「歩行器を使い始めてから、かえって転びやすくなった気がする」「本当に安全なの?」と心配になっている方は意外と多いです。道具を使っているのに転倒が増えるのは、歩行器の問題ではなく「使い方や選び方が合っていない」ことが多いです。
※この記事は、元福祉用具専門相談員として15年間、実際の相談現場で多かった事例や質問をもとに作成しています。
この記事では、歩行器で転倒が起きやすい場面と原因、正しい使い方、そして歩行器が合わないケースまでをわかりやすく解説します。
歩行器で転びやすくなる3つの場面
相談現場でよく聞いた「転倒が起きた場面」には、共通したパターンがあります。
1. 歩行器だけが先に進んでしまう
キャスター付きの歩行器(特に4輪タイプ)は動きが軽い反面、少し押しただけで前に進んでしまいます。足がついていかないと、体が後ろに残ったまま歩行器が先に行き、前のめりになって転倒します。これは特に歩行開始直後や方向転換のときに起きやすいです。
2. 段差や敷物に引っかかる
室内の敷居(2〜3cm程度)、玄関マット、電気コードなどに歩行器の脚部やキャスターが引っかかると、急に止まって体だけ前に出るような形になり転倒します。外では舗装の割れ目や砂利道でも同様のことが起きます。
3. 高さが合っていない
グリップの高さが合っていないと、姿勢が崩れて転倒リスクが高まります。高すぎると肩が上がり体が不安定になり、低すぎると前かがみの姿勢になって重心が前にずれます。どちらも転倒につながりやすい姿勢です。
正しい歩行フォームとは
歩行器の正しい使い方を知ることで、転倒リスクを大きく減らせます。基本的なフォームを確認しましょう。
- 姿勢:背筋を伸ばし、歩行器を体の少し前に置く。前かがみになりすぎない。
- グリップの高さ:肘が軽く曲がる(約30度)高さに調整する。
- 歩くペース:歩行器を少し前に置いてから足を踏み出す。急がない。
- 目線:足元だけを見るのではなく、進む方向を見る。
- 方向転換:小さく回らず、ゆっくり大回りに方向転換する。
特に「急ぐ」ことが転倒の大きな原因になります。「トイレに間に合わない」と急ぐ場面でよく転倒が起きます。時間に余裕を持った生活リズムを作ることも大切です。
危険を減らすための確認ポイント5つ
- 握ったときに肘が軽く曲がる高さか(グリップ高さ確認)
- 歩く速さに歩行器の動きが合っているか
- 方向転換のときにふらつかないか
- 家の中の段差・敷物・コードに引っかからないか
- ブレーキ(固定型は安定確認、キャスター型はブレーキ操作)を理解しているか
歩行器の練習方法
初めて歩行器を使う場合や、転倒が続いている場合は、「練習する」という意識を持つことが大切です。
壁際で練習する
最初は壁際で歩行器を使い、万が一バランスを崩したときに壁に手をつけるようにして練習します。壁が支えになるので安心感があります。
短い距離から始める
いきなり長い距離を歩かず、最初は3〜5歩の短い距離で「置く→歩く」の動作を繰り返します。動作を体に覚えさせることが大切です。
リハビリ専門職に指導してもらう
訪問リハビリや通所リハビリ(デイケア)を利用している場合、理学療法士や作業療法士に歩行器の使い方を指導してもらうことができます。専門家にフォームを見てもらうのが最も確実です。
歩行器が合わないこともある
歩行器が誰にでも合うわけではありません。次のような場合は、別の道具や支援方法を検討することも必要です。
- 認知機能の低下があり、ブレーキ操作や使い方を理解できない
- 上肢(腕・手)の力が非常に弱く、支えられない
- 歩行器を使っても著しくふらつく
- 家の中の通路が狭すぎて歩行器が通らない
このような場合は、杖・手すり・歩行車・車いすなど、他の道具の組み合わせを検討します。また、介助なしでの移動自体が危険な場合は、ショートステイや訪問介護でサポートを増やすことも選択肢のひとつです。
Q. 歩行器を使い始めてから転倒が増えました。どうすればいいですか?
まず歩行器の高さ(グリップ位置)が体に合っているか確認してください。次に自宅内の段差・敷物・コードなど引っかかる原因がないかを見直します。それでも改善しない場合は、ケアマネジャーや理学療法士・作業療法士に相談して、歩行器の種類や使い方を見直してもらうことをおすすめします。
Q. キャスター付きと固定型、安全なのはどちらですか?
どちらが安全かは本人の状態によります。固定型は安定感が高い反面、持ち上げる力が必要です。キャスター付きは動かしやすいですが、動きすぎる危険があります。足の力や腕の力、歩くペースなどを総合的に見て選ぶ必要があるため、専門家に相談するのが確実です。
Q. 歩行器の練習はどこでできますか?
訪問リハビリ(訪問看護のリハビリ職種派遣)や通所リハビリ(デイケア)でリハビリ専門職に指導してもらえます。介護保険でのリハビリサービスはケアマネジャーに相談して手配できます。
まとめ
歩行器は正しく選んで正しく使えば、転倒予防にとても頼りになる道具です。しかし合わないものを使うと、かえって転倒リスクが高まることがあります。
高さの調整・床の環境整備・正しい歩行フォームの3点が基本です。転倒が続く場合は一人で悩まずに、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員、リハビリ専門職に相談してください。


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