福祉用具専門相談員として15年間、数多くのご家庭で福祉用具の選定・納品・使い方の説明に関わってきました。
「これは本当に導入してよかった」と感じた用具もあれば、反対に「思ったほど使われなかった」「先に確認しておけば避けられた」と感じた用具もあります。教科書には載っていない、現場の本音をお伝えします。
本当に役立った用具TOP5【現場の本音】
1位:シャワーチェア(浴室用椅子)
浴室での転倒は骨折の大きな原因です。シャワーチェアを導入したご家庭では、入浴が格段に安全になり、介護者の腰への負担も激減しました。比較的安価で効果が高い、コスパ最強の用具です。
あるご家庭では、「父が浴室で滑りそうになったことがきっかけで相談が来た」という事例がありました。シャワーチェアを導入してから「お父さんが一人でも安心してお風呂に入れるようになった」と、家族全員がほっとしたとおっしゃっていました。月に1,000〜2,000円程度でレンタルできるものもあります。
2位:手すり(設置場所を選べば絶大な効果)
玄関・トイレ・廊下の要所に設置した手すりは、転倒予防と自立支援の両方に効果的でした。ポイントは「動線に合わせた設置場所」。場所を間違えると意味がありません。
実際に「とりあえずつけた手すりが使われていない」という相談も何度も受けました。手すりは設置後に「本当に使われているか」を確認することが大切です。使われていなければ、位置や向きを見直す必要があります。工事不要の置き型手すりなら、試しながら最適な位置を探せます。
3位:特殊寝台(介護ベッド)
ベッドの高さ・背上げ機能で、介護者の腰痛が大幅に改善したケースを何度も見ました。「まだ早い」と思っていても、腰を痛める前に導入することをおすすめします。
特に起き上がりや端座位(ベッドの端に座る)の介助は、介護者の腰に大きな負担がかかります。ベッドの高さをこまめに調整するだけで、その負担が半分以下になることも。「介護ベッドを入れてから腰痛がなくなった」という家族の声は、本当に多かったです。
4位:ポータブルトイレ
夜間のトイレ移動は転倒事故が起きやすい時間帯です。ポータブルトイレをベッドのそばに置くことで、夜中に廊下を歩く必要がなくなり、転倒リスクと介護者の夜間負担が同時に減ります。「トイレに連れて行くたびに起きていたのが、なくなった」という声が多かった用具です。
5位:スロープ(段差解消)
玄関や部屋の出入り口にある数センチの段差が、高齢者にとって大きな転倒リスクになります。スロープを設置することで、車いすや歩行器の移動がスムーズになり、つまずき転倒を防げます。一見小さな段差でも、足が上がりにくくなってきた方には危険なのです。
意外と使わなかった用具【失敗談と理由】
機能が多すぎる歩行器
「せっかくだからいいものを」と多機能な歩行器を選んだのに、機能が多すぎて使いこなせないケースが多くありました。シンプルなものの方が長続きします。まずは基本的な歩行器から試すのが正解です。
ある方は、電動で折りたたみができる高級歩行器を購入したものの、「操作が複雑で怖い」と言って結局使わなくなってしまいました。機能よりも「本人が使いやすいか」を優先してください。
電動車いす(導入前の環境確認不足)
操作が難しく、自宅の廊下や部屋の間取りに合わないケースが意外と多かったです。電動車いすは、廊下の幅・部屋の扉の幅・段差など、自宅環境が合わないと全く使えません。導入前に必ず自宅で実際に動作確認をしてから決めてください。
使われなかったリハビリ用具
家族が「リハビリのために」と購入したバランスボードや握力器などが、結局使われないまま押し入れに眠っているケースがありました。本人が「やる気」になれない道具は使われません。専門のリハビリ職(理学療法士・作業療法士)に相談してから購入することをおすすめします。
福祉用具を選ぶ時の3つのコツ
- 「困っている動作」から選ぶ:「なんとなく良さそう」ではなく、「この動作で困っている」という具体的な場面から考える
- 実際に試してから決める:カタログだけで決めず、試乗・試用の機会をつくる(福祉用具の展示店や担当相談員に相談)
- レンタルから始める:介護保険が使える用具はレンタルから試す。身体の状態が変われば用具も変わる
よくある疑問(FAQ)
Q. 福祉用具はどこで相談すればいいですか?
まずはケアマネジャーに相談してください。ケアマネジャーから福祉用具専門相談員を紹介してもらえます。介護保険でレンタルできる用具については、相談員が自宅に来て生活動線を確認しながら適切な用具を提案してくれます。費用は介護保険の自己負担分(1〜3割)です。
Q. 介護保険でレンタルできる福祉用具は何ですか?
歩行器、歩行補助つえ、車いす(付属品含む)、特殊寝台(介護ベッド)、床ずれ防止用具、体位変換器、手すり(工事不要タイプ)、スロープ(工事不要タイプ)、移動用リフトなどがレンタル対象です。購入対象は腰掛便座、入浴補助用具、簡易浴槽などがあります。要介護度によって利用できる用具の範囲が異なります。
Q. 「とりあえず買っておく」はNG?
基本的にはおすすめしません。身体の状態に合わない用具は、使われないだけでなく、かえって転倒のリスクになることもあります。「これがあれば便利そう」と感じても、まずケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談して、現在の身体状態と生活環境に合った用具を選んでもらうことが大切です。
まとめ
福祉用具は「なんとなく良さそう」で選ぶのではなく、実際の生活場面に合わせて選ぶことが大切です。本当に役立った用具はシャワーチェア・手すり・介護ベッド・ポータブルトイレ・スロープの5つ。いずれも「日常の困った場面」を具体的に解決する道具です。
使わなかった用具に共通するのは「本人に合っていなかった」という点です。迷ったら福祉用具専門相談員に相談して、実際に試してから決めましょう。


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