉用具専門相談員と一緒に、ご自身の状況に合った選択をしてください。

価格・在庫を確認する前に

以下のリンクには広告・アフィリエイトを含みます。特定福祉用具販売の対象になる用具でも、購入方法や申請手順を間違えると介護保険の給付対象外になることがあります。購入前にケアマネジャー、福祉用具販売店、自治体窓口へ確認してください。

まとめ

  • 特定福祉用具販売は介護保険で購入できる制度。年間10万円が支給限度額
  • 従来からの品目(排泄・入浴関連)に加え、2024年4月から固定用スロープ・歩行器・単点杖・多点杖が選択制で購入可能
  • 選択制では専門相談員・ケアマネが情報提供・提案を行う義務がある
  • 判断の基準は「身体状況の安定度」「使用期間」「メンテナンス体制」の3つ
  • 迷ったら状態が安定してから購入が基本方針

「買う?借りる?」と迷ったら、まずはケアマネジャーや担当の福祉用具専門相談員に相談してみてください。制度の仕組みも、個々の身体状況に合った提案も、私たちが一緒に考えます。

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レンタルと購入で迷う場合は、福祉用具はレンタルと購入どちらがいい?家族向け判断ガイドも参考にしてください。

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介護用品や福祉用具は、商品名から選ぶよりも「どの動作を楽にしたいか」から考えると失敗しにくくなります。

入浴補助用具の購入を考えている方は、シャワーチェアの選び方もあわせて確認してください。

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