退院まであと1週間。病院から説明を受けても、家の準備、必要な用品、家族の役割まで一度に考えるのは大変です。
退院前に、すべてを完璧にそろえる必要はありません。まずは退院直後に困ることを減らす準備から始めましょう。この記事では、退院までの残り日数に合わせて、家族が確認することを整理します。
※この記事は、元福祉用具専門相談員として実際の相談現場で多かった事例や質問をもとに作成しています。
介護用品だけ迷う方はこちら。5問で、トイレ、食事、入浴、寝具・清拭、着替えの場面ごとに、今必要なものを整理できます。
退院までの7日間でやること
予定どおりに進まないこともあるため、日にちは目安です。退院日が決まったら、できるものから着手してください。
| 時期 | 確認・準備すること |
|---|---|
| 7日前 | 退院日時、移動手段、病院の連絡先、退院後に相談する窓口を確認する |
| 5〜6日前 | 歩行・移乗・排泄・食事・入浴・服薬について、病院での方法を聞く |
| 3〜4日前 | 自宅の動線、寝る場所、トイレまでの移動、入浴方法を確認する |
| 2〜3日前 | 退院直後に必要な用品だけを準備し、置き場所を決める |
| 前日 | 薬、書類、衣類、食事、緊急連絡先を最終確認する |
| 退院当日 | 病院からの申し送りを受け、自宅到着後の最初の動きを決めておく |
| 退院後1週間 | 困った場面を記録し、病院、ケアマネジャー、訪問系サービスなどに相談する |
今日確認すること
最初に、家族だけで判断せず、次の3点を紙やスマートフォンに書き出します。
- 退院予定日と、退院後に主に介助する人
- 退院後に不安な場面。たとえば、夜間のトイレ、食事、入浴、着替えなど
- 病院へ聞きたいことと、退院後に相談できる連絡先
不安なことを先に具体化すると、「何となく全部準備しなければ」という状態から抜け出しやすくなります。
家族と病院・専門職で確認することを分ける
退院準備では、家族が自宅で準備することと、病院や専門職へ確認することを分けて整理すると、聞き漏らしを減らせます。
| 家族が準備・確認すること | 病院・専門職に確認すること |
|---|---|
| 退院後に主に介助する人を決める | 移動・立ち上がり・排泄の介助方法 |
| 玄関・廊下・トイレ・浴室の危険箇所 | 必要な福祉用具と使い方 |
| 食事・服薬・通院を支える人と時間 | 訪問看護・介護サービスの開始日 |
| 緊急時に動く家族と連絡順 | 症状悪化時の受診目安と連絡先 |
病院に聞くこと
退院前の説明では、できることだけでなく、今は難しいことも確認しておきます。家族が実際に介助する場面を想像しながら聞くのがポイントです。
- ベッドから車いす、椅子、トイレへ移るときの介助方法
- 歩ける距離と、見守りが必要な場面
- トイレの回数、失敗が心配な時間帯、排泄用品の使い方
- 食事の姿勢、食べやすい形、飲み込みで注意すること
- 自宅で入浴してよいか、難しい場合の清潔保持の方法
- 着替えの頻度と、本人が自分でできる動作
- 薬の名前、飲む時間、飲み忘れた場合の連絡先
- 次回受診日、緊急時の連絡先、退院後に相談できる窓口
説明を聞いたら、家族が実際にできるかを確認しましょう。移乗や入浴など、やり方に不安がある介助は、退院前に実演してもらうと安心です。
家族も説明に参加し、連絡先を書面で残す
退院支援では、家族が説明に参加し、退院後早い時期に相談できる体制を作ることが重要です。可能であれば、主に介助する家族も説明を聞き、次の内容をメモや書面で残しましょう。
- 自宅で続ける介助・処置と、してはいけないこと
- 体調が変わったときの症状別の連絡先
- 次回受診、訪問看護、訪問リハビリなどの予定
- 家族だけでは難しい場合に相談する担当者と電話番号
高齢者の病院から自宅への移行を調べた研究でも、家族の参加と退院後早期のフォローが支援を進めるポイントとして示されています。ただし、必要な支援や連絡の時期は本人の状態で異なるため、病院の指示を優先してください(参考:退院移行支援のシステマティックレビュー)。
自宅で確認すること
退院前に、本人が過ごす場所からトイレまでの動きを一度確認します。大がかりな改修を急ぐ前に、まずは通路と置き場所を整えます。
住宅内の危険箇所を評価して環境を整える介入は、在宅高齢者の転倒や受診を伴う転倒を減らす可能性が報告されています。手すりだけで安心と考えず、本人の動きに沿って複数の危険を確認することが大切です(参考:住宅内危険評価と環境改善のメタ解析)。
- 玄関から寝る場所、寝る場所からトイレまで、実際に使う動線を歩いて確認したか
- 寝る場所からトイレまでの通路に、荷物や電源コードがないか
- 敷物やマットが滑ったり、端がめくれたりしていないか
- 小さな段差や敷居で足が引っかからないか
- 手すりや、つかまる予定の家具がぐらつかず固定されているか
- 夜間に足元を確認できる明かりがあるか
- ベッドや布団から立ち上がる場所に、つかまれるものがあるか
- 食事をする場所と、薬や水分を置く場所が決まっているか
- 着替え、タオル、排泄用品を取り出しやすい位置に置けるか
- 家族が介助するときに、身体を入れるスペースがあるか
段差、夜間のトイレ、ベッドまわりなどを詳しく確認したい場合は、親の退院が決まったら確認したい自宅の準備もあわせてご覧ください。
退院前に用意する最低限の介護用品
退院直後に使う場面が決まっているものから準備します。使うか分からない用品を先に大量購入する必要はありません。
| 困りごと | まず確認・準備するもの | 急いで購入しなくてよいもの |
|---|---|---|
| トイレや失禁が心配 | 尿取りパッド、大人用おむつ、防水シーツ、処理袋 | 使用場面が決まっていない大型用品 |
| 食事をこぼしやすい | 食事用エプロン、持ちやすいコップ、使いやすい食器 | 本人の食べ方に合うか分からない専用食器 |
| 入浴が難しい | 清拭用タオル、本人が使い慣れたタオルや着替え | 家の浴室で使えるか確認していない用品 |
| 寝て過ごす時間が長い | 防水シーツ、清拭用品、体位を変える方法の確認 | 専門職に相談していないクッション類 |
| 着替えに介助が必要 | 前開きや面ファスナーなど、本人が扱いやすい衣類 | サイズや開閉方法が合わない衣類のまとめ買い |
どの用品が今の状態に合うか分からない場合は、冒頭のチェックAIで、トイレ・食事・入浴・寝具・着替えのどこを優先するか確認できます。
食事中にむせがある場合は、食形態やとろみの使用を自己判断で決めず、医師、看護師、言語聴覚士などに確認してください。
介護認定が退院に間に合わない場合
介護認定の結果を待っている間に退院日が近づくこともあります。間に合わないと感じた時点で、病院の医療ソーシャルワーカー、地域包括支援センター、市区町村の窓口などに相談しましょう。
- 退院後に必要な介助と、家族だけでできる範囲を伝える
- 認定結果が出るまでの相談先と手続きの流れを確認する
- 福祉用具や在宅サービスを使う場合の費用・利用条件を確認する
- 認定前に購入や契約を進めてよいか、必ず関係窓口へ聞く
「認定がまだだから相談できない」と考えず、退院後の生活に不安があること自体を早めに伝えてください。制度の扱いは自治体や状況で異なるため、具体的な利用可否は担当窓口で確認します。
退院当日の持ち物と動き
退院当日は、荷物を受け取って帰るだけではありません。自宅で最初に困らないよう、次の順番を家族で共有しておきます。
- 保険証や診察券、退院時の書類、薬、お薬手帳を受け取る
- 次回受診日と、体調が変わったときの連絡先を確認する
- 病院からの申し送りを聞き、家族が分からない点を質問する
- 自宅に着いたら、まず安全に休める場所へ移動する
- 水分、食事、排泄、薬など、当日の予定を無理のない範囲で確認する
本人が疲れている場合は、帰宅後に予定を詰め込みすぎないことも大切です。必要な確認が終わったら、休める環境を優先します。
退院後1週間に確認すること
退院後は、想定していなかった困りごとが見つかることがあります。できなかったことだけでなく、できたことも含めて簡単に記録しましょう。
退院前に「誰が・いつ連絡するか」を決める
予定が決まっていないと、困りごとが出ても家族だけで抱え込みやすくなります。退院前に、少なくとも次の3つをカレンダーへ入れておきましょう。
- 退院当日〜翌日:薬、食事、排泄、移動で困っていないか家族で確認する
- 退院後2〜3日:予定されている訪問や電話相談の日程と担当者を確認する
- 退院後1週間まで:困った場面と体調の変化を整理し、受診やケアマネジャーへの相談で伝える
病院から別の確認時期を指示されている場合や、訪問予定がすでに決まっている場合は、そちらを優先してください。
- どの時間帯に介助が必要だったか
- トイレ、食事、入浴、睡眠で困ったことは何か
- 家族の負担が特に大きかった動作は何か
- 用品が足りなかった場面、使わなかった用品は何か
- 次回受診や相談時に伝えたい変化は何か
急な体調変化や、病院から指示されている症状が出た場合は、自己判断で様子を見続けず、案内されている医療機関や相談先へ連絡してください。
よくある質問
要介護認定の申請は入院中でもできますか?
できます。本人が入院していても、家族や病院の医療ソーシャルワーカーが代理で市区町村へ申請できます。結果が出るまで1か月前後かかるため、退院日が見えた時点で申請するのが間に合わせるコツです。申請済みであれば、結果を待たずに暫定でサービスを始められる場合があります。
介護ベッドや手すりは退院日までに間に合いますか?
レンタルの福祉用具は、手配が動けば数日で搬入できることが多いです。一方で手すりの取り付け工事は、見積もり・事前申請・工事の順で進むため退院日に間に合わないことがあります。間に合わない場合は、工事不要の据え置き型や突っ張り型で当面をしのぐ方法があります。家のどこから手をつけるかは手すりはいつから必要?を参考にしてください。
退院日が急に早まりました。何を優先すればよいですか?
優先順位は①寝る場所 ②トイレまでの動線 ③退院直後の食事と薬の3つです。この3つが回れば、残りは退院後に整えられます。実際の相談現場でも、全部そろえようとして玄関前で荷物が渋滞することのほうが多くありました。入浴は数日待てるので、後回しにして構いません。
退院当日、家族は何人いれば安心ですか?
2人いると安全です。1人が本人に付き添い、もう1人が荷物・薬・書類・車の移動を担当する形が現実的です。1人しか動けない場合は、介護タクシーの利用や、玄関までの段差を先に確認しておくと負担が減ります。病院からの申し送りは、その場でメモではなく書面でもらってください。
退院してすぐに転んでしまった場合はどうすればよいですか?
見た目に異常がなくても受診してください。退院直後は体力も筋力も落ちており、入院前と同じ動きができると思い込んで転ぶケースが多い時期です。受診したうえで、どこで・何をしようとして転んだかをケアマネジャーへ伝えてください。同じ場所での再発は環境を変えれば防げることがほとんどです。
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退院直後の食事まで家族が抱えないために
退院してすぐの1週間は、通院の付き添い、薬の管理、部屋の片づけが一度に重なります。ここに毎日の調理が加わると、本人より先に家族の方が動けなくなります。日持ちする冷凍のお惣菜を数食だけ置いておくと、手が回らない日でも食事を抜かずに済みます。退院直後の一時的なつなぎとして考えると使いやすい方法です。
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※飲み込みや食形態について医師・看護師・言語聴覚士から指示が出ている場合は、その指示を必ず優先してください
まとめ:全部ではなく、退院直後に必要なことから
退院まで1週間しかなくても、準備の優先順位を決めれば一つずつ進められます。
- 病院で、退院後の動作と注意点を具体的に聞く
- 自宅では、本人の動線と介助スペースを確認する
- 用品は、退院直後に使うものだけを先に用意する
- 介護認定が間に合わない場合は、早めに相談窓口へ連絡する
- 退院後1週間の困りごとを記録し、次の支援につなげる
必要なものを場面ごとに整理してから、購入や相談を進めると、退院前の準備を増やしすぎずに済みます。


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