親がお風呂で危なくなってきた時、最初から商品名で考えるのは難しいものです。
「浴槽台が必要なのか」
「浴槽グリップなのか」
「シャワーチェアだけでいいのか」
「そもそも福祉用具だけで解決できるのか」
こうした判断は、家族だけでは迷いやすいところです。
現場でも、最初の相談は商品名ではなく、
- お風呂でふらつく
- 浴槽をまたぐのが怖い
- 立ったまま身体を洗うのがしんどい
- 浴槽の中で立ち上がりにくい
- 家族が支えながら入浴している
といった困りごとから始まることが多くありました。
入浴補助用具は、ひとつの商品を選べば終わりではありません。
大切なのは、どの動作で困っているのかを確認し、本人の身体状況と浴室環境に合った対策を考えることです。
この記事では、元福祉用具専門相談員の視点から、入浴補助用具の種類と選び方をまとめます。
かんたん入浴状態チェック
入浴の悩みは福祉用具だけで解決するとは限りません
入浴が不安になった時、福祉用具だけで解決できるとは限りません。
現場では、
- シャワーチェア
- 滑り止めマット
- 浴槽台
- 浴槽グリップ
- バスボード
といった福祉用具だけでなく、
- 手すり設置
- 敷居撤去
- 折れ戸への変更
- 引き戸への変更
- 滑りにくい床材への変更
などの住宅改修も組み合わせながら考えていました。
例えば、洗い場で座って身体を洗えるようにシャワーチェアを入れても、浴室の入口に段差があれば転倒リスクは残ります。
浴槽グリップを付けても、浴槽のふちが高く、足が上がりにくい場合は、浴槽台やバスボードが必要になることがあります。
入浴の安全は、ひとつの商品ではなく、浴室全体で考えることが大切です。
入浴で困っている場所から考えましょう
入浴補助用具を選ぶ時は、商品名から考えるよりも、困りごとから考えた方が分かりやすくなります。
| 困っている場所・動作 | よくある悩み | 検討しやすい用具 |
|---|---|---|
| 洗い場で困る | 立っているのがしんどい、身体を洗う時に疲れる | シャワーチェア |
| 洗い場や浴槽内で滑る | 足元が不安、転倒が心配 | 滑り止めマット |
| 浴槽内で立ち上がれない | お風呂から出にくい、浴槽内で踏ん張れない | 浴槽台 |
| 浴槽をまたぐ時に不安がある | 足が上がらない、跨ぎが怖い | 浴槽グリップ |
| またぎ動作そのものが危険 | 片足立ちができない、家族が支えている | バスボード |
洗い場で立っているのがしんどい
検討しやすい用具は、シャワーチェアです。
立ったまま身体を洗うのが疲れる方や、洗髪中にふらつく方では、座って洗える環境を作ることが大切です。
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洗い場や浴槽内で滑る
検討しやすい用具は、滑り止めマットです。
浴槽の底で足が滑るのか、洗い場で方向転換する時に滑るのかによって、選ぶマットは変わります。
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浴槽内で立ち上がれない
検討しやすい用具は、浴槽台です。
浴槽内で座る高さを調整することで、立ち上がりやすくなることがあります。
ただし、高くしすぎるとお湯に浸かりにくくなるため、高さの塩梅が大切です。
関連: 浴槽台おすすめ5選
浴槽をまたぐのが不安
検討しやすい用具は、浴槽グリップです。
浴槽のふちに取り付けることで、またぎ動作の支えになります。
ただし、浴槽の形状やふちの幅によって取り付けできない場合があります。
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またぎ自体が危険
検討しやすい用具は、バスボードです。
立ってまたぐのではなく、座って浴槽内へ移動する考え方に変える用具です。
片麻痺がある方や、片足立ちが不安な方では候補になることがあります。
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シャワーチェア
シャワーチェアは、洗い場で座って身体を洗うための入浴補助用具です。
現場では、
- 立ったまま身体を洗うのが疲れる
- 洗髪時にふらつく
- 長時間立っていられない
- 浴室で休憩したくなる
といった段階で提案することが多くありました。
シャワーチェア選びで大切なのは、利用者本人の体格です。
身長、体重、お尻の幅、足底接地、座位安定性を確認したうえで、肘掛けや折りたたみの有無を考えます。
浴室が狭い家庭では、置いた時に介助者が動けるスペースが残るかも確認しましょう。
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滑り止めマット
滑り止めマットは、浴槽内や洗い場の足元不安を減らすための用具です。
比較的導入しやすく、入浴中の転倒予防の第一歩として検討することがあります。
ただし、浴槽内用と洗い場用を間違えると使いにくくなります。
浴槽の底で滑るのか、洗い場で滑るのか、一部分だけ滑るのかを確認して選びましょう。
また、サイズを確認せずに購入すると、排水口をふさいだり、浴槽底に収まらなかったりすることがあります。
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浴槽台
浴槽台は、浴槽内で座る高さを調整したり、浴槽をまたいだ後の足場を安定させたりするための用具です。
最近のユニットバスでは、浴槽をまたぐための踏み台というより、浴槽内での立ち座りを楽にする目的で使う方も多くいます。
現場では、
- 浴槽内で立ち上がりにくい
- 浴槽の底から立つのが大変
- 浴槽をまたいだ後の着地点が不安
- 浴槽内で姿勢を保ちにくい
といった場面で検討していました。
浴槽台で難しいのは、高さの塩梅です。
高くすると立ち上がりやすくなりますが、お湯に浸かりにくくなることがあります。
低すぎると、立ち上がりの負担が残ります。
本人の身体状況だけでなく、浴槽の深さや幅も確認しましょう。
関連: 浴槽台はいつから必要?
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浴槽グリップ
浴槽グリップは、浴槽のふちに取り付けて、浴槽をまたぐ時の支えにする用具です。
ただし、浴槽グリップは跨ぎ動作だけに使うものではありません。
浴槽内で姿勢を保つ時や、浴槽から立ち上がる時の補助として使われることもあります。
現場では、
- 浴槽をまたぐ時にふらつく
- 浴槽のふちを強く握っている
- 家族が身体を支えている
- 工事で手すりを付けにくい
といった時に検討することがありました。
浴槽グリップ選びで大切なのは、取り付けできるかどうかです。
浴槽のふちの幅、形状、ユニットバスか在来浴室かによって、使える商品が変わります。
また、浴槽内での姿勢保持や立ち上がり補助として使う場合もあります。
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バスボード
バスボードは、浴槽を立ってまたぐのではなく、座って移動するための用具です。
現場では、
- 片足立ちが不安
- 足が上がりにくい
- 家族が支えて浴槽に入っている
- 浴槽グリップだけでは不安
- 片麻痺がある
といった方で検討することがありました。
バスボードは「またげなくなった人」だけの用具ではありません。
またぐのが危なくなってきた段階で検討することもあります。
ただし、座位保持が不安定な方では危険になる場合があります。
浴槽の幅や固定金具の位置も必ず確認しましょう。
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住宅改修という選択肢
入浴補助用具だけで解決しない場合は、住宅改修も選択肢になります。
例えば、
- 浴室内に手すりを設置する
- 浴室入口の敷居を撤去する
- 開き戸を折れ戸に変更する
- 折れ戸を引き戸に変更する
- 床材を滑りにくいものへ変更する
といった方法です。
現場では、福祉用具を入れて終わりではなく、浴室全体の動線を見ていました。
浴槽台を入れる。
浴槽グリップを使う。
それでもまたぎ動作が不安なら手すりを付ける。
浴室入口でつまずくなら敷居を撤去する。
ドアの開閉が介助の邪魔になるなら、折れ戸や引き戸への変更を検討する。
このように、段階的に考えることがあります。
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現場で多かった流れ
入浴補助用具の導入には、決まった順番があるわけではありません。
ただ、現場では次のような流れで検討することが多くありました。
何もなし
↓
滑り止めマット
↓
シャワーチェア
↓
浴槽グリップ
↓
浴槽台
↓
バスボード
↓
住宅改修
↓
バスリフト
もちろん、人によって順番は違います。
例えば、洗い場でのふらつきが強い方ではシャワーチェアが先になります。
浴槽をまたぐ動作が一番危ない方では、浴槽グリップやバスボードが先になることもあります。
また、途中でデイサービスでの入浴に切り替える方もいます。
毎回自宅で入浴するのではなく、週に何回かはデイサービスで安全に入浴し、夏場や汗をかきやすい時期だけ自宅でシャワーチェアを使ってシャワー浴をする、という方法をとる方もいました。
また、訪問入浴を利用したり、ヘルパーさんにお手伝いをいただいたりしながら、最後まで自宅で入浴を続ける方もおられます。
入浴は「自宅で全部できるか」「できないか」だけで考える必要はありません。
福祉用具、住宅改修、デイサービス、訪問入浴、ヘルパーさんの支援など、いろいろなサービスを組み合わせながら、できるだけ安心して在宅生活を続けていくことが大切です。
大切なのは、順番を決めつけることではありません。
どの動作が危ないのかを見て、必要な対策を組み合わせることです。
退院準備では浴室を早めに確認しましょう
退院後に自宅で生活する場合、浴室環境は早めに確認しておきたい場所です。
病院では入浴できていても、自宅の浴室では段差、浴槽の高さ、洗い場の狭さ、ドアの開閉などが問題になることがあります。
退院直前になってから用具を探すと、サイズ確認や設置確認が間に合わないことがあります。
退院準備の段階で、
- 洗い場で座れるか
- 浴槽をまたげるか
- 浴槽内で立ち上がれるか
- 手をかける場所があるか
- 家族が介助できるスペースがあるか
を確認しておきましょう。
現場の一言
入浴の悩みは、一つの福祉用具だけで解決するとは限りません。
現場では利用者の身体状況だけでなく、
- 浴室の広さ
- 浴槽の高さ
- 浴槽の深さ
- 介助者の動線
- ドアの開閉
- 手すりの位置
まで確認していました。
大切なのは、商品選びではありません。
安全に入浴できる環境を作ることです。
シャワーチェア、滑り止めマット、浴槽台、浴槽グリップ、バスボードは、それぞれ役割が違います。
どれか一つを選ぶのではなく、本人がどの動作で困っているのかを見ながら、必要な用具や住宅改修を組み合わせて考えましょう。
まとめ
入浴補助用具は、商品名から選ぶよりも、困りごとから選ぶことが大切です。
洗い場で立っているのがしんどいならシャワーチェア。
足元が滑るなら滑り止めマット。
浴槽内で立ち上がりにくいなら浴槽台。
浴槽をまたぐのが不安なら浴槽グリップ。
またぎ自体が危険ならバスボード。
そして、福祉用具だけで解決しない場合は住宅改修も検討します。
親がお風呂で危なくなってきた時は、ひとつの商品だけで考えず、浴室全体の環境として見直していきましょう。

