歩行器を「恥ずかしい」と感じるのは、珍しいことではありません。「年寄りに見られたくない」「まだ自分で歩ける」という気持ちがあるため、正論で説得するほど反発が強くなることもあります。
大切なのは、歩行器を押しつけることではなく、本人が続けたい生活を確認し、短時間から試すことです。この記事では、嫌がる理由、家族の伝え方、導入を考えるサインを順番に解説します。
※この記事は、元福祉用具専門相談員として実際の相談現場で多かった事例や質問をもとに作成しています。
歩行器を恥ずかしいと感じる主な理由
- 老いを認めるようで抵抗がある
- 周囲の視線が気になる
- 「まだ歩ける」と思っている
- 歩行器を使うと弱ると思っている
- 見た目や大きさが自分に合わない
歩行器を拒む言葉の裏には、不安や自尊心があります。まずは「そう感じるよね」と受け止め、すぐに結論を出そうとしないことが第一歩です。
「まだ大丈夫」でも確認したいサイン
本人の気持ちを尊重しつつ、次の変化がある場合は転倒予防のために専門職へ相談しましょう。
- 壁や家具につかまって移動する
- つまずきやふらつきが増えた
- 買い物カートがないと歩きにくい
- 外出や散歩の回数が減った
- 杖だけでは姿勢が安定しない
- 転倒した、または転びそうになった
急に歩きにくくなった、片側だけ力が入りにくい、強い痛みや息苦しさがある場合は、福祉用具選びより先に医療機関へ相談してください。
嫌がる親への伝え方
| 避けたい伝え方 | 伝わりやすい言い換え |
|---|---|
| 危ないから使って | また安心して買い物へ行ける方法を一緒に試さない? |
| もう年なんだから | 疲れたときに休める道具があると楽そうやね |
| 転ぶ前に絶対必要 | まず家の前だけ試して、合わなければやめよう |
| みんな使っている | 色や形は自分で選べるよ |
「転ばないため」だけでなく、「買い物を続ける」「通院を楽にする」「散歩へ行く」など、本人が望む目的と結びつけるのがポイントです。
無理なく試す5つの手順
1.困っている場面を聞く
「歩けない」と決めつけず、「最近、どこを歩くと疲れる?」と具体的に聞きます。
2.使う場面を限定する
最初から毎日使う必要はありません。「長い距離だけ」「通院の日だけ」など、負担の少ない場面から始めます。
3.本人に選んでもらう
色、形、重さ、荷物入れの有無などを本人が選ぶと、「使わされる道具」から「自分の道具」に変わりやすくなります。
4.専門職と試す
福祉用具専門相談員、ケアマネジャー、理学療法士などに、身体状況と使用環境を確認してもらいましょう。高さや種類が合わないと、かえって姿勢が崩れることがあります。
5.使った感想を本人に聞く
家族が評価するのではなく、「楽だった?」「曲がりにくくなかった?」と本人の感覚を聞き、合わなければ調整や別機種を検討します。
歩行器とシルバーカーは目的が違う
見た目が似ていても、歩行器は歩行を支えることを目的とした用具、シルバーカーは自力歩行できる人の外出や荷物運びを助ける用具です。身体を預けて歩く必要がある人が、自己判断でシルバーカーを代用するのは避けましょう。
違いは「歩行器とシルバーカーの違い」で詳しく整理しています。
歩行器を使うと歩けなくなる?
歩行器を使うだけで必ず歩けなくなるわけではありません。ただし、身体に合わない用具や過度な頼り方は負担につながります。安全に活動量を保てるよう、専門職と高さ・使い方・運動を調整することが大切です。危険になりやすい場面は歩行器は危ない?事故が起きやすい使い方にまとめています。
詳しくは「歩行器を使うと歩けなくなる?よくある誤解」をご覧ください。
迷ったときの相談先と関連記事
介護保険を利用している場合は、まず担当ケアマネジャーへ。未申請の場合は地域包括支援センターでも相談できます。購入前に試用やレンタルが可能か確認すると、本人に合わない用具を選ぶ失敗を減らせます。
よくある質問
歩行器を使う人はどんな人ですか?
「歩けなくなった人が使うもの」と思われがちですが、実際には自分の足で歩ける方が、転倒を防ぎながら買い物や散歩を続けるために使うケースが多くあります。今の生活を手放さないための道具と考えると受け入れやすくなります。使い始めてから外出が増えた方の例は歩行器を使うと外出が増える?をご覧ください。
歩行器を使うと歩けなくなりませんか?
歩行器を使ったこと自体で歩けなくなるわけではありません。ただし身体に合わない機種や誤った高さで使うと、活動量が下がることがあります。何を続けたいかを決めたうえで、高さ調整と使い方を専門職に確認してもらいましょう。
本人が恥ずかしがるのに、無理に使わせてもいいですか?
無理に押しつけると歩行器そのものへの拒否が強くなり、かえって遠回りになります。「外出のときだけ」「通院の日だけ」など場面を限定して短期間試す方が、結果的に受け入れられやすくなります。
周囲は本当に気にしていないのでしょうか?
相談の現場では「使い始めたら誰にも何も言われなかった」という声を多く聞きました。本人が想像するほど周囲は見ていないことが多い一方で、その不安自体は否定せず受け止めることが大切です。
歩行器は介護保険でレンタルできますか?
要介護認定を受けている方は、条件を満たせば介護保険でレンタルできる場合があります。対象条件や自己負担は歩行器は介護保険でレンタルできる?もあわせて確認し、担当ケアマネジャーへ相談してください。
まとめ
歩行器を恥ずかしいと感じる本人に必要なのは、説得よりも納得です。気持ちを否定せず、続けたい生活を一緒に確認し、短時間の試用から始めましょう。安全性と使いやすさは、専門職に確認してもらうと安心です。


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