「車いすって介護保険でレンタルできるの?」「自走式と介助式、何が違うの?」「どのくらいの費用がかかる?」――こうした疑問を、福祉用具専門相談員として何百件もの相談で受けてきました。車いすは介護保険の福祉用具貸与の対象ですが、条件や選び方を知らないまま使い始めると、本人にも介護者にも合わない用具を使い続けることになります。この記事では、車いすの種類・介護保険でレンタルする条件・選び方のポイントを詳しく解説します。
※この記事は、元福祉用具専門相談員として実際の相談現場で多かった事例や質問をもとに作成しています。
先に結論
- 車いすは原則要介護2以上が介護保険レンタルの対象
- ただし要支援1・2/要介護1でも「例外給付」で借りられる場合がある
- 車いすには「日常生活範囲における移動の支援が特に必要」という枠があり、他の種目より間口が広い
- 料金は要介護度では変わらない。1割負担なら自走式・介助式で月額400〜600円程度
車いすの主な種類と特徴
車いすは大きく分けて4種類あります。利用者の状態・使う場所・自走できるかどうかによって選ぶべき種類が変わります。
レンタル制度を確認する前に、そもそも導入するタイミングで迷う方は車いすはいつから必要?も参考にしてください。歩行器との違いや、長距離移動がつらくなった時の考え方を整理できます。
- 自走式:後輪が大きくハンドリムで自分で操作できる。介助者が押すことも可。上肢に力があり、自分で動きたい方に向いている。
- 介助式:後輪が小さく軽量・コンパクト。介助者が押して使う。自走が難しく、常に介助が必要な方に向いている。
- 電動式:モーター駆動でジョイスティックを操作。片手でも使える。上肢機能に制限があるが自分で移動したい方に向いている。
- リクライニング式・ティルト式:背もたれが倒れたり、座面ごと傾けたりできる。座位保持が難しい方や長時間使用する方に向いている。
介護保険でレンタルできる条件
車いすは介護保険の福祉用具貸与の対象ですが、原則として要介護2以上の方が対象です。ただし、要支援1・2・要介護1の方でも、歩行が困難であるなど特別な事情がある場合は例外的に利用できます。「軽度者の例外給付」と呼ばれる仕組みで、ケアマネジャーが市区町村に確認・申請することで利用できる場合があります。
「うちの親は要介護1だから使えない」と思い込んでいる方も多いですが、諦めずにまずケアマネジャーに相談してみることをおすすめします。

車いすが例外給付の対象になる2つの状態像
軽度者(要支援1・2/要介護1)が原則対象外になるのは、車いす・車いす付属品を含む9種目です。手すり・スロープ・歩行器・歩行補助つえは、この制限を受けません。歩行器・歩行車の条件と料金は歩行器は要支援1から介護保険でレンタルできるで詳しく解説しています。
そのうえで、車いすについては次のどちらかに当てはまれば例外給付の対象になり得ます。
- 日常的に歩行が困難な方
=認定調査の基本調査 1-7「歩行」が「3.できない」 - 日常生活範囲における移動の支援が特に必要と認められる方
2つ目の枠は、他の福祉用具より間口が広い
ここが車いす特有のポイントです。1つ目は認定調査の結果で機械的に判定できますが、2つ目の「移動の支援が特に必要」には、対応する調査項目がありません。
つまり、調査で歩行が「できる」と判定されていても、買い物や通院といった日常生活の範囲で移動に支援が要ると認められれば、対象になり得るということです。介護ベッドの例外給付が「寝返り」「起き上がり」という調査項目に紐づいているのと比べると、車いすは判断の幅が広くとられています。
ただしこの枠で申請する場合は市区町村への確認申請が必要です。①医師の医学的な所見にもとづくこと ②サービス担当者会議などを通じたケアマネジメントで必要と判断されること ③市町村が確認していること、の3つがそろって認められます。
手続きの重さは認定調査の結果で変わる
ルートA:基本調査1-7が「3.できない」の場合。状態像が確認できているので、市区町村への確認申請そのものが不要な自治体があります。サービス担当者会議で必要性を判断し、その結果をケアプランや会議録に残す流れで進められます。
ルートB:それ以外の場合(「移動の支援」の枠を含む)。市区町村への確認申請が必要です。医師の所見をそろえ、担当者会議で検討したうえで申請します。
先に契約しないでください。多くの自治体で「貸与開始前の提出」が原則とされています。順番を間違えると、承認されてもその期間が自費になることがあります。必要書類や運用は自治体によってかなり違うので、まずケアマネジャーに地域のやり方を確認してください。
介護ベッドなど他の種目の例外給付については介護ベッドは要介護1・要支援でも借りられる?で詳しく解説しています。
レンタル料金の目安
介護保険でのレンタル料金は、利用者の自己負担割合(1〜3割)によって異なります。以下は月額・1割負担の場合の目安です。
- 自走式・介助式:月額400〜600円程度(レンタル会社の設定する月額レンタル料の1割)
- 電動車いす:月額2,000〜3,000円程度(電動は本体価格が高いためレンタル料も高め)
- リクライニング式:月額700〜1,200円程度
同じ車いすでも、レンタル会社によって設定料金が異なります。担当のケアマネジャーや福祉用具専門相談員に複数社の見積もりを取ってもらうことも可能です。
要介護度でレンタル料は変わらない
よくある誤解ですが、レンタル料そのものは要介護度では変わりません。変わるのは自己負担の割合(1〜3割)と、区分支給限度額の枠です。要介護1でも要介護5でも、同じ車いすなら同じ月額です。
例外給付で借りる場合も扱いは同じで、認められれば通常どおり1〜3割の負担になります。「例外だから割高になる」ということはありません。
認定を待つあいだ・保険が使えないとき
認定がまだ出ていない、あるいは例外給付が認められなかった場合は自費レンタルになります。介護保険の指定を受けた事業者であれば、保険を使ったときの1割負担額と同じくらいの水準に設定していることが多いです。「自費だから全額で何倍にもなる」と身構える必要はありません。
また、要介護認定の効力は申請日に遡って生じるため、認定が出るまでは自費、下りたら介護保険に切り替えるという対応をしている事業者もあります。ただし対応するかどうかは事業者ごとの判断であり、実際に何月分から保険請求になるかも給付管理の都合でずれることがあります。始める前に、事業者へ「切り替えの可否と自費分の扱い」を、ケアマネジャーへ「何月分から請求になるか」を確認しておくと安心です。
介護保険レンタルのメリット
- 体の状態が変化したら別のタイプに変更できる:買い取りと違い、身体の変化に合わせて柔軟に対応できる
- 専門スタッフが自宅に来て調整・設置してくれる:座面の高さ・フットレストの調整など個別対応が受けられる
- 修理・メンテナンスが含まれていることが多い:パンクや故障時の対応もレンタル会社が行う
- 購入に比べて初期費用が大幅に抑えられる:車いす本体は数万〜十数万円するが、レンタルなら月額数百円から
失敗しない選び方のポイント
①使う場所(室内・屋外・両方)で選ぶ
室内メインなら小回りが利くコンパクトタイプ、屋外メインなら段差を越えやすい大きめタイプが向いています。両方使う場合は汎用性の高いものを選びましょう。「玄関の幅を通れるかどうか」も必ず事前に確認してください。
②自走するか・介助してもらうかを確認する
本人に自走できる力があるかどうかで自走式か介助式かが決まります。「少し動ける」方には自走式を試してみることで、自立心や活動量の維持につながることもあります。ただし、体幹バランスが不安定な方が自走式を使うと転倒リスクが高まるため、専門家に評価してもらうことが重要です。
③座面のサイズを体に合わせる
座面の幅・奥行きが合っていないと、長時間座ると床ずれや姿勢崩れの原因になります。座面幅は車いすに座ったときに両側に指2本分の余裕がある程度が目安です。福祉用具専門相談員に体のサイズを測定してもらい、適切なサイズを選んでもらいましょう。
④介助者の負担も考慮する
車いすは「本人が使うもの」であると同時に、「介助者が扱うもの」でもあります。介助式の場合は軽量タイプの方が介助者の腰への負担が小さくなります。また、折りたたみ式かどうかも車への積み降ろしに影響します。
自走式・介助式・電動など、自分に合う車いすをもう少し詳しく比べたい方は車いすの種類と選び方完全ガイドで確認できます。
Q. 車いすを使い始めると歩けなくなりますか?
「歩けるうちは使わない方がいい」という誤解が広まっていますが、適切な車いすを使うことで外出の機会が増え、生活の質が上がるケースも多くあります。歩行可能な方でも、長距離移動時や疲労時にだけ車いすを使う「併用」という形もあります。むしろ、転倒を恐れて外出しなくなることのほうが、廃用症候群(使わないことで機能が低下すること)につながります。まずはケアマネジャーに相談して、試乗できる機会を作ってもらいましょう。
Q. 要介護1でも車いすをレンタルできますか?
原則は要介護2以上ですが、「軽度者の例外給付」という仕組みにより、要介護1の方でも歩行困難などの特別な事情がある場合はレンタルできる可能性があります。ケアマネジャーが市区町村に申請し、認められれば介護保険でのレンタルが可能です。諦めずにまずケアマネジャーに相談してみてください。
Q. レンタルか購入か、どちらがよいですか?
基本的には介護保険でのレンタルがおすすめです。理由は3つあります。①体の状態に合わせて変更できる柔軟性 ②修理・メンテナンスがレンタル料に含まれる ③初期費用を抑えられる。ただし、介護保険対象外の方や、特定の仕様の車いすが必要で保険適用外の場合は購入が選択肢になります。購入する場合でも福祉用具専門相談員に相談しながら選ぶことをおすすめします。
Q. 要支援でも車いすは借りられますか?
要支援1・2も要介護1と同じ扱いで、原則は対象外です。ただし例外給付の考え方は同じように適用されます。基本調査1-7「歩行」が「3.できない」であるか、日常生活範囲における移動の支援が特に必要と認められれば、対象になり得ます。判断の入口は要支援か要介護かではなく、歩行と移動の状態です。
Q. 車いすのレンタルは要介護いくつからですか?
原則は要介護2以上です。要支援1・2と要介護1は「軽度者」として原則対象外になりますが、上記の状態像に当てはまれば例外給付として利用できる場合があります。要介護度だけで判断せず、まずケアマネジャーに相談してください。
Q. 要支援1でも電動車いすはレンタルできますか?
電動車いすも「車いす」の一種なので、例外給付の考え方は同じです。ただし電動はレンタル料が高く、屋外での操作や安全性の確認も必要になるため、必要性の説明はより丁寧に求められる傾向があります。試乗や操作評価を含めて、ケアマネジャーと福祉用具専門相談員に相談してください。
Q. 例外給付が認められたら、いつまで使えますか?
多くの自治体で、承認の有効期間は要介護認定の有効期間の満了日までとされています。更新のたびに改めて確認が必要になるのが一般的です。区分変更などで要介護2以上になれば、例外給付の手続きは不要になります。
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車いすを借りられない間、外出をあきらめないために
例外給付が認められるまでの間や、対象外と判断された場合は、通院や買い物の移動が難しくなります。通院の付き添いや外出の同行だけを1時間単位で頼める介護保険外のサービスもあります。
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※例外給付の可否は、まず担当ケアマネジャーまたは市区町村へ確認してください
まとめ
車いすは介護保険で月額数百円からレンタルできる便利な制度があります。「歩けるうちは使わない」という考えは変えて、安全に活動の範囲を広げる道具として前向きに検討してみてください。まずはケアマネジャーに相談して、試乗できる機会を作ってもらうことから始めましょう。適切な車いすを使うことで、本人の外出機会が増え、生活の質が上がるケースを現場でたくさん見てきました。
購入候補やタイプ別の商品を比較したい方は、車いすおすすめ5選も参考になります。レンタル前の比較材料としても確認しておくと選びやすくなります。
次に読むならこちら
- 導入タイミングを確認する:車いすはいつから必要?
- 種類と選び方を確認する:車いすの種類と選び方完全ガイド
- 商品を比較する:車いすおすすめ5選


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