歩行器を使いたがらない理由|”まだ大丈夫”に隠れた不安とは

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「歩行器をすすめても絶対に使わない」「危ないとわかっているのに、なぜ使ってくれないのか」――そんな悩みを持つご家族の声を、現場で本当にたくさん聞いてきました。本人が使いたがらない背景には、必ずその人なりの理由があります。無理に使わせようとすると、かえって拒否感が強まることも多いです。まずその「理由」を理解することが、解決への近道です。

※この記事は、元福祉用具専門相談員として実際の相談現場で多かった事例や質問をもとに作成しています。

歩行器を使いたがらない理由――本人の気持ちを理解する

①「まだ大丈夫」と思いたい

歩行器を使うことは、自分の足腰の変化を認めることを意味します。「まだそこまでじゃない」「自分は歩ける」という気持ちは、人として自然な感情です。特に、これまで自分のことは自分でできていた方ほど、この気持ちは強くなります。

この感情を否定せず、「自立心の表れ」として受け止めることが大切です。「まだ大丈夫」という気持ちは尊重しながら、転倒リスクという現実を少しずつ伝えていく関わり方が必要です。

②見た目・プライドが気になる

「歩行器を使っている姿を人に見られたくない」「年寄り扱いされたくない」という抵抗感は、多くの方が持っています。特に近所での外出時や、知人に会う可能性がある場所ではこの感情が強くなります。

こうした場合は、デザインがスタイリッシュな歩行車や、シルバーカーなど見た目の抵抗が少ないものから試してみる方法が有効です。「かっこいい杖」「おしゃれな歩行車」という切り口で選んでもらうと、受け入れやすいことがあります。

③使い方がわからず怖い

初めて使う道具は誰でも不安です。ブレーキの使い方がわからない、方向転換がうまくできない、段差で引っかかりそう――こうした「使えないかもしれない」という不安が、使いたがらない原因になっていることがあります。

この場合は、福祉用具専門相談員による実地指導が非常に効果的です。実際に家の中で練習しながら使い方を教えてもらうと、不安が解消されて受け入れやすくなります。

「危ないから使って」が逆効果な理由

家族からの「危ないから使って」「転んだら大変でしょ」という言葉は、正しい内容でも本人には「責められている」「できない人扱いされている」と受け取られることがあります。

安全を伝えることは大切ですが、「できなくなったから使う道具」という印象を与えない言い方が重要です。たとえば「転倒予防に」ではなく、「もっと遠くまで歩けるようになるための道具」「疲れないで買い物できる工夫」という切り口で提案してみましょう。

受け入れてもらいやすくなる進め方

  • まずは家の中だけ試す:「外では使わなくていい、家の中だけ」から始める
  • 短い距離・特定の場面だけ使う:「トイレまで」「風呂場まで」など限定的な使用から
  • 本人に選んでもらう:複数の候補を見せて「どれなら使いやすそう?」と聞く
  • 家族以外の人からすすめてもらう:担当ケアマネや医師からの一言が効く場合が多い
  • 「ずっと使う」ではなく「不安な場面だけ」で提案する:条件をゆるくするだけで受け入れやすくなる
  • シルバーカーから始める:「荷物が入れられて便利」という切り口で外出用から試す方法も有効

「まだ大丈夫」がいちばん危ない理由

「まだ大丈夫」と思って使わずにいると、ある日突然転倒・骨折してしまうケースを数多く見てきました。高齢者の骨折、特に大腿骨頸部骨折(股関節周辺の骨折)は、一度起きると長期のリハビリが必要になり、そのまま要介護度が一気に上がることも珍しくありません。

「転んでから後悔した」と話してくれたご家族が何家族もいました。歩行器は「転んだ後の道具」ではなく、「転ぶ前から使う予防の道具」だということを、本人が納得できるような関わり方を続けることが大切です。

Q. 歩行器とシルバーカーはどう違いますか?どちらをすすめるべきですか?

歩行器は身体を支える目的が強く、室内外どちらでも使えます。シルバーカーは主に屋外での外出支援用で、荷物入れや座面がついているものが多く、見た目の抵抗感が低いことが特徴です。歩くこと自体は問題ないが外出中に疲れやすい方にはシルバーカーから始めるのがすすめやすい場合もあります。福祉用具専門相談員に現在の歩き方を見てもらい、どちらが適しているか判断してもらうのが最善です。

Q. 歩行器を使うと歩く力が弱くなりませんか?

正しい用具を使えば、むしろ安全に歩く機会が増え、活動量が維持・向上することが多いです。転倒を恐れて外出しなくなることのほうが、足腰の衰えを早めます。ただし、身体の状態に合っていない用具を使い続けると体への負担になることもありますので、定期的な見直しが大切です。

Q. 本人がどうしても使いたがらない場合、どうすれば?

担当ケアマネジャーや主治医から「使った方がよい」と一言伝えてもらうだけで、家族の言葉より響くことがよくあります。また、試用(レンタルで実際に試すこと)を提案するのも有効です。「買うわけじゃない、試してみるだけ」という言い方で受け入れやすくなります。焦らず、本人のペースに合わせることが大切です。

まとめ

歩行器を使いたがらない背景には、恥ずかしさ、不安、「まだ大丈夫」という気持ちが入り混じっています。大切なのは、本人の気持ちを否定せず、生活の中で「困っている場面」から一緒に考えることです。安全のためだけでなく、「これからも外出や生活を続けるための道具」として提案することで、受け入れてもらいやすくなります。焦らず、じっくり関わり続けることが、最終的には一番の近道です。

この記事を書いた人

介護福祉ナビ運営者

元福祉用具専門相談員。

福祉用具の選定、住環境整備、退院支援などに携わった経験をもとに、在宅介護で役立つ情報を発信しています。

実際の相談現場で多かった悩みや失敗例をもとに、家族が判断しやすい形で解説しています。

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