結論:介護保険の認定を受け、生活上必要と判断されれば、歩行器は福祉用具貸与でレンタルできます。歩行器は、要支援1・2や要介護1の人も原則対象外にならない種目です。
ただし、店頭で好きな製品を借りれば自動的に保険が適用されるわけではありません。本人の身体状況と自宅環境を確認し、ケアプランへ位置づけたうえで、指定事業者から借りるのが基本です。
※この記事は、元福祉用具専門相談員として実際の選定現場で多かった相談や、家族が誤解しやすい点をもとに作成しています。
歩行器は「軽度者は原則対象外」の9種目に入らない
ここが、いちばん誤解されているところです。
介護保険の福祉用具貸与には、要支援1・2/要介護1の方が原則として対象外になる9種目が決められています。車いす・車いす付属品/特殊寝台(介護ベッド)・特殊寝台付属品/床ずれ防止用具/体位変換器/認知症老人徘徊感知機器/移動用リフト/自動排泄処理装置です。
歩行器・歩行車は、この9種目に含まれていません。手すり・スロープ・歩行補助つえも同じです。つまり要支援1でも、例外給付のような特別な手続きなしに、通常どおりレンタルできます。
「介護度が軽いから何も借りられない」と思って相談をあきらめてしまう方が本当に多いのですが、転倒予防にいちばん役立つ時期は、まだ軽度のうちです。歩ける今こそ相談する価値があります。
一方、車いすや介護ベッドは9種目に入るため、軽度者は原則対象外で、例外給付の手続きが必要になります。詳しくは車いすは要支援・要介護1でもレンタルできる?と介護ベッドは要介護1・要支援でも借りられる?で解説しています。
歩行器を介護保険でレンタルできる条件
- 要支援または要介護の認定を受けている
- 歩行器が日常生活の自立や安全に必要と判断される
- ケアマネジャー等へ相談し、利用計画へ位置づける
- 介護保険の指定を受けた福祉用具貸与事業者を利用する
まだ認定を受けていない場合は、市区町村の介護保険窓口または地域包括支援センターへ相談します。急いで必要な場合の扱いは自治体や事業者によって異なるため、購入前に確認してください。
自己負担はいくら?
介護保険が適用されると、所得に応じてレンタル費用の1〜3割を自己負担します。実際の月額は製品、事業者、地域によって異なります。契約前に、月額料金・自己負担額・搬入費・解約時の扱いを書面で確認しましょう。
認定を待つあいだはどうするか
認定の結果が出るまでには原則30日ほどかかります。ただし要介護認定の効力は「申請日」に遡って生じるため、待っている期間もあとから保険の対象になり得ます。
この仕組みがあるため、認定が出るまでは自費で貸し出し、下りたら介護保険レンタルへ切り替えるという対応をしている福祉用具事業者もあります。ただしこれは事業者ごとの運用で、全国どこでも同じというわけではありません。
また、制度上は遡れても、実際に何月分から保険請求になるかは給付管理側の事情でずれることがあります。始める前に、事業者へ「認定後に切り替えられるか・自費分はどう扱われるか」を、ケアマネジャーへ「何月分から請求になるか」を確認しておくと安心です。
歩行器は車いすや介護ベッドに比べて本体価格が低く、自費で借りる場合の負担も比較的小さく収まることが多い用具です。転倒してからでは遅いので、認定を待って我慢する必要はありません。
レンタルできる歩行器の種類
| 種類 | 特徴 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 固定型 | 持ち上げて前へ運ぶ。安定性を得やすい | 室内、立位や一歩ずつの移動 |
| 交互型 | 左右を交互に動かして進む | 一定のバランスと操作理解がある人 |
| 前輪付き | 前脚に車輪があり、持ち上げる負担を減らせる | 平坦な室内 |
| 歩行車 | 車輪とブレーキを備え、連続して押して歩く | 屋外や長い距離 |
一般的な買い物用シルバーカーは、歩行を補う福祉用具としての歩行車とは目的が異なり、介護保険レンタルの対象にならないことがあります。違いは歩行器とシルバーカーの選び分けで確認できます。
固定式・交互式は購入も選べる
2024年度から、一部の歩行器は貸与と販売を選択できる制度になりました。対象は、脚部がすべて杖先ゴムなどの形状になっている固定式または交互式歩行器で、車輪・キャスター付きの歩行車は含まれません。
選択対象だから購入が必ず得とは限りません。身体状態が変わりやすい、まず自宅で試したい、保守点検を受けたい場合はレンタルが向きます。長く同じ製品を使う見込みがある場合は、専門職から貸与・販売それぞれの説明を受けて比較しましょう。購入も視野に入れる場合は、歩行器・歩行車の選び方で種類と価格帯を比べておくと相談しやすくなります。
失敗しない選び方
1.本人の歩き方に合う種類を選ぶ
「安定しそうだから固定型」「屋外だから四輪」と外形だけで決めず、足の運び、握力、ブレーキ操作、認知機能まで確認します。病院や自宅で理学療法士、作業療法士、福祉用具専門相談員に動作を見てもらうと安全です。
2.高さと幅を自宅で合わせる
グリップが高すぎても低すぎても姿勢が崩れます。また、本体が廊下を通れても、トイレや寝室で方向転換できない場合があります。廊下幅、出入口、敷居、床材を確認し、可能なら候補品を自宅で試してください。
3.ブレーキ操作を確認する
歩行車は、走行ブレーキと駐車ブレーキを本人が確実に使えるかが重要です。座面へ座る前は必ず駐車ブレーキをかけます。坂道や段差での使用可否も、製品の説明書と専門職の指示を確認してください。
利用開始までの流れ
- 相談:ケアマネジャーまたは地域包括支援センターへ困りごとを伝える
- 選定:専門職が身体状況と住環境を確認する
- 試用:高さ、幅、曲がりやすさ、ブレーキを自宅で試す
- 契約・納品:料金と利用条件の説明を受けて契約する
- 定期確認:身体状態や生活環境の変化に合わせて調整・交換する
レンタルと購入の比較
| 比較項目 | レンタル | 購入 |
|---|---|---|
| 試しやすさ | 合わなければ交換を相談できる | 購入前の試用可否を確認 |
| 状態変化 | 機種変更しやすい | 買い替えが必要 |
| 保守 | 事業者の点検・対応がある | 自分で管理する |
| 対象 | 給付対象となる歩行器 | 選択制対象または全額自費の商品 |
よくある質問
要支援1でもレンタルできますか?
歩行器は要支援1・2、要介護1の人も福祉用具貸与の対象になり得ます。ただし、本人に必要かどうかの判断と利用計画への位置づけが必要です。
室内用でも対象になりますか?
室内利用だけを理由に対象外になるわけではありません。日常生活上の必要性と、対象製品の要件を満たすかで判断されます。
認定前に買っても後から保険を使えますか?
購入後に自動で給付されるとは限りません。特に選択制による販売を利用する場合は、対象製品・指定事業者・手続きの確認が必要です。必ず購入前に自治体やケアマネジャーへ相談してください。
歩行車も要支援でレンタルできますか?
歩行車も歩行器と同じ扱いで、9種目には含まれません。要支援1から対象になり得ます。ただし買い物用のシルバーカーは福祉用具の歩行車とは目的が異なり、対象にならないことがあります。
介護度が上がると料金も上がりますか?
いいえ。レンタル料そのものは要介護度では変わりません。変わるのは自己負担の割合(1〜3割)と、区分支給限度額の枠です。同じ歩行器なら、要支援1でも要介護5でも月額は同じです。
歩行器と歩行車、どちらで申請すればよいですか?
申請の区分を家族が選ぶ必要はありません。本人の歩行状態と使う場所を見て、福祉用具専門相談員とケアマネジャーが適した種類を選定します。「屋内で一歩ずつ支えたい」「屋外を続けて歩きたい」など、困っている場面を具体的に伝えることのほうが大切です。
歩行車(外出用)も同じ扱いでレンタルできる
ここまで「歩行器」と書いてきましたが、屋外用の歩行車も同じく福祉用具貸与の対象で、軽度者が原則対象外になる9種目には含まれません。要支援1から利用できます。
ただし2024年度から始まった貸与と販売の選択制の対象は、脚部が杖先ゴムなどになっている固定式・交互式の歩行器だけです。車輪付きの歩行車は選択制の対象外で、レンタルのみになります。
なお、買い物用のシルバーカーは歩行を支える福祉用具ではないため、介護保険のレンタル対象にならないことがあります。見た目が似ていても扱いが違うので、購入前に確認してください。
まとめ
歩行器は介護保険でレンタルでき、要支援1・2や要介護1の人も利用対象になり得ます。大切なのは、介護度だけで判断せず、本人の歩行能力と自宅環境に合う製品を実際に試すことです。
まずケアマネジャーへ「どこで、どの動作が危ないか」を伝え、福祉用具専門相談員と自宅で選定しましょう。導入時期は歩行器が必要になるサイン、製品候補は歩行器おすすめ比較をご覧ください。
参考:厚生労働省「福祉用具・住宅改修」「福祉用具貸与及び介護予防福祉用具貸与に係る福祉用具の種目」「選択制の対象とする種目に関する解釈」


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