歩行器をすすめても「恥ずかしい」「老人っぽく見える」「近所の人に見られたくない」と嫌がられることは、決して珍しくありません。
※この記事は、元福祉用具専門相談員として実際の相談現場で多かった事例や質問をもとに作成しています。
家族から見ると、ふらつきや転倒が心配で「そろそろ歩行器やシルバーカーを使ったほうが安心」と感じる場面があります。けれど本人にとっては、歩行器を使うことが「年を取った自分を認めること」のように感じられ、強い抵抗につながることがあります。
結論から言うと、嫌がる気持ちを無理に押さえつける必要はありません。歩行器以外にも、杖、シルバーカー、歩行車など選択肢があります。大切なのは「何を使わせるか」より、本人が受け入れやすい形で、転ばず外出を続ける方法を一緒に探すことです。
先に選び方の目安:見た目の抵抗が強いなら杖やシルバーカーから、ふらつきが強いなら歩行器や歩行車を検討します。
具体的な候補を比較したい方は、先にシルバーカーおすすめ5選、歩行器おすすめランキング、シルバーカーと歩行器の違いを確認しておくと選びやすくなります。
歩行器が恥ずかしいと感じる理由
歩行器やシルバーカーを嫌がる理由は、単にわがままという話ではありません。本人の中には、次のような気持ちが重なっていることがあります。
- 老人っぽく見えるのが嫌
- 近所の人や知人に見られるのが恥ずかしい
- 「もう自分は歩けない」と認めるようでつらい
- 家族に年寄り扱いされたと感じる
- 使い方がわからず、逆に転びそうで怖い
- 買い物や外出で邪魔になりそうだと思っている
特に、昔「老人車」という呼び方を聞いてきた世代では、その言葉の印象が強く残っていることがあります。「あれを使うほど年を取っていない」「まだ自分で歩ける」と感じている方に、いきなり歩行器をすすめると反発が出やすくなります。
まずは「恥ずかしいんだね」「人に見られるのが気になるんだね」と受け止めることが大切です。拒否の裏側には、歩けなくなる不安や、今まで通りでいたい気持ちが隠れていることがあります。
「まだ早い」と感じる人は少なくありません
シルバーカーや歩行器を勧められた時、「まだそこまで弱っていない」と感じる方は少なくありません。
現場でも、「近所に見られたくない」「年寄り扱いされたくない」「自分はまだ歩ける」という声をよく聞きました。
そのため、家族が安全のために勧めても、本人には自尊心を傷つけられたように感じる場合があります。
まずは用具を使うことではなく、今の生活を長く続けるための方法として考えてもらうことが大切です。
シルバーカーと歩行器は別の用具です
シルバーカーと歩行器は似ているように見えますが、目的が異なります。
- シルバーカー:買い物や外出を楽にする補助用具
- 歩行器:歩行そのものを支える福祉用具
本人が嫌がっている場合、実は用具が合っていないだけということもあります。
歩行状態や生活環境に合わせて選ぶことが大切です。
杖・シルバーカー・歩行器の比較
同じ歩行を支える道具でも、見た目や安定性、本人の受け入れやすさは違います。迷う場合は、まず大まかな違いを確認しましょう。
| 用具 | 見た目 | 安定性 | 本人の受け入れやすさ | 屋内外向き |
|---|---|---|---|---|
| 杖 | 比較的自然に見えやすい | 低〜中 | 受け入れやすいことが多い | 屋外・短距離向き |
| シルバーカー | 買い物用に見せやすい | 中 | 歩行器より受け入れやすい場合あり | 屋外・買い物向き |
| 歩行器・歩行車 | 介護感が出やすい | 高 | 抵抗は出やすいが安全性は高い | 屋内用・屋外用で選ぶ |
見た目だけで選ぶと転倒リスクを見落とすことがあります。一方で、安全性だけを理由に強くすすめると本人が使わなくなることもあります。本人の気持ちと歩行状態の両方を見て選びましょう。
歩行そのものが不安定になっている場合は、シルバーカーではなく歩行器が適している場合もあります。
歩行器おすすめランキングも参考にしてください。
シルバーカーなら受け入れやすいケース
歩行器に抵抗が強い方でも、シルバーカーなら受け入れやすいことがあります。理由は、本人が「介護用品」ではなく「買い物や外出のための道具」と考えやすいからです。
たとえば、買い物かごを載せたい、途中で座って休みたい、荷物を持つとふらつく、といった方にはシルバーカーが候補になります。外出先で使う目的がはっきりしていると、本人も納得しやすくなります。種類によって使いやすさは大きく変わるため、迷う場合は自分に合うシルバーカーを確認するのも一つの方法です。
ただし、シルバーカーは歩行器ほど体を支える目的には向きません。体重を強く預けないと歩けない方、方向転換で大きくふらつく方は、歩行器や歩行車の方が安全な場合があります。詳しくはシルバーカーと歩行器の違いで確認できます。
杖で足りるケース
ふらつきが軽く、片手の支えがあれば安定する方は、いきなり歩行器ではなく杖から始める方法もあります。
杖は見た目の抵抗が比較的少なく、「散歩の時だけ」「人混みの時だけ」と使う場面を限定しやすい用具です。本人が歩行器を強く嫌がる場合、まずは杖の選び方とおすすめを確認して、受け入れやすい支えから始めるのも一つの方法です。
ただし、左右どちらにもふらつく、杖に強く体重を預ける、屋外で疲れると姿勢が崩れる場合は杖だけでは不十分です。判断に迷う場合は杖だけでは危険なサインも確認してください。
家族が無理に勧めて逆効果になるケース
転倒が心配になると、家族はつい「危ないから使って」「転んだら大変」と強く言いたくなります。ただ、本人が恥ずかしさを感じている段階で正論だけを伝えると、話題そのものを避けてしまうことがあります。
特に、「もう年なんだから」「歩行器を使わないとダメ」といった言い方は逆効果になりやすいです。本人には、道具をすすめられたことよりも「できない人扱いされた」という印象が残ることがあります。
伝える時は、「歩行器を使って」ではなく、「買い物の帰りに疲れやすそうで心配」「散歩を続けるために、休めるタイプも見てみない?」のように、本人が続けたい生活に結びつける方が受け入れられやすくなります。声かけに迷う場合は歩行器を使いたがらない親への声かけも参考になります。
「老人車は嫌」と言われるのは珍しくない
シルバーカーや歩行器を嫌がる人は多くいます。特に、昔「老人車」という呼び方を聞いてきた世代では、その言葉の印象が強く残っていることがあります。
本人の中には、「あれを使うほど年を取っていない」「まだ自分で歩ける」「人に見られるのが恥ずかしい」という気持ちがあるかもしれません。家族が心配してすすめていても、本人には「もう年寄り扱いされた」と感じられることもあります。
そのため、まずは嫌がる気持ちを否定しないことが大切です。「危ないから使って」と言いたくなる場面でも、本人にとっては自尊心に関わる話です。拒否の裏側には、歩けなくなる不安や、今まで通りでいたい気持ちが隠れていることがあります。
杖とシルバーカー・歩行器では心理的ハードルが違う
同じ歩行を支える道具でも、杖とシルバーカー・歩行器では受け止め方が違うことがあります。
杖は比較的受け入れやすい場合があります。外出時の支えとして自然に見えやすく、「少し足元が不安だから持つ」という感覚で始められる方もいます。杖から考えたい場合は、杖はいつから必要?選び方とおすすめ5選も参考になります。
一方で、シルバーカーや歩行器は大きさがあり、周囲から見てもわかりやすいため、本人が“介護感”を強く感じることがあります。「これを使い始めたら、もう前の自分には戻れないのでは」と感じ、抵抗につながることもあります。
家族としては、道具の機能だけでなく、本人がどう見られると感じているかにも目を向けると、話し合いが少ししやすくなります。
無理に使わせようとすると逆効果になることも
転倒が心配になると、家族はつい強くすすめたくなります。ただ、本人が嫌がっている段階で無理に使わせようとすると、「もう言われたくない」と話題そのものを避けてしまうことがあります。
まずは、「嫌なんだね」「まだ使いたくないんだね」と一度受け止めることが大切です。そのうえで、「家の中では使わなくてもいいから、買い物の時だけ試してみない?」「長く歩く日だけ使うのはどう?」と、場面を限定して提案すると受け入れやすくなる場合があります。
外では使えていても、家の中では歩行器や杖を使わない方もいます。本人を責める前に生活動線や室内環境を見直したい場合は、家の中では使わない…は危険?も参考になります。
家の中では問題なく歩ける方でも、外では段差、傾斜、人混み、荷物、疲れやすさなどが重なります。日常生活全体でいつから福祉用具を考えるか迷う場合は、福祉用具はいつから必要?導入タイミングまとめもあわせて確認してみてください。
スーパーのカートの方が危ない場合もある
現場でよく見かけるのが、「店まではシルバーカーや歩行器で来たけれど、店に入ったら入口に置いて、スーパーのカートへ乗り換える」というケースです。
たしかに、スーパーの中は床が平らで、通路も比較的歩きやすいことがあります。ふらつきが少なく、短時間の買い物であれば、カートにつかまりながら歩ける方もいます。
ただし、スーパーのカートは歩行補助具ではありません。歩くために体を預ける前提で作られているものではなく、多くの場合ブレーキもありません。急に前へ進んだり、方向転換で体が流れたりした時に、ふらつきを支えきれないことがあります。
買い物中は安心感があっても、スーパーのカートに体を預けて歩く場合は注意が必要です。詳しくは、スーパーのカートで歩くのは危険?でも解説しています。
特に、足元が不安定な方、方向転換でふらつく方、疲れると姿勢が崩れやすい方は注意が必要です。カートは荷物を運ぶには便利ですが、転倒を防ぐための支えとしては不十分なことがあります。
その点、買い物かごを載せられる歩行器や、座れるタイプ、ブレーキ付きのタイプであれば、店に入るたびに乗り換えなくてよい場合があります。本人にとっても「買い物のための道具」と考えやすくなり、介護用品という印象が少しやわらぐこともあります。
歩行器やシルバーカーの違い、買い物で使いやすいタイプを比較したい場合は、歩行器おすすめランキング|シルバーカーとの違いと失敗しない選び方5選を参考にしてください。シルバーカーの導入タイミングを知りたい方は、シルバーカーはいつから必要?まだ早いと感じる方へでも詳しく解説しています。
本人のADLや外出状況からどちらが合うかを整理したい場合は、歩行器とシルバーカーの違いも参考になります。
「転ばず外出を続けるため」の道具として考える
シルバーカーや歩行器は、「もう歩けない人のもの」と決めつけなくても大丈夫です。むしろ、転ばずに外出を続けるため、行ける場所を減らさないための道具として考えることができます。
介護用品を使うことは、負けではありません。好きな店へ行く、散歩を続ける、家族と外出する。そうした生活を守るための選択肢のひとつです。
本人が嫌がる時は、すぐに説得しようとせず、「どこが嫌なのか」「どんな場面なら使えそうか」を一緒に探してみましょう。色やデザイン、使う場所、使う時間を本人と相談するだけでも、受け入れ方が変わることがあります。
大切なのは、道具を使わせることそのものではなく、本人が安心して外に出られる状態を保つことです。
迷ったらここから:本人が「恥ずかしい」と嫌がる場合は、見た目・安定性・使う場面を比べて、受け入れやすい選択肢から検討しましょう。
シルバーカーを段階的に試す方法
「明日から毎日使って」と促すより、段階的に慣れてもらう方が受け入れられやすくなります。
- カタログを一緒に見て、デザインや機能を知る
- 展示品を実際に触って、重さや使いやすさを確認する
- 人目が少ない場所(公園や駐車場など)で短時間だけ試す
- 近くのスーパーへの買い物だけ使ってみる
- 「やっぱり楽だった」という体験を積み重ねる
焦らず一段ずつ進めることが、長続きのコツです。
よくある質問(FAQ)
Q. 親が「転んでから考える」と言って聞きません
「転んでから考える」という言葉は、転倒リスクを軽視しているというより、「まだ転んでいない自分」を認めたい気持ちの表れです。説得するより、実際に疲れを感じた場面や不便だったエピソードを一緒に振り返る方が効果的です。近くの同年代の方がシルバーカーを使っている様子を話題にするのも、心理的なハードルを下げるきっかけになります。
Q. ケアマネジャーから勧めてもらえますか?
はい、可能です。家族が言うより、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員など「第三者の専門家」が同じことを伝えると、素直に受け入れてもらえることがよくあります。「担当のケアマネさんが心配していたよ」という流れに持っていくのも有効です。
Q. レンタルで試せますか?
シルバーカーは介護保険のレンタル対象外のため、購入になります。ただし、福祉用具店によっては試用期間を設けているところもあります。まずは店舗で実際に触れてみることをおすすめします。購入前に制度や費用の考え方を整理したい方は、レンタルと購入の違いはこちらも参考になります。ケアマネジャーに相談すると、近くの福祉用具店を紹介してもらえます。
次に読むならこちら:シルバーカーを無理なく選ぶために、商品候補・購入前の考え方・歩行器との違いを順番に確認できます。
- おすすめ商品を見たい方は、おすすめのシルバーカーはこちら
- レンタル・購入の考え方を知りたい方は、福祉用具レンタルについてはこちら
- 本当にシルバーカーが合っているか迷う方は、歩行器との違いはこちら
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歩行器やシルバーカーの導入タイミングに悩む方は、本人の気持ちへの向き合い方や、ほかの福祉用具との違いもあわせて確認しておくと安心です。
- 歩行器おすすめランキング5選
- シルバーカーと歩行器の違い|どっちを選ぶ?
- 杖はいつから必要?選び方とおすすめ5選
- 杖だけでは危険なサイン
- 親が杖を嫌がる理由と対処法
- 福祉用具はいつから必要?導入タイミングまとめ
現場の一言
実際には「シルバーカーが嫌」なのではなく、「年を取ったと思われたくない」という気持ちが背景にあることも少なくありません。
無理に勧めるより、「好きな場所へ安全に出かけるための道具」という伝え方の方が受け入れられることがあります。
まとめ|嫌がる気持ちを受け止めながら、外出を続ける方法を考える
「歩行器は恥ずかしい」「老人車は嫌」「まだ早い」と言われた時、家族は心配と戸惑いを感じやすいものです。ただ、本人の拒否には、恥ずかしさや不安、自分らしさを失いたくない気持ちが含まれていることがあります。
まずは気持ちを否定せず、外出時だけ、買い物だけ、疲れやすい日だけなど、使う場面を小さく区切って考えてみましょう。スーパーのカートに頼りすぎている場合は、ブレーキ付き・座れるタイプ・買い物かごを載せられるタイプなど、乗り換えなくてもよい選択肢を検討するきっかけになります。
本人にとって受け入れやすい形を探しながら、転ばず外出を続けるための準備を少しずつ進めていきましょう。
迷ったら、シルバーカーや歩行器をいきなり購入する前に、本人のADLや生活動線に合うかを確認しましょう。具体的な候補を比べたい場合は歩行器おすすめランキング、使い始める時期を考えたい場合はシルバーカーの導入タイミング、ほかの福祉用具も含めて整理したい場合は福祉用具の導入タイミングまとめも参考にしてください。
歩行器の選び方・おすすめはこちらで確認できます。


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