自宅での入浴が難しくなったとき、「手すりを付ければ何とかなる」と家族だけで抱え込む必要はありません。
厚生労働省が2026年10月14日に公表した資料では、デイサービス事業所の約半数に「短時間で入浴だけ利用したい」という相談が寄せられていました。この記事では、資料から分かることと、自宅での入浴が難しいときの選択肢を、元福祉用具専門相談員の視点で整理します。
厚労省資料で分かった「入浴だけ利用したい」需要
調査に回答した通所介護事業所1,555か所のうち、46.8%が「短時間で入浴のみを利用したいとの問い合わせや相談がある」と回答しました。
- 自宅の浴室では安全に入浴できない:77.6%
- 家族などから入浴介助を受けられない:67.9%
- 入浴以外のデイサービスを必要としていない:59.3%
- 費用を少しでも抑えたい:28.4%
つまり、「デイサービスへ一日通いたいわけではないが、お風呂だけは支援が必要」という家庭が少なくないということです。
ただし、これは令和9年度の介護報酬改定に向けた検討資料です。入浴だけの短時間利用が全国一律で新たに認められた、という決定ではありません。現在の対応は事業所の体制やケアプラン、地域のサービス状況によって異なります。
自宅での入浴が難しいときの3つの選択肢
1.福祉用具や住宅改修で自宅入浴を続ける
立ち座りや浴槽のまたぎ動作が主な問題なら、シャワーチェア、浴槽台、浴槽グリップ、すべり止めマット、手すりなどで安全性を高められる場合があります。
ただし、用具を置くだけでは不十分です。本人の動作、浴槽の高さ、洗い場の広さ、介助者が立つ場所まで確認しましょう。詳しくは「入浴補助用具は介護保険でレンタルできる?対象7品目と購入の仕組み」で解説しています。
2.デイサービスの入浴を相談する
自宅の浴室環境や家族の介助が難しい場合は、デイサービスでの入浴が候補になります。「入浴だけ」「短時間」で利用できるかは事業所によって異なるため、ケアマネジャーへ次の点を伝えて相談してください。
- 自宅で入浴できない具体的な理由
- 浴槽をまたげない、立ち上がれないなどの動作
- 家族が介助できない曜日や時間帯
- 入浴以外に必要な支援があるか
3.訪問入浴介護を検討する
寝たきりなどで通所が難しく、自宅の浴槽も使えない場合は、専用の浴槽を自宅へ持ち込む訪問入浴介護があります。本人の体調、住居の広さ、給排水の位置などを確認して利用を検討します。
福祉用具だけで解決しようとしないことが大切
福祉用具専門相談員として現場を見てきた経験では、入浴は「できる・できない」の境目が変わりやすい動作です。手すりを付けても、体調が悪い日や介助者が不在の日まで安全になるとは限りません。
まずは「どの動作が危ないのか」「誰が介助するのか」「毎回続けられる方法か」を整理し、福祉用具、住宅改修、デイサービス、訪問入浴を組み合わせて考えるのが現実的です。
家族が相談前に確認したいこと
- 浴室まで安全に移動できるか
- 服を脱ぐ、洗う、立つ、またぐ動作のどこで困るか
- 本人が自宅入浴と外部サービスのどちらを希望しているか
- 家族が無理なく介助を続けられるか
- 体調変化や転倒歴がないか
実際の入浴介助と安全確認は「在宅での入浴介助のやり方と安全のコツ」も参考にしてください。
まとめ
厚労省資料からは、自宅で安全に入浴できないことや、家族だけでは介助できないことが、「入浴だけ利用したい」という相談につながっている実態が見えます。
自宅入浴にこだわりすぎず、本人の安全と家族が続けられることを基準に選びましょう。まずはケアマネジャーへ、困っている動作と家庭の介助状況を具体的に伝えるところから始めてください。
出典:厚生労働省「第270回社会保障審議会介護給付費分科会 資料1 通所介護、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護」(2026年10月14日)
厚生労働省資料(PDF)
※資料中の数値は令和8年度老人保健健康増進等事業の速報値です。


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